運命案内人 ミスティシリーズ その3
「戻る運命」







商店街創立記念の祭りがやっていた。。。。。

1人の男がやってきた。
初策 文太(はつさく ぶんた)」(36歳) 
 勤めていた会社の商品の人気が落ち、売り上げが落ち、当然のようにリストラだが、
 文太はリストラ対象者ではなかったが、その会社に見切りをつけ辞めたはいいが、
 仕事がみつからず、だらけた生活になれてしまい妻「夏美(なつみ)」に愛想をつかされる。
 まだ5歳の娘「依代佳(いよか)」がいた。。。。。



文太  「祭りか。。。。。気楽なもんだな。。。。。ん?」

 見ると、お面を売っていた。
 そのお面には文太が勤めていた会社のキャラ商品「プチ・モンスター」(略プチモン)
 のお面があった。さらに娘が好きだったキャラクター「ダメウサギ」のお面だった。

文太  「・・・・・・・。依代佳が好きだったな。。。。。」
店員  「お、それちょっと古いキャラだから、まけとくよ。」

 文太は買っても仕方ないとおもいつつ、店員の値下げ攻撃に負け200円で買ってしまう。
 そして、頭にかぶって祭りを見て廻ることにした。

文太  「祭りってのは、いつも同じもんなんだな。。。。。」

 と、怪しい女性。

文太  「ん?なんだ姉ちゃん。占いか?」
女性  「んー、今日は占いじゃないの。運命案内人やってるの。」

 そう、また突拍子もなく、ミスティである。

文太  「運命案内人? なんじゃそりゃ?運命を売ってくれるのか?ハッハッハ。」
ミスティ「売る事はできないわ。でも、分かれた運命にどちらにせよ努力するってんなら、
     違う運命に案内してもよくってよ?」
文太  「あ? なんだい。なんか頑張れば嫁や娘が帰ってくるのかよ?」

ミスティ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

しばらく黙り込んだ。


ミスティ「まずは、アナタの努力。見せてもらおうじゃないの。」

 と、文太を連れていく。
文太  「おい、ドコいくんだよ!!」



 と、連れてきたのは祭りの屋台の一部。

ミスティ「ここも、アタシの店なの。人いないからアナタやってみて。」
文太  「はぁ?」
ミスティ「ここの商品1個百円でいいわ。全部売ったら50万になるわ。
     期限は祭りの終わるまでの1週間。いい?」

 なんかよくわからないまま文太は、やらされてしまった。

文太  「なんだ?うまい事いって結局、人手の足りない尻拭いか?
     ま、バイト代でも取ってやるか。。。。。」

ミスティ「売れば売るほど、ドンドン戻っていく。。。。。
     50万になったら、一番欲しいものが戻ってくるよ。。。。。」

 なんだかんだ言いつつ、その強引さと祭りの雰囲気で安請け合いをした文太だったが、
 もしかすると、心の奥では何かを期待しつつ、ダメならダメだった口実にしようと
 思っていたのだろう。。。。。


文太  「ん、よく見りゃコレ全部プチモン人形じゃねぇか。。。。。売れるかよ。。。。。
     あの姉ちゃん、とんでもねぇな。。。。。」

 古いといえども、根強いファンはいるのである。
 文太の娘もずっと「ダメウサギ」が好きなのである。

 そういう事もあり、多少なり売れていった。。。。。
 

ミスティ「1日目お疲れ様。 へぇ、結構売ったのね。30個くらいかな。。。。。
     5000個売るには全然よ?」
文太  「はっ!!こんなもん、5000個も売れるかよ。」
ミスティ「売れば売るほど戻るのよ? 50万円に達したら欲しかったもの戻ってくるよ。
     てか、今日でも何か戻ったんじゃない?」

文太  「何ももどらねえよ!!」

 といいつつ、昔を思い出して「売る事の楽しさ」が戻ってる事に気づいてはいた。。。。。




文太  「坊主、買わねぇか?」
ガキ  「いらないよー。そんなもん、もう古いよー!!」

文太  「ちっ、憎たらしいガキだな。。。。。」



 と、2・3日目も少ししか売れなかった。。。。。




 そして5日目。

ミスティ 「なによ?この人は!?」

 大人数が集まっている。

文太   「プチモンの映画の2作目ができるってんで頼み込んでポスターもらったのさ。
      ま、その便乗だがな。」

ミスティ 「なんだ、結構、熱心じゃん。。。。。」



 そして6日目はミスティも手伝っていた。

ミスティ 「ああ、終わった〜〜〜。アタシの本業は違うんだけどなー。」
文太   「疲れたぜ。。。。。おっと!!」
 ちょっとふらついた文太。何かを踏んで転倒してしまった。

文太   「おっと、あぶねぇな。。。。。絵の具のビン?なんでこんなとこに?」
ミスティ 「あ、ゴメン!!アタシ。。。。。」


文太   「まったく。。。。。」

 と、片付けを始める。

文太   「ああ、、、1個壊れちゃったじゃねぇか。。。。。」









そして最終日。

文太  「昨日とかのペースなら売り切れるかもしれないが、、、、、、。
      これでは。。。。。」

 なんと、雨が降っているのである。
 それでも、小雨のために祭りは続けられ、客も結構いるのである。
 なんとか売っていったのである。この6日間で「売る技術」を
 そう、昔プチモンを売ってたあの頃の商売のカンを取り戻していたのである。


文太  「あと、30分か。。。。。あと300円だな。やってみればなんとかなったな。
      結構こって看板とかつくっちまったな。。。。。あの頃みたいに。。。。。
      ん????? 足りねぇ!! なぜだ? 2個しかない!!」

 そうである。昨日1個壊して捨ててしまった分である。
 そして文太は考えた、昔は取引の相手によっては高く売れていたことを思い出した。
文太  「なんでぇ。1個だけ200円で売ってしまえばいいんじゃねぇか。」



 そして1人の女の子が買いに来た。

女の子 「おじさん、これ下さい。」
 プチモン人形を買いに来たのである。

文太  「依代佳!?」

母親  「美柑(ミカ)ちゃーん。 プチモン買えたのー?」
女の子 「今買ってるのー! おじさんいくらですか?」

文太  「おお、ありがとな。100円だよ。」
美柑  「はい。ありがとぅ」

 そして女の子は母親の元に走って行った。

文太  「違ったか。。。。。だよな。。。。。」

 そして、残り1個。
 娘の面影を見た子に高値で売ることができなかった。
 もう、次で高値で売るしかなかった。

男の子 「おじさん!! プチモン頂戴!!」
 と、千円札を渡す子。

文太  「はいよ。お釣り渡すからちょっとまってな。。。。。」










ミスティ 「すごい!!ホントに売り切るとは思わなかったよー。」
文太  「ふん、昔はもっとたくさんのコイツらを売ってたんだよ。」



女の子 「あれー? もうないのー?ダメウサギないのー?」

文太  「!! い、、、、依代佳。。。。。」
依代佳 「パパー!!」

 今度買いに来た女の子は間違いなく娘の依代佳だった。。。。。

文太  「なるほど、、、、、。」
ミスティ「運命・・・・・。」

文太  「おい、姉ちゃんよ。50万売り切ったら、、、、、、何か戻るのかよ?」
ミスティ「そうね。アタシが言うんだから絶対だよ。ほら。」

 と、妻の夏美がいた。。。。。

夏美  「依代佳、、、、こっちおいで。」



文太  「はっはっは。そんなウマイ話あるわけない。出会ったからなんだっていうんだ?
    それに、売り上げは499900円だ!!
ミスティ「えっ?なんで?」
文太  「昨日、転んだ時に1個壊してしまったんだよ。。。。。」




文太  「50万売れたら、自分の一番戻って欲しいものが戻る。。。。。だったな?」
ミスティ「う、、、うん。」
文太  「確かに、、、、50万達成できなかったから一番欲しいものは戻らない。。。。。
     でも、確かにたくさん戻って来たものがあるぜ!!
     また、プチモン売ってみるぜ。 もしかすると、コレが戻ってなかった一番大事なもの
     なのかもしれないな。。。。。」



夏美  「ここんとこ、ずっといたアナタを見てた、、、、、あの頃のようなアナタを。。。。。
     どうしてもっと早く、、、、、そうなってなかったのかしら。。。。。」
文太  「違いないな。。。。ハハハ、、、、、依代佳も元気でな。。。。。」

依代佳 「パパー。パパはどうして帰ってこないの?」

 文太は頭に乗せてた、お面をかぶった。。。。。

文太   「パ、、、パパは、、、このダメウサギを、、、売らなきゃいけないんだ。。。。。」
依代佳  「じゃあ、そしたら帰ってくる?」

文太   「・・・・・・。」


夏美   「そのお面、、、いくら?」
文太   「え?」
夏美   「そのお面はいくらなのか聞いてるの?」
文太   「200円で買った。。。。。」

 夏美は200円取り出した。


夏美   「まだ、売るものあるの?」
文太   「な、、夏美。。。。。」

ミスティ 「ふふ、、、、50万達成ね。。。。。」


文太   「依代佳!! 全部売れたからパパと帰ろうな!!」
依代佳  「うん!!」
夏美   「依代佳、はい。ダメウサギのお面。」
依代佳  「わーい!!わーい!!」

 お面をかぶってはしゃぐ依代佳の手になにやら紙が握られている。

文太   「ん?依代佳?その紙はなんだ?」
依代佳  「ダメウサギさんの絵ー!!」

夏美   「その広告がこないだ入ってたからここへ来たのよ。
      そしたらアナタがいるんですもの。。。。。」
文太   「そっか、、このダメウサギが戻してくれたのか。。。。。」
依代佳  「ダメウサギ〜♪」

 依代佳はその広告を振り回す。

文太   「こらこら、依代佳、雨が降ってるから、絵の具が溶けちゃうぞ!!
      ダメウサギさん消えちゃうぞ!!」
依代佳  「いやだー。」

 依代佳は広告をしまった。


文太   「!! あっ!!」

 文太が振り向くと、ミスティの姿はなかった。。。。。




文太   「・・・・・・・・・。ありがとよ。。。。。」

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