運命案内人 ミスティシリーズ その1
「訪れる・運命」








 1人の男子高校生の話。

 彼の名は「蒼林 護(あおばやし まもる)」 高校2年である。
 通学は電車。いつもラッシュの中、彼には「ありがちな楽しみ」があった。
 
 同じクラスで、想いを寄せている、「琵琶垣 瑞穂(びわがき みずほ)」
 彼女と同じ電車なのだ。。。。。そのために早く起きて同じ時間の電車に乗っている。
 学校ではとくに仲のいいわけではなく、必要程度の会話を交わす程度。
 
 学校で見る彼女は、とくにお嬢様ではないが、物静かなクラシックをこよなく愛する子。
 ものすごい美人というわけでもないが、顔立ちの整ったどこにでもいるような子。


 そんな、とくある学生のよくある話。



 放課後を知らすチャイムが鳴った。
 生徒たちは下校していく者もいれば、部活動をする者もいる。

 護はとりわけ部活には入っていない。運動もそこそこはできるんだが。。。。。

 そして、瑞穂もまた部活をやっているわけではない。。。。。
 事実上下校時間は一緒なのだが、帰りも一緒だと不自然だという護の気の弱さが
 下校時間をずらしている。


護   「今日は、、、会話の1つすらなかったな。。。。。
    せめて、席がもう少し近ければな。。。。。」

 いつものように電車に乗り、自宅に近い駅で降りる。。。。。
 いつものように家に向かっていた。。。。。


 それでも、たまにいつもと違うコースで帰る時もある。
 といっても、公園を横切っていくだけである。。。。。
 公園といっても規模はそうとうなものでこの街では有名である。。。。。
 いつもと違う、、、でも見慣れた風景を歩いていた。。。。。

護   「ん? なんだ?あれは?」

 公園を抜けて商店街にさしかかると端の空家が店に変わっていた。
 
護   「ん? 運命案内人ミスティの店?????
    運命・・・・・案内・・・・・人?」

 中を覗いたが、何の店かはよくわからない。。。。。
 その様子を見てたのか、1人の女性がでてきた。


女性  「お客さん・・・・・じゃないかな・・・・?」

 年齢は20代前半らしき女性、ドレスともローブともいえない服を着ている。

護   「ああ、占いの店か。。。。。」

 その格好から判断したのだろう。。。。。

女性  「占いじゃないわよ。。。アタシは運命案内人。そう書いてあるでしょ?」
護   「じゃあ、アナタがミスティってこと?」
ミスティ「そうよ。」

護   「てか、これだけじゃなんの店かわからないよ?
     奇妙だから誰もこないんじゃないのか?」
ミスティ「そうね、、、、まだ1人も来てないかもね。(笑)」

護   「誰もこないんじゃ、商売にもならないんじゃない?」
ミスティ「アタシはモノを売ってはいるけど、それが目的じゃないし、
     人がココを訪れるのは運命。。。。。そ、アナタみたいにね。」

護   「別に僕は、、、ただ何の店かわからないから覗いただけだよ。」
ミスティ「人はソレを興味っていうのよ。。。アナタはココに魅かれた
     それが運命。ただ、それだけでいいの。」

護   「で、僕に何を売るのさ?」
ミスティ「だから、売るのが真の目的じゃないって言ってるでしょー?
     アナタが飛び込めずにいる「運命の渦」へのきっかけを作るだけ。」
護   「ん?運命なのに、飛び込めずにいる?????」

ミスティ「よくさ、こうなる運命だった。とか言うでしょ?」
護   「うん。」
ミスティ「でも、アレってさ結局反対の結果になってもそう言うじゃない?
     告白して、フラれたら「フラれる運命だった。」って。
     ウマクいけば、「結ばれる運命だった。」って。。。。。
     まぁ、ぶっちゃけ、運命たってどっちに転ぶかはわからない。。。。。
     だから、アタシはその出来事を「運命の渦」と呼ぶ。
     その後の人生が変わってしまう。。。。。そんな渦。
     アタシはその渦へ導くのが仕事なの。」
護   「ムリヤリかよ。」

ミスティ「違うわよ。ココへ来た人の飛び込むべき時期は、その時なの。
     だからアタシが手助けするのよ。」
護   「うーん、、、なんとなくわかった。で、僕はその時なのか?」
ミスティ「そぉよ♪」

 結局、うまいこと乗せられたと思いつつも護は、それを口実に何かが変わることを
 期待している自分に気づいた。。。。。

 自分が今、好きな子がいて見てるだけの毎日であることを話した。

ミスティ「なるほどねぇ。。。。。若いっていいね。。。。。で、その子、どんな子?」
護   「ああ、写真があるよ。。。。。」
ミスティ「なんでもってんの?盗撮?いやーね。」
護   「違うよ。。。。。1年の時の体育祭で偶然同じ写真に写ったんだよ。」
ミスティ「どれどれ? ふーーん。まぁまぁかわいいじゃん。。。。。。
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 ミスティは少し黙ったままである。

護   「どうしたの?」
ミスティ「この子とソックリな子なら、ウチでバイトしてるよ?」
護   「えっ!?」
ミスティ「今日は来てないけど、明日なら来るよ。似てるかみてごらんよ?」
護   「えっ、、、興味あるね。。。。。まさか本人じゃない?」
ミスティ「そんなオイシイ運命なくてよ?(笑)
     アタシの親戚だし、名前くらいいいわね。「秋葉 奈菜(あきば なな)」」
護   「そっか、、、、じゃあ、明日また寄るよ!!」


 護はそういって家に帰った。。。。。
 たとえ違う人でも、あの子と同じ顔をした子と話せるかもしれないと思うと
 少しの楽しみと、どこか瑞穂に対しての罪悪感があった。。。。。

 次の日。
 護はまっすぐにミスティの店に向かった。全速力で。
 これにはまたわけがあったりする。
 もし、全速力で店に向かって奈菜がいれば、瑞穂とは別人だからである。
 さすがに、同一人物なら間に合わないだろうと。。。。。

護   「ミスティさん!!」
ミスティ「お。 なんだ〜そんなに息きらして、そんなに楽しみだった?(笑)
     奈菜〜♪」

 ミスティに呼ばれた子が来た。。。。。
 護は言葉が出なかった。。。。。瑞穂と瓜二つだったのである。
ミスティ「ね?似てるでしょ?」
奈菜  「おっす!!話は聞いてたからちょっと照れるけどな。。。。。」

 外見とは違って、結構活発な子だったが、それでも瑞穂と同じ顔を前に
 護は緊張で話せない。。。。。

護   「あ、、、ぼ、、、僕、、、、、。」

ミスティ「(≧▽≦)あっはっはっは。かわいいねー。こいつー。」

 奈菜を前にロクな会話できてない。

ミスティ「ちょうどいい、奈菜で練習だ! 奈菜と話せるようになればOKだろ?」


 奥の部屋で世間話とかしてみた。。。。。
 だんだん、緊張がとけ護も話せるようになった。
 瑞穂と違って自分からどんどん話す奈菜。またそのテンポもノリがいいからである。

護   「奈菜さんて、おもしろい人だね〜、比べるわけじゃないけど
     琵琶垣(瑞穂)さんはホントお嬢様な感じが。。。。(笑)」
奈菜  「悪かったわね。わかんないわよ、実は家ではスゴイかもしんないじゃん?」
護   「そんな事ないさ、家でもクラシック聞いてるって言ってたし、たしかに詳しいから。」
奈菜  「クラシック??? うっわ、、、あんなの子守唄じゃん。。。」
護   「気持ちはわかるけどね。。。。。はっはっはっは。
     そういえば、琵琶垣さん映画もホラーとか苦手で絶対みないらしいよ。」
奈菜  「私、ホラー大好き!!(笑)」






 そして、護はミスティの店に通って、瑞穂と話すシミュレートのようなものをしていた。




護   「琵琶垣(瑞穂)さんは、クラシックしか聞かないって言ったのに。。。。」
 奈菜にムリヤリライブに誘われている。
奈菜 「こーゆーのよくない? きゃーーーー!!閣下ーーー!!」
護   「こんな騒がしいの聞かないよ。」
奈菜 「アンタはどうなの?嫌いなの?」
護   「びっくりしたけど、面白いじゃん。(笑)」



護   「同じ顔なのに、スカート似合わないね〜。(笑)」
奈菜  「(;°◇°)σうっわ、アンタがいいっていうから。。。。。」
ミスティ「(笑)」







  そして、ある日の学校で。。。。。


瑞穂  「蒼林君。 あのね今度の日曜日に(倉地)恵理(友達)が
     過寿(護の降りる駅)からウチに来るんだけど、
     料金いくらなのか知りたいんだけど・・・・。」

 なんと瑞穂から話し掛けてきた。
 瑞穂の降りる駅から、7つの駅を通過し先に護の降りる駅がある。
 運賃を知らないのも無理はない。自分の通らない所の料金なんて覚えてないからである。
 
 せっかくのチャンス。。。。。だが、

護   「えっと、、、、、、あ、、、、、、1680円だよ。。。。。」
瑞穂  「ありがとう。」

 瑞穂はお礼をいうと、クラスメートの恵理に伝えていた。 
 護の会話チャンスはそれだけだったのである。

 その日、それをミスティに言うと、
ミスティ「バカだねー。なんでもっとアピールしないのよ〜。」
護   「緊張するんだよ。。。。。」
奈菜  「えっ、じゃあ、私相手に練習してもしょうがないじゃん!?」
護   「うーん。」









 護が帰ったあと。。。。。


ミスティ「アタシが頼んでおいてなんだけど。。。。。どうする?」
奈菜  「うーーん。。。。。いいよ。。。。。ミスティが伝えておいてよ。」
ミスティ「はいはい。」















 あくる日。

 またいつものように公園を横切っていくと、、、、、。

護   「あれ? どうしたの?」
ミスティ「移転。。。。。なんか家賃安いと思ったら、ここ道路拡張するまでの間だったわ。」
護   「えっ? イキナリそんな、、、ええ〜〜っ?」
ミスティ「でも、いいの。。。。。アナタへの運命案内はもう、終わりだから。。。。。」
護   「終わってないよ!!」
ミスティ「ほら!」

 ミスティは指を差した。その方向を見た。。。。。

 見覚えのある顔が立っていた。


護   「ん??? 奈菜さ、、、、、、ん?琵琶垣さん!?」

 立っていたのは、琵琶垣瑞穂であった。。。。。

護   「琵琶垣さん、、、、なんで、、、、ここに?」
瑞穂  「あ、、、、、だって、、今日、、私の誕生日だから。。。。。
     で、私、誕生日には必ず言おうって。。。。。思ってたの。。。。。」
護   「えっ、、、、ああ、おめでとう。 (しまった。誕生日知らなかったんだ。)
     で、言おうって、、、、何を?」
瑞穂  「あ、、、、、、、、、あの、、、、、、、、、、、私、、、、、、、、、、、、
     1年の時から、、、、、蒼林君の事が、、、、、、、、。」

















ミスティ 「なんか、どこにでもある結果だったわね。。。。。」





ミスティ 「あ、言うの忘れた。。。。ゴメン、、、奈菜。」

奈菜   「えーっ!! それじゃ、ずっとミスティの親戚のままじゃん!!
      すっごい怪しいじゃん!?」

ミスティ 「あれ?奈菜、アナタまさか。。。。。」
奈菜   「ち、、、違うよっ!! 好きになんかなってないよ。。。。。
      早く、バイト代頂戴よっ!!今日で最後なんだから。。。。。」

























 そしてまた、ある日。

恵理   「あれ?   あそこにいるのは、、、、瑞穂?????
      と、、、蒼林君?????? あっれれれ?付きあえたのかな?」









 恵理の見た映画館前。
 あわただしく走ってくる2人があった。。。。。


護    「うっわ!!上映時間ギリギリだよ!!
     すいません、「悪魔の蝋人形館」大人2枚ください!!」

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