第拾肆の箱
133『欠片』 110518 鎌が狩るのは、犯した罪そのもの。 媒体の存在を罪とするわけでなく、 媒体から罪のみを斬り離すのが本来の鎌。 だが、媒体は幾つもの罪を生み出す。 罰を受けても、罪への罪悪は時折薄らいで、 さらなる無数の罪を生み出す。 そしてまた、媒体も己が媒体である罪悪を再び濃く描き 同じ渦に飲み込まれる。 死神は斬る度に返り血を浴び、鎌は錆び、 狙いの揺らいだ切先は、罪を肉ごと抉り取る。 誰も望まぬ心も共に抉り取る。 鎌を振り翳す死神の心も、 振る度に、積み上がっていく無数の業。 自覚されないほどの欠片が鱗の様に剥がれていく。 その死神は・・・何時・・・何処で・・・どうして? その鎌を持つ姿に変わり・・・ 何を・・・何のために・・・狩るのだろう? 自分の首を狩るために? 鎌を手にした時点で、死神もまた・・・ 罪を生み出すだけの媒体に過ぎないのかもしれない。 媒体が媒体を狩り、幾万の欠片だけが散らばっていく。 連鎖する業。 抗えない、許されない大罪。 それでもその鎌は必要なのである。 |
132『警鐘』110225 響き渡る警鐘・・・ 今日もどこかで鳴り響く・・・ それは何処の嘆きで・・・ それは何処の痛みで・・・ それは何処の叫びか・・・ 不規則に飛び込む、無機質な信号を辿れば どこかの感情の崩壊に届く・・・ 聞こえるその信号は 此処まで届くと言う事実こそが使命なのかと あらゆる騒音や静寂すら貫いて 響き渡る・・・ 懲りずに響く警鐘は・・・ 何処を見ても、何処まで歩いても辿り着けない・・・ 何処まで行っても近くならず、 何処まで行っても遠くもならず、 幾つかの門を潜り、一つの結果に到達する・・・ 警鐘は己の脳内に・・・ |
131『自然な不自然』110215 糸の捻れた操り人形・・・ 意思と反して捻れる右手・・・ 意思を離して動かぬ左手・・・ 中途半端な思いを、中途半端に伝える操り人形の その動きは自然にぎこちなく、不自然に踊る・・・ まるで傀儡連動が切断れてしまったような踊りで 糸は透き通る操り仮面・・・ 意思と反して映す表情・・・ 意思を離して動かぬ表情・・・ 中途半端な悲しみを、中途半端に映す操り人形の その表情は自然にぎこちなく、不自然に笑う・・・ まるで喜怒哀楽を忘却れてしまったような表情で 中途半端な踊りは、まるで不自然を演ずるかのように・・・ 中途半端な表情は、まるで不自然な事であるかのように 新しい踊りと新しい仮面・・・ 自然にまた新しい不自然を形成り 不自然な自然を透かしながら映し出す やがて、自然なはずの不自然は・・・ 不自然な自然に飲まれ、 もはや仮面こそが表情に・・・ 己の顔をも忘却れさり 不自然な自然に踊る・・・ 新しい自然の仮面・・・ 新しい不自然な素顔 古き自然の自分は、 古き不自然な人形に宿り・・・ 今日も中途半端に全てを伝えよう・・・ 明日も中途半端に全てを笑おう・・・ |