W アナザー


第03話 『数々の記憶』





             3人は、サナの家に来ていた。

             組織ガーデンに居た二人は、住むところなど無いからである。


サナ  「ああ・・・お尻が痛い・・・。」

マリ  「ちょっとしたおしおきだよ。」

サナ  「うう・・・。」


             ユウマはサナの部屋を眺める。

サナ  「なんかそんなに見られると恥ずかしいんだけど・・・。」

マリ  「ユウマは・・・ガキの頃にガーデンに連れ去られたからね。」





             ユウマ 『嵐 佑真』(アラシ・ユウマ)は、5歳くらいの時にガーデンに連れ去られた。

             両親の記憶というより、あらゆる記憶が消されていた。


             人間の記憶を消し、『記憶を欲する記憶』・・・その意志が新しいドーパントメモリを生んだ。

             『メモリー』(記憶の記憶)のメモリである。

             あらゆる情報を『永遠に憶えている事ができる』

             全ての抗うものの対抗方法も、一度学習すれば忘れる事の無いメモリ。

             この『メモリーメモリ』は、変身メモリというわけではないようで
             非戦闘タイプとして分類される。
             基本メモリあって、その追加として使用されるのだろう。



サナ  「メモリーメモリ・・・記憶の記憶・・・・・。ややこしいね・・・。(笑)
           で、マリアさんは?」


             マリア 『凪 麻莉亜』(ナギ・マリア)は、解りやすく言えば『S』である。
             その攻撃性につけ込まれ、一時期はドーパントとして『ガーデン』に加担していた。

             だがその方向性の違いと、罪の意識からユマを連れてガーデンを逃げる事に成功した。



             Wドライバーアナザー、ロストドライバーアナザーは共にその時に持ち出したものである。

             ロストドライバーアナザーは元々、ナンバリングドーパントであるマリアが使用していたのである。
             ナンバー03『女帝』の記憶のドーパントメモリで、基本フォームは『鞭』である。



サナ  「でも、私はどうしてガイアメモリに選ばれたの?」

ユウ  「ガイアメモリというか・・・最初はドーパントメモリにだね。」

サナ  「ス、スパイシーですか・・・(汗)」

ユウ  「ううん・・・多分・・・こっちかな・・・。
        ナンバー11ドーパント『正義』

サナ  「ナンバリング!!」


             ユウマが出したナンバリングドーパントには、『J』と書いてあった。

             サナはそれを受け取り、恐る恐るボタンを押した。

             『ジャスティス!!』

             ガイアウィスパーが響き渡る。

マリ  「本当だ・・・。」

ユウ  「これがキミの『基本ナンバリングドーパント』だよ・・・。」

サナ  「ジャスティス・・・・・・正義?」

ユウ  「キミの中の正義に呼応したんだと思う。」

サナ  「じゃあ、私はこの『ジャスティス』で、ドーパントになって・・・。
        『スパイシー』で、なんらかの効果属性を追加できるって事・・・?」
ユウ  「そうだね、でもWドライバーアナザーとガイアメモリがある限り、そんなリスクを背負う必要は無いけどね。」

マリ  「しかし・・・なぜガイアメモリにも選ばれたのかは解らないわね・・・。」


             マリアが、サナの持つガイアメモリのボタンを押しても何も鳴らない。

ユウ  「もしかしたら・・・呼応するガイアメモリも存在するかもしれないよ。」
マリ  「まぁ・・・結構気に入ってるけどね、エンプレス。」

             サナは、マリアの『エンプレス』の姿を思い出すと、
             鞭で散々、お尻を叩かれた記憶が蘇る。

サナ  「はう・・・。」

             なんとなく怖いので『ジャスティス』を試めそうとは思わないが、能力は気になった。

             それでいて、もしWドライバが壊れたら・・・とか予想の範疇には置いていた。

             思った以上に・・・・・この状況を冷静に聞ける。

             そして、どこか楽しんでいる。




サナ  「ねぇ・・・・・ガーデンを倒すって事なの?」

ユウ  「・・・・・。」

マリ  「とりあえず、逃げてきただけ・・・・・でも、追ってくるなら倒すつもりでいるよ。」

ユウ  「確かに逃げ続けるだけの生活も無理だけど・・・・・街の人をドーパントにしたりするのは許せない・・・・・。」


             実際2人はとにかくガーデンから逃げ出す事しか考えてなかったと言っても過言ではない。


             これからどうするか・・・なんてのはどうにでもなるものだと。


サナ  「私の家に居ていいけど、ココが襲われるのはイヤだなあ。(汗)」

マリ  「安心しな、どこか事務所でも借りたら出て行くさ。
         それまでは、世話になるよ。」

             サナの家は、一人暮らしであるが、親がそれを心配して
             わりとセキュリティのしっかりしたマンションに居るため、
             一人で暮らすには多すぎる部屋ではあった。


サナ  「そうだ、あの私学校毎日行くわけなんだけど・・・。
         なんか合った時、ユウマ君と一緒にいないと変身できないよね?」
ユウ  「離れていても、双方がガイアメモリを挿せば変身できるよ。」


             と、ユウマは何かを取り出した。


ユウ  「これは、スタッグフォン、クワガタに変形する携帯電話って事かな。
         この、ギジメモリを装填すると変形する。
         ちょっとやそっとの衝撃じゃ壊れないから、これを持っておいて。」

サナ  「また、『なんとかメモリ』増えたよ・・・。」

ユウ  「ギジメモリは、その変形にしか使わないメモリなのさ。
         他のアイテムも色々あるけど、それぞれのギジメモリを使うのさ。」
サナ  「えーっと、これは・・・スタッグメモリね。」


             サナはおそるおそるスタッグフォンを触る。
             ちょっと重いし、女の子が持つにはどうなの?ってデザインのメモリだった。

サナ  「まぁ・・・ストラップとデコで我慢しよ・・・。」

マリ  「へぇ・・・サナ、アンタ大学生だったんだ。」
サナ  「うん、そうだよ。今じゃなんで行ってるのかよく解らないけど・・・。
         ウチの親が『エリート』っていうの?んで、私に押し付けるから・・・・・。」








マリ  「なるほど・・・。アタシには耐えられそうに無いつまんない生活してそうだね。」




             マリアの話を否定できないサナだった。

             確かに・・・・・だからこそ刺激を求める思いがスパイシーメモリに呼応したのだろう。


             ドーパントメモリ、ガイアメモリ、ギジメモリ・・・。
             7本のメモリを眺めながら少し、これからの事を考えていた。












             一方、ガーデンでは・・・。


吊人  「Wドライバーアナザー(WDA)を持った『嵐 佑真』と、ガーデンの裏切り者エンプレスの『凪 麻莉亜』・・・。
          そして、新しくWDAを使用した女が一人、どうしましょう?皇帝。」


             『皇帝』と呼ばれた別のスーツの男が居た。

皇帝  「ハングドマン・・・オマエほどがてこずるとはな・・・。
          早く始末をしてしまえ・・・そしてWDAと、全てのメモリを奪い返せ。」

吊人  「では、新たなドーパント適合者でも見つけて来ましょう・・・。」


             持っているアタッシュケースを開く。

             まだ20本以上のドーパントメモリが入っていた。

             それを持ち、また街へと適合者を探しに行こうとする吊人。


             それについてくる男が居た。

             どうやら、新人の売人である。
             まだ、ナンバリングにも適合しないのである。

             ゆえに『ハングドマン』のようなナンバリングドーパントコードネームすらないので
             名前で呼ばれていた。

吊人  「雷動・・・メモリは売れたのか?」

雷動  「あ、いえ・・・今日も全然でした。(汗)」

吊人  「ただ、闇雲に探してるだけはみつからないぞ?」

雷動  「でも、先輩・・・やっぱ危険じゃないんですか?このドーパントメモリ・・・。」

吊人  「オマエは何を言っている?」

雷動  「あ・・・いえ・・・なんでもないです・・・。」




             新人の売人、雷動はドーパントメモリの暴走を目の当たりにしている。

             いくら仕事とはいえ、好きでやれる仕事だとは思っていなかった。

             そんな考えと、持ち前の性格が幸いか災いか、まだ1本のメモリも売れていない。


吊人  「そんな事では、ナンバリングメモリ適合にはなれないな・・・。」



             他の売人の幹部や、上位陣もほとんどがナンバリングである。

             だが、ごく一部に、ドーパントの能力を最大限に引き出しており、
             幹部として君臨してはいるが、やはりナンバリング以外は認めないという空気があったりした。

             そのため、下の者は残り少ないナンバリングの適合者になる事が目標とされていたのである。

雷動  (俺は・・・向いてないんだけどな・・・。)



             そんな彼も、記憶は失っており、いつしか売人の新人としてやっていたのである。





             今日も渋りながらも、営業に行くのであった。














             続く。

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