W アナザー
第01話 『疾風と共に』
どれくらいこの街の景色を眺めただろう・・・・・。
街が一望に見渡せる、この台地に腰掛けている。
その少女の名前は、『風神 佐菜』(かがみ・さな)
吹かれる風に、髪をかきあげながら、また明日の事を考えてる。
サナ 「また・・・今日と同じ明日なのかな・・・・・?」
ふと耳に入る、パトカーのサイレンの音が気になった。
最近、科学では証明できないような事件が多発していると言う。
それでも、直接自分や身内が被害にあったというわけでもないので
流れるニュースも、聞いてはいたが素通りだったかもしれない。
刺激が欲しいとこだが、そんなに欲望をぶちまけたいわけでもない。
サナ 「『自分に素直』と、『自分勝手』は違うもの。」
何が正義かと聞かれたら、答えられはしないかもしれない。
それでも、サナの中の『正義』はあった。
サナ 「そう・・・罪も無い人たちを困らせるのは・・・絶対『悪』だと思う!!」
いつも一人で居たその場所に人の気配がした。
サナが後ろを見ると、スーツ姿の男がアタッシュケースみたいなものを持っていた。
男 「そんなアナタに素晴らしいものがあります。」
サナ 「な・・・何ですか?一体・・・。」
どうやら、営業マンというか、何かの売人である。
その売人はアタッシュを開いた。
何か色とりどりのガムのような物が並んでいる。
サナ 「ガ、ガム?」
売人 「いえ、これは『ドーパントメモリ』、言うなれば・・・・・選ばれし者の選ばれし力。」
サナ 「ああ・・・何かの宗教かな?(汗) パソコンはよく解らないんだけど・・・。」
売人 「今日はアナタに1つプレゼントしますよ。」
サナ 「えっ、要らないんだけど・・・・・。」
売人は何か銃の様な機械をサナに向けた。
サナ 「えっ、うわっ!!何するのよ!!」
引き金を引いた・・・・・。
サナ 「きゃーーーーーー!!・・・・・ってアレ?」
ふと見ると、サナの左腕に不思議な模様の刺青が現れた。
売人 「おめでとう・・・・・アナタに相応しいのは・・・・・コレですね。」
売人はドーパントメモリを1つ取り出した。
『S』の刻印がしてある。
サナ 「?????」
よく解らないうちに、手渡された。
そして、その直後・・・・・売人は姿を消していた。
サナ 「な、何コレ・・・・・。」
手渡されたメモリ。
サナ 「どーぱんとめもりー?」
よく見るとボタンが付いてる。
サナはそれを押してみた。
『スパイシー!!』
メモリから声が響き渡る。
サナ 「えええええええ!?(笑) なんなのスパイシーって??・
調味料なの?????」
ドーパントメモリのボタンを押した時から、心の奥底でその手の刺青と呼応してる気がした。
なんだか気味が悪いのでポケットに仕舞ったが、
サナ自身、一体なぜそれをすぐに捨てなかったのは謎であった。
サナ 「てか、何よ刺青なんて・・・・・。学校で見つかったら大変じゃない・・・・・。
お風呂でこすったら取れるのかな?」
ブツブツ一人事を言いながら、台地を後にする。
また明日も学校。
とりあえず、この『面白調味料ケース』をネタにでもしようと思ってた。
ふもとの公園に差し掛かると、息を切らせて走ってる人が居た。
2人共、後ろを気にしていた。
何かから逃げているようだ。
一人は長身の美人、一緒に居るのは同じ歳くらいの男子だ。
サナ 「もしかして・・・・・犯罪に巻き込まれてるのかしら???」
サナの少し離れた位置に、なんだか怪しげな男性が現れた。
男 「見つけたぞ・・・・・。逃がさない・・・・・。」
その男の取り出した物は・・・・・。
サナ 「ど・・・・・ドーパントメモリ?」
男は『M』と書かれたメモリのボタンを押した。
『メイズ!!』
そして、男の手の甲の『刺青』に押し当てた!!
身体の中に吸い込まれるようにドーパントメモリは消えた。
サナ 「え!?」
そして、男はTVに出てきそうな『怪人』に変身した。
サナ 「!!!!!!!」
その怪人が手を振りかざすと、あたり一面が巨大な迷路みたいになった。
逃げていた2人はもちろん、近くに居たサナの周囲まで迷路になる。
サナ 「こ、これが・・・・・『科学で証明できない犯罪』なの・・・・・?」
今、起きている信じられない光景。
それでも、どこか冷静に物事を見てる自分。
『もしかして・・・・・待ってた???』
『こんな、ドキドキするような・・・・・刺激を?』
その迷路の中に、さっきの売人がいつの間にか居た。
売人 「困りますね・・・。その『ガイアメモリ』も『ドーパントメモリ』も返して頂きますよ?」
逃げてる2人に話している。
おかげでだいたいの状況は飲み込めた。
女 「意地でも逃げてみせる・・・。」
売人 「少し・・・お仕置きが必要ですね・・・・・裏切り者には・・・。」
売人の腰にベルトのような物が現れた。
さらにドーパントメモリを一つ取り出した。
サナの『スパイシー』や、『メイズ』よりも黒いメモリである。
売人 「行きますよ?」
『ハングドマン!!』
腰のベルトにメモリが消え去り、怪人よりもスマートな姿に変身した。
サナ 「うわぁ・・・・・悪っぽぃ。」
女 「やるしかないのか・・・。」
男 「でも、変身できるのは・・・・・。」
ふと、サナは思った。
サナ 「私も変身できるの・・・・・?いやいや・・・あんな怪人になったら・・・。
ううん、私は・・・犯罪者になりたいわけじゃない・・・・・。
そう、きっと正義のため!?」
サナはドーパントを取り出し、ボタンを押した。
『スパイシー!!』
そして、それを腕の刺青に・・・・・。
男 「キミ!!ダメだよ!!」
そのドーパントの叫びに気づいた男子の方がサナに叫ぶ。
サナ 「え?」
サナの存在に気づく、売人と怪人。
売人 「あれは・・・さっきの・・・?」
その隙に、男女がサナの方へと走る。
男 「ダメだよ、そんなの使っちゃ!!」
サナ 「私は正義のために・・・・・。」
女 「ユウマ・・・・・この子ならイケるんじゃない?」
ユウマと呼ばれた男子が、一瞬、手に持っている赤い何かに眼をやる。
ユウ 「ダメだよ、巻き添えにはできないよ、マリア。」
マリ 「そんな事言ってる場合?」
女性の方はマリアと呼ばれていた。
聖母マリアとは正反対っぽいけど・・・・・とサナは思った。
ユウ 「ここからなんとか逃げ出そう!!」
マリ 「ダメだ・・・ハングドマンが居るだろ?腐っても、ナンバリングだよ?」
サナ 「なんばりんぐ・・・。」
ユウは少し考えて、その手の赤い物をサナに渡す。
ユウ 「キミは・・・正義のために・・・危険に相乗りできる?」
サナ 「意味解らないんだけど・・・。」
渡されたもののイメージが、ベルトだった。
それを下腹部に。
すると、ベルトが飛び出て、サナの腰を包んだ。
そしてユウマの腰にも同じものが突然出現した!!
サナ 「え?????」
ユウ 「コレがキミのガイアメモリさ。」
さっきの売人の会話に出ていた『ガイアメモリ』だ。
禍々しい骸骨をイメージするドーパントメモリと違い、透き通ったキレイなメモリを4本受け取る。
サナ 「が・・がいあめもり・・・ドーパントメモリとどう違うんだろ・・・・・???
あ、見た目が正義っぽい!?」
次の瞬間、ユウマは緑色のガイアメモリを取り出した。
『サイクロン!!』
今までの光景が、サナを行動に移す。
サナ 「えーっと、とりあえず・・・・・コレ。」
紫のガイアメモリを選んで押した。
『ジョーカー!!』
ユウ 「変身!!」
ユウマがガイアメモリを、その赤いベルトに刺した。
同時にサナのベルトに緑のメモリが出現した。
ユウ 「それを押し込んで、次に自分のメモリをもう片方に押し込んで!!」
左右対称のそのベルトの右側に刺されたものと、同じように左側にも刺した。
サナ 「えーっと・・・・・こうなのね? へ・・・変・・身!?」
『サイクロン!!ジョーカー!!』
二つのメモリの叫びが、街に響いた。
眩い光が、サナの廻りを包んでいった。
続く。