夜の光 SIDE B
1
…俺は見た?
いや、多分間違いない。
見てしまった…
何だったのかは分からない
とにかく『何か』が人を襲いそして『入れ替わる』ように襲ったほうが倒れた。
いや、自分でも何を言ってるのか分からない。
でも目の前に起きた事は事実。
夢ではない…
現に昨日の夜のあの場所の事を報道している…
連れと飲んだ後酔っ払ってたまたま通った帰り道、偶然にも昨日の事件の現場を見たのだ。
恐ろしくなり何処をどう通ったのか分からないまま気付いたら家の前に居た。
それからずっとニュースを見ながら眠れぬ夜を過ごしたのだ。
酔ったせいもあり現場もさっきニュースで知ったくらい前後不覚に陥り犯人の顔さえあまり覚えていない。
ただ、あの現場で起きた事だけが鮮明に頭に残っている。
どうにかなりそうな頭をボヤかすように貝塚浩(かいずか
ひろし)は朝からバーボンをあおった。
「おはよ!」
「おはよう」
スーパーの朝は早い
二人の挨拶が店内に響く。
諏訪野麗子(すわの れいこ)と槇中佐和(まきなか
さわ)はいつものようにタイムカードを押すと髪を束ねユニホームのエプロンを付
ける。
「昨日の事件見た?」
麗子は佐和に問う。
「ん。近所よね…」
「家の反対方向だから心配はしてないけど…」
「れも近りょらからちょっとほわくて…モグモグ
今日は新年会らし、なんだかほわいわよ…モグモグ」
おにぎりをほおばりながら返事をする佐和を見て麗子はクスリと笑う
「佐和ちゃんは相変わらずね(笑)」
「腹が減っては戦が出来ぬってね(笑)今日の料理が楽しみだわ♪」
「その食欲があれば大丈夫よ(笑)私もパッと忘れて歌えるならいいんだけどね(笑)」
「そうかなぁ。なんだかおなかと心配は別のところみたい。」
顔を見合わせて笑ってるところにネクタイにシャツの上から同じエプロンをきた男が休憩室に入ってくる。
「おい!朝礼の時間だぞ!」
「あ、はいはい」
店長の柳井 愛吾(やない あいご)は二人をせきたてるように声を掛けた。
「まったく…気楽でいいよな…。こっちは事件の影響で売り上げが心配だってのに…新年会もキャンセルしたいくらいだよ…」
柳井はため息をつくと朝礼のために従業員が並んでいる野菜売り場へと歩いていった。
「さてと。」
ノートPCを閉じ真子は立ち上がる。
八代真子(やしろ まこ)は自宅で企画の概要をまとめながら昨日の夜の事を思い出していた。
真子はディスプレイの企画会社の企画室に在籍している。
シーズン先行で商品のディスプレイを交換するための企画を練りながら
依頼を受けたブティックのショー・ウインドウを店側からながめていると、店先を真っ青になりながら走っていく男を見た。
例の殺人事件の起きた方向から何度も振り返り走り抜けていく男。
「…彼が犯人なのかしら…。だったら警察に届けなきゃいけないよね…」
そうは思うものの関りを持つと後で面倒なことになるかもしれないし、
何度も警察に足を運ぶのはもうこりごりだなどと、躊躇していた。
真子は過去に一度だけ傷害事件の目撃者となり幾度となく警察に通ったことがある。
双方の意見が分かれ最終的に真子の証言がきっかけとなり事件は解決した。
ただ、犯人となったほうの身内から嫌がらせなどもあり引越しをせざるを得なくなったのだ。
あいつに頼むか…
携帯を取り出すとおもむろに電話を掛けた。
「秀人?例の事件なんだけど…犯人って目星ついてるの?」
真子の電話の相手は宝井 秀人(たからい ひでと)新聞の編集者だ。もっとも、入ったばかりの新人である。
その過去の傷害事件の際に取材についてきた秀人と出会い、引越しの事や犯人側の嫌がらせなどから救ってくれた恩人でもある。
真子に気があることを知ってか知らずかその後も真子は何かとつるんで友人として接している。
「おぅ真子か…。いや、それがさっぱり。先輩がやたら張り切っちゃてるんだけど皆目見当がつかないみたいだよ…」
「そうなの…いや、実はね…私丁度あの近所で仕事してるんだけど…ちょっと会えない?」
「どうした?…まさか又なんかめっけもんでも拾ったか?」
真子の誘いに何かを感じた秀人は興味深く真子の電話に耳を傾ける。
「多分…秀人には有効な物だと思うわ。」
「とりあえず…おいしいパスタ屋を見つけたんだ、そこでいいかい?」
「いいわ♪…でも、情報提供者は私だということは…」
「もちろんだよ!じゃぁ夕方6時に地下鉄の駅前で。」
電話を切った後PCを鞄に詰め込むと出かける用意をする真子。
明らかに興奮する様子の秀人とは裏腹に不安じみた気持ちを隠せないまま電話を切り真子は会社へと向かった。
夜の光出演者様
貝塚浩(かいずか ひろし)
【ぴょん】
八代真子(やしろ まこ)
【桐谷カスミ劇場】
槇中佐和(まきなか さわ)
【さるまな】
柳井 愛吾(やない あいご)
【暁のラフィー】
宝井 秀人(たからい しゅうと)
【(仮)スマ夢島】
諏訪野麗子(すわの れいこ)
【suwan】