朝の闇 SIDE A





フ…

フハハハハ。


遂に手に入れたぞ…


これで俺は自由だ…


ハハ…

フハハハハハハハハ!!!!!!!!


( ̄┥壁



ゴトリ。


「誰だ!」

覗いていた影は無く
タバコの吸殻が一つ残されていた。


「見られたか…」

男は吸殻を拾うと小さなビニール袋に入れてその場を立ち去った。

四時間後殺人現場として世間の注目を少しだけ浴びる事になるこの場所を…。






短編小説-朝の闇- 2008年01月17日00:58

ピピピ…ピピピ…
不意に目覚ましが鳴る。

「うん…?…朝か…」

目覚ましを消し、信はベッドから降りた。

彼は竹間 愼(たけま しん)
商社に勤めるごく普通の男だ。

いつものようにパンを焼き
テレビをつける。

ニュースは昨夜起きた事件を報道していた。

「…犯人はまだ捕まっておりません。付近の皆様は充分お気をつけください」

ニュースを見ながら愼は
「相変わらずぶっそうだな…」
とコーヒーを口へと運んだ。


「犯人はまだわからんのか?」
「はい。編集長。警察もまるで手がかりが無いようです」

苛立ちを隠せない口調で編集長と向かい合う女性は
花髪 楓(はながみ かえで)

この新聞社の記者だ。
昨日のデートのさなか突然の呼び出しを受けて現場へと向かったまま、まだ一睡もしていない。

「遺留品すら見当たらない、犯行の動機も見当たらないとは…」

「衝動的な匂いのする犯行…と警察は分析してるみたいです」

落胆する編集長に楓は取材した精一杯を伝えた。

「楓よ…。長年ブンヤやってると色々見えてくるもんだ…


だが、今回の事件は…本当に何にも見えねぇ…」

「編集長。任せてください!

記者人生にかけて犯人を浮かび上がらせます!」

「頼むぞ!」

「はい!」

編集長とがっちり握手をし、楓は再び取材へと出向いた




「ククク…アハハハハァ!!!!!!!!」

暗いアパートで一人笑う男


大場と名乗る男。

素性は一切分からない。

ただ一つ

昨日人を殺めたという事実以外は。

「これがヒトノカラダか…ククク…傑作だな…イッヒッヒヒィwwwww」


何を笑っているのかも分からない。

ただ暗闇を見つめ
一人笑っていた…





「あなた☆今日の花達も素敵よ☆」

「さ〜やが選んだ花達なんだ当たり前さ(´∀`*)グビグビ」

「もう(`へ´)また呑んでるの?」

「昨日さ〜やが全部呑むからだよ(´∀`*)」

アンニュイなラブラブ会話をしているのは

久右 史朗(ひさみぎしろう)と
妻の冴子(さえこ)

夫婦で花屋を経営している。

そこそこ評判の花屋で、式場から葬儀、はたまた株主総会まで手広く主人が
(主に夜の部の)営業をしている甲斐もあり繁盛している。
無論冴子のフラワーアレンジメントの腕があっての営業だが、二人は二人の役割を十二分に理解し仲良くやっている。

「お酒は辞めなくてもいいけど…

あなたが頼りなんだからね☆」

「さ〜やの腕があるから俺は呑んでられるんだよ♪(´∀`*)グビグビ」


…幸せでなにより。



そんな毎日の会話をしてると
ひとりの客が。

「いらっしゃいませ〜☆」

冴子は明るく接客する。


「…スイートピーの花束を。」

「はいはい。かしこまりました!」

ニコニコ冴子はアレンジを始める。

「誰かご卒業ですか?」

「まぁそんなとこだ」
客は無愛想に呟く

スイートピーの花言葉は

『旅立ち』

花屋の冴子が聞くのは当然。

男性の客が贈るのだからと然り気無い可愛さとスマートさを込めて作り上げる冴子。

「お待たせしました♪」

「うむ。」


ぶっきらぼうに金を払うと男は花を受け取り立ち去った。


「花言葉を知ってる男性って素敵ね☆」


「おいおい(´∀`;)」

「大丈夫よ☆あなたには誰も叶わないから♪」



…仲良き事は美しきかな…


翌日

愼の元に届いた花束…

「…誰だろ?


貴子かな…?」

愼の恋人は南貴子
ブティックの責任者だ。

愼は貴子に電話した。

「えぇ!何よ?花なんて送って無いわよ!

愼…まさか浮気したの?」

「ま、まさか!花なんて送ってくれる人は貴子しか居ないから聞いてるんだよ…」

「ふ〜ん…でも怪しいし!」

「貴子には敵わないな…

今日何か食べに行こうよ!

その時に花を見せるから」

「そんな花は要らない!

愼が選んで買ってきて!」

「分かったよ(笑)」

やれやれと息を付いて愼は電話を切った。

「しかし…誰なんだろう…」
首をかしげる愼

相手は貴子ではなかった

贈った相手は…


大場だった


スイートピーの花言葉のもうひとつの言葉


『別れ』

その言葉の意味する事は…


続く






短編 A-side 朝の闇2 2008年02月12日12:48 花束が届いた日

愼はいつものように会社へと向かった。
いつものバスに乗ろうとし、バス停で待っていた。

ところがバスは来ない。
おかしいな…と感じ始めた頃

おなじく待っている人の一人が携帯を眺めながら別の人に呟いた。

「…事故みたいだよ…」
「えぇ〜!まずいな…」

どうやらバスは事故を起こしたらしい。

「参ったな…」

愼は呟くと時計を確認した。
「地下鉄で行くか…」

諦めて最寄りの駅に向かう愼。
会社付近の駅に着くとタクシーを拾う。

「納屋物産まで。」
「かしこまりました」

外をボーっと眺めていると道沿いにグリーンのテントのかかった花屋を見つけた。
「ふ〜ん。こんなとこに花屋なんてあるんだ…」

「此処らへんでは評判の店のようですよ」
タクシーの運転手は何気無く愼に伝えた。

「そうなんですか。ありがとうございます。」

しばらく走ったら会社に着いた。
お金を払うとき何気無く運転手の名札を見る。

『ヤマナミタクシーの大場…』

下の名前は見えなかった。

「ありがとう」
釣りを受けとると愼は会社へ歩き出した。

「ククク…

納屋物産か…


ククク…」

密かに笑う運転手…何か獲物を見つけた狼のような鋭い眼差しを槇に向け、ゆっくりとアクセルを踏み出し、ハンドルを切った。

「楓…その後どうだ?」
「はい…編集長…」
取材の成果を心待ちにしている編集長には申し訳ないような顔をしながら歯切れの悪い返事をする楓。

「そうか…引き続き頼むぞ…」
「はい。なんとか…糸口だけでも…」
深刻になっていく二人の空気。

「そういえばあいつどうした?」
「それが、取材とか用事とか意味の分からないことを言いながら出て行ってしまって」
「そうか。まぁ、奴も若いんだ、何か見つけたなら放っておくのも先輩の務めだ。
無駄足だったら怒鳴り散らしてやりゃいいんだ。それより、ちょっと今夜一杯行かんか?
煮詰まった頭を冷やしたら何か見つかるかも知れんしな」

「はい、お願いします!」

素直で一直線な楓は元気よく編集長の誘いに応じた。



夕刻5時半、槇は仕事を終えると、今朝方通った花屋へと歩いて向かった。

貴子への花束を買うために。

グリーンのテントをくぐるとやや細身の髪をアップにした女性が花束を作っていた。

「いらっしゃいませ(*^∀^*)」
男が槇の後から声をかける。
槇はやや驚き振り返ると、やや陽気なネクタイを締め、
今から出勤のようなぱりっとしたシャツにイタリア風のスーツを着た、
いらっしゃいませの言葉には似つかわしくない格好の男が立っていた。

「あなた♪気をつけてね☆あんまり呑みすぎちゃ駄目よ?」
「さ〜やの為だからね(*^∀^*)気をつけるよ♪」

周りの花が溶けそうな会話をしているところを見ると夫婦なんだなと察した槇。
「花束をお願いしたいのですが…」
会話に割り込むのをやや躊躇いながら槇は花を注文する。


「あら、すいません☆はいはいどんな花をご所望ですか?」
冴子はにこやかに出て行く史郎に手を降ると槇の要望に気付いたように笑顔でたずねる。

「うん。花はよく分からないからお任せします。」
そういいながら一万円札を冴子に手渡す。
「かしこまりました…プレゼントですか?」
「そうなんだ。」

短く返事をし、携帯を眺める槇。貴子からのメールの確認でもしているんだろうか。

「失礼ですが、お贈りなさるのは女性ですか?」
「うん。彼女なんだ(笑)強引に花をせがまれて」

「そうですか(笑)きっとお綺麗な方なんですね。」
「うん。気の強いところはあるけど、性格が可愛いんだ」

二言三言の会話をヒントに手際よく花を選んでいく冴子。
瞬く間に可愛らしい花束が出来上がった。

「…凄いな…」
「ありがとうございます♪」
槇の驚くような満足そうな顔をみてほころぶ冴子
「今朝の花も良かったが、やっぱり評判のお店なだけあるな…」
ふと、槇が漏らした言葉に引っかかる冴子。

「他の花をお持ちだったのですか?」
「いえ、今朝誰からか分からない花がうちに届いたんだよ。」
「そうなんですか…どんなお花ですか?」

「いやぁ、花には疎くって(笑)確か白い花だったような…」

そういいながら何気に店を見回して槇は呟いた
「うん。こんな花だったよ」

「…そうですか…」
「うん。気味が悪いけど凄く綺麗だったんで家に置いてあるんだ」
「お客さm…」
冴子が何か言いかけたとき槇の携帯が鳴る
「あ、彼女だ、すいませんありがとうございました」
軽く会釈をし、慌てながら携帯に出る槇

「もしもし?あ、貴子?もうすぐ着くから…!いやいや(苦笑)」
慌てて駅のほうへと走り出す槇

その背中を見送りながら何やら奇妙な偶然に驚きを隠せないまましばし立ち尽くす冴子

「あ、いけないもうじき予約のお客様がいらっしゃるわ」
思い出したように冴子は再び先ほどの花束の製作に取り掛かった。

「もう…遅い!」
駅に着いた時には約束の6時を少し過ぎていた。
「ゴメンゴメン♪ちょっと花屋でもたついちゃって」
そういいながら花束を貴子に渡す槇。
「わ♪綺麗w」
「そうだろ?僕もビックリしたよ。」

やはり冴子のフラワーアレンジは最高らしい。さっきまでふくれていた貴子を一瞬にして笑顔に戻す。
「この花に免じて許してよ♪」
「仕方ないわね…」
「さぁ行こうか」
「そうね」
二人は肩を寄せ合いレストランに向かった。

しかし、着いたレストランは定休日の文字が…。
「…ったく…肝心なところはいつも抜けてるわね…。」
「あれ?…確か先週は開いていたのに…」

「でも、定休日は水曜と書いてるじゃない。」
「あれ?今日は火曜日じゃ…」

「帰る。」
貴子はくるりと向きを変え颯爽と歩き出す。

「ちょっ、ま、待てよ!」
慌てて貴子を止める槇。
「こ、この近くにBarがあるんだ、そこはフードもあるし、今日は絶対開いてるから!」

なんとか貴子をなだめて、槇はなじみのバーへと向かう。
「此処だよ。」

着いた場所は少し錆びれた場末の雰囲気のある飲み屋街

だが、その一軒だけはなんとなく暖かい雰囲気の間接照明と、やや控えめな看板がひとつある、少し洒落た店先だ。

看板には 『Barルイーダ』と書いてある

「へぇ…良いとこ知ってるじゃない…」
「本当は食事の後に連れてこようと思ってたんだけどね(笑)」

機嫌の直った貴子を引き連れ、槇人は店へと入っていった。






朝の闇出演者様

竹間愼 (たけましん)
【ケッタマシン】


花髪 楓(はながみ かえで)
【かちょ】

大場(おおば)
【脳噛ダイゥァー】


久右 史朗(ひさみぎしろう)
【くうちろ】

久右 冴子(ひさみぎさえこ)
【さや】

南 貴子(みなみたかこ)
【MNKS】

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