3(前編)
ルイーダの酒場殺人事件3-forロクロサイド-※かちょさんと共催企画です


第三話

ダイバーの視線

「う〜ん。」

禁煙パイポをカリカリ言わせながら何度もカードを切りなおす。

「折角ロクロママにお祝いの占いをしているのに、何だこれは。」

出てくるもの全て不吉な結果


…まるであの日のようだ。


「集中力が足らんのかな」

そう呟くと
仕方なくダイバーはDVDをセットした。


「最初の20分くらいは疲労が少ないから誰でも出来るんだ!
後は根性あるのみ!!!
途中で辞める奴も多い!

だから心のトレーニングも必要って訳だ!」
万鬼「わかったかーーーーーー!」



相変わらずハードな内容だな…。


二十分が四回続いたらどうなんですかビリー様


占いが終わるたびにやってればきつくもなるか。

最後にしようとカード切ったとき

携帯から着メロが鳴る


「ご、ごめん!!!今起きた!!!!」

「じゃ、先行く」

「えぇ!!そんなちょtt」

ブチッ

MNKSが言い終わらないうちに携帯を切ると

ライフカードを一枚引く

出た答えは


"乗る。"


「…何にだ。」

とりあえず頭に入れておくか…

占いで出たのは

三つの不幸と三つの幸福が合わさった日
幸福と不幸はランダム



となった。

「あとでさやぴにも確認するか」

出かける仕度をし家を出るダイバー。

その時メールがMNKSから届いたので

「場所は取って置くからちゃんと身だしなみをしてこい」
と、メールをした。

途中ばったりかちょに会い一緒に来たのは良いが
あいつ、誰かを待ってたんじゃ…。

そう思いながらもここで飲んでるわけだし

「ドライマテーィニ」「あ、わたしも!」


かちょのやつペース速いけど大丈夫なのか…。

ちょっと心配になりながらも
まぁ、今日はロクロママのお祝いだ

介抱くらいは覚悟しておこうか。

後ろで鉄血のやつ新作のブートキャンプがどうのと
やたら興味が湧く話をしているのが気になる。

その横では電王の話がちらほら…。

益々気になる…

かちょもテンション上がってるし、流石に鉄血に合流するわけにもいかんな…

奴は来ないし。

半ば、かちょの相手でいいか…とか考え出したとき

不意に隣に誰かが座った。


MNKSの奴やっときたか…

「あら?ダイバーさんじゃない」

この声は…

嫌な過去が波風を立ててやってきた。

「お前…kanappeか?」

「あら?他人行儀ね(笑)」

サラリとした
おおよそ忘れる事が出来ない声の主はさも親しげな笑顔で返してきた

「…他人だよ」

間違いなく俺とお前はな…


どうやら隣の占いの弟子は勘違いをしてるようだ…。

かちょの顔色が少しずつ高揚しているのが分かる

…分かりやすいのは占い師として禁物だと言ってるのに…。



不幸はひとつ片付きそうだな…



しかし、kanappeが一体何故…

確かにロクロママとの繋がりは有ることは聞いたことがある。

だが、俺が来ることは当然わかっているはず。

一体何故…

「おかわり如何ですか?」

バーテンの娘さんは
俺とかちょのドライマティーニをカウンターに丁寧に置きながら

kanappeにオーダーを聞く

…ちょもさんだったっけな?


「私も同じ物頂こうかしら」

「かしこまりました〜」

にこやかにバーテンのちょもは奥に帰りロクロママにオーダーを通した。



…かちょよ。

どうでもいいがあからさまはよせ。

タバコに火を付けるカナッペを見ながら笑顔がひきつっている。

…これで不幸一個分か?


「いつ以来かしら?」kanappeは場を無視して話しかけて来る

「さあな…あの日以来幾度か会っているからな」
「そうねぇダイバー少し痩せたんじゃない?」


「腰元とかあのときより締まってるみたいよ(笑)」



…こいつ。
わざとか。

そうこうするうちに
ふと見ればかちょは居なくなっており、もうじき始まる演奏のためにさやぴとswanがカウンター付近にあるピアノとステージにに向ってやってくる

途中さやぴはダイバーに気づいたらしく、あくまでもにこやかにダイバーに近付いてき
た。
占い師同士から見れば深刻な顔そのものだとしても…

「ダイバーさん…」

言ってはいけない事を隠す様は占い師にとって必要なスキル

ロクロママにわからないよう気を使いながらも、やはり不安な表情は隠せない

「さやぴ…やっぱりお前もか」

「ええ。でも三人で成し遂げればって出たんですが、何の事かサッパリで…」

「とりあえず演奏が先だ」

「…はい」

思い詰めたような表情でさやぴはピアノの前に着く

「お弟子さんかしら…相変わらず人望は厚いのね」

「以前のお前程ではないさ」


柔らかいその声の奥の感情を感じるとダイバーは身震いが起きそうだった。



いつの間にかかちょは席に戻り、先程とは違う心からの笑みを持ち
swanの歌声を聴いている。

ようやく一個目の不幸は終わるのか…


ダイバーはそう思ってた。

そんな時
不意にかちょが聞いてきた。

「ねぇ、師匠?」
「ん?どうした?」

「演奏が始まってますし、乾杯しません?」

急に何か嫌な予感が走った。
だが、ここでその予感を見せるわけにいかない。

「別に良いけど?」
「じゃ、乾杯。」


かちょが勢い良く飲み干す

明らかに作為ある飲み方…
どう捉えるか。


「…かちょ。勢い良すぎないか?」

「ささ、師匠も」


不意にライフカードの言葉を思い出す。



"乗れ"


とりあえず乗る方が無難か。


何よりも、ここで飲んでおくことで酔った振りでもして場をしのぐほうが良いだろう
と考え


口元にグラスを傾けた




ガラン!

口をつけようとした瞬間


不意にそして乱暴にドアが開かれた

「あら?夢島さん…ようやくお越しで(笑)」

やってきたのは夢島というママの友人らしい。
ママがそう言ったので間違いないだろう。

なぜかこけそうになりながらの登場

体制を整えつつも憮然とした表情でママに語りかける


「ったく、ママの姪っ子に会わなけりゃたどり着けなかったよ…
何笑ってるんだよ一体誰のせ…………あっ!!」

ガシャン…。
不意にグラスの割れる音

バタンッ!
床に倒れる弟子

「かちょ!」

抱き上げて見たが
息をしていない…

これが何番目の不幸かなど、どうでも良かった

かちょが息をしていないのは過去でも未来でもなく

今、俺の胸元にある事実だ。


「いやあぁぁぁぁぁ!!」

suwanの叫ぶ声が響き、ひとつの不幸が完結された瞬間だった。

後編へ続く








3(後編)
ルイーダの酒場殺人事件3(Bside)-forロクロ- ※かちょさま共催

第三話後編

「…はい。お願い致します。」


ロクロママはそう言うと受話器を置いた

かちょが倒れてほんの少し経ったbarルイーダの酒場…。


「…こんな事になるなんて…。」

ママは警察に連絡したと皆に伝えた後、うなだれるようにそう呟いた。


それはそうだろう。
開店記念に仲間達に集まってもらった場で、まさか事件が起こるとは。

ママの心中を察するに有り余る状況だ…。
バーテンのちょもがママを優しくなだめる


客席は幾分か落ち着いたようで、ボソボソと会話が始まった。

当然皆この状況では大きな声なんて出せない。

何がなんだか解らない
今辿り着いた汗びっしょりな
派手なドレスとトンガリブーツを履いた女を除いて…

MNKS「ねぇ!ダイバー?一体どうしたの?」

流石に何か起きた事は分かっているらしい。
ダイバー「…もう少ししたらちゃんと説明する」

ぶっきらぼうに答えると扉の方に向いた体をカウンターに戻す。


とたんに会話と視線が背中に突き刺さる


…当然か。

どうみても犯人は俺。

しかし、一体何故かちょが…


考えていると後ろから聞こえて来る声



わたなべ「…どうなるんですかね…」


四階堂「とりあえず警察が来るまで動けませんし…。」

波nori「…それよりも何故こんな事が…。やっぱり…。」

鉄血「かちょ…わしが先に着いて居れば…。」

ケッタマシン「鉄血さんのせいではありませんよ…」
鉄血「慰めは要らん。事実に変わりがない」

ケッタマシン「…ですが、なんかかちょさんの倒れ方変じゃなかったですか?」

その一言で皆ケッタさんのほうを向いた

鉄血「どういう事だ?」

ケッタマシン「いや、毒を飲んだにしたらやけに静かに倒れたな…って。
イメージでしかないけど毒を飲んだらちょっと位は苦しむんじゃ…」

四階堂「確かに。わたしも毒を飲んだ人を間近で見たことはありませんが、なんだか変ですね。」

わたなべ「…そうかな…あっしは気付かなかったな…」

二階堂「こんな時にすいません。ちょっとミステリ入ってますよね」

無論二階堂は場を和ませる為に言った事は
周りにも分かった

しかし、その言葉の先には誰も続いてはくれなかった。

犯人はもう俺

だんだんそんな雰囲気になってきてる…

ピアノに肘をついたさやぴが「馬鹿ばかしい。」と吐き捨てるように呟いて、
ペットボトルに口をつけた。

影を落とすswan
彼女も言ってみれば被害者かもしれないな。



さやぴ「あの…」

唐突にさやぴが呟いた。

さやぴ「かちょさんが席を外してる間…私見たんです…。」

か細い声で、でも力強くさやぴは続けた…


さやぴ「誰かがグラスに何か入れてるのを」


周りがざわつく


さやぴ「だけど…」

ためらいつつもさやぴは続けた。


さやぴ「演奏の時に楽譜越しにチラッと見えただけだから…」


さやぴは確証を掴んだ訳ではなかった…




二階堂「波乗りさんはどう思う?」
不意に二階堂は尋ねた



波nori「はぁ?」


二階堂「波乗りさん、さっきからカウンターの方見てたでしょ?」

波nori「そんなの四階堂さんも部長もでしょ!
だいたい私が見てたのはかなっぺさんが心配だったから…」


kanappe「あら、見てたの?」
kanappeはにっこり笑って応えた。

さやぴはkanappeをギッと睨みつけた。


ダイバーは考えていた

ケッタマシンさんが言うように

確かにかちょの倒れ方はおかしかった…

しかし、抱き上げた時には確かに息はしてなかった…

待てよ…

ダイバーはふと、一つの疑問と答えが結びついた…


ま、まさか…

いや、それを知っているのはMNKSと…


全てを理解し

ダイバーは一言こう言った。



「……。俺がやった…。」


ざわめくルイーダの酒場


そこにはきょとんとした顔のMNKSだけを残して


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