ルイーダの酒場殺人事件2※かちょさんと共催企画です
第二話
かちょの視線

「ちょっと早すぎたかしら…」

約束の30分早く来るのは普通になっているので、
ついついその30分前に間に合うように着いてしまう

いや、社会人としてはいいんだけどね。

今日はロクロママのお店

「ルイーダの酒場」がオープンする日。

居酒屋ルイーダではお世話になったし、

なによりみんなに会えるから。


まさかロクロさんがママになるとは思ってなかったけど。


鉄血さんとの待ち合わせ場所で待ってると

よく知っているガッチリした人が人が通りかかった

わたしには気付いてないみたい。

ちょっと失礼だな。

「あら?ダイバー師匠!」

深刻な趣で
通り過ぎようとするダイバーに声をかけた。

「なんだかちょ?お前も行くのか?」

「ええ。オープンのチラシ貰ったし、みんなも来るって言ってたから」



「なんなら話は早い。
あそこ、カウンター4席しか無いし、早く行こう」

「なにより、ビリーのしすぎで足がガクガクなんだ(笑)」


又3日分位したんでしょ…
どんだけ鍛えれば気が済むんでしょうかこの人は…

「師匠らしいですね(笑)」

笑顔で答えさてどうするか…


う〜ん。鉄血さん場所知ってるし、後でおごればいいか。


ちょっと気になりながらも

師匠の誘いをなんとなく断るのに気が引けたので
鉄血さんに電話をしてみた。



…地下かよ。


着歴残るし、メールくれるでしょうからいいか。

そう思いルイーダの酒場にやってきたのはもう一時間前。


鉄血さん遅いなぁと思いつつ久々に会った師匠の講座はやはり面白く

私の意識を離さない。

なんだか酔いもゆっくりやってきてテンションがあがってきた。

「あ、私も!」

ドライマティーニを注文する師匠に次いですかさず乗っかる。

本当は日本酒がいいんだけど。



注文したお酒が届く前に師匠の横に見慣れない女性が座った。


「あら。ダイバーさんじゃないの。」

「お前…kanappeか?」

「あら、他人みたいに言わないでよ(笑)」

「…他人だよ。」

二人は知り合いみたい。

それからさっきまでとは違い女性のほうばかりに気を取られてる師匠

何か放ったらかしにされていることにちょっぴりイラっときた。


たばこを吸う女性は嫌いだって言ってたのに。

こんな時はアレよね。

胸元から小さな包み紙を取り出すと、封を空け
そっと自分ののドライマティーニに注いだ。

一分か…。

何やら親しげに話す二人を気にせず化粧室へ行き携帯を開いた


げっ。鉄血さんからメール来てる!
しかも3通も…

返信しようにも、もう着いてるんじゃないのよ…。
全然気付かなかった。

そんな時携帯の時計が一分進むのを確認した。
まぁいいわ。アレが済んだら謝ろうっと。


化粧室を出ると、鉄血さんがケッタさんと熱く語ってる。

「これか?これは我輩の苦労の結晶である!」

隣の女性が鉄血さんの熱いトークに微笑んでる

あの女性…カナさんとか言う人のお連れかしら…。
気になりながも
そんな事はどうでも良かった。


…二人の邪魔をしないほうが良くてね。

だって、私が楽しまなきゃいけないし。


そう、つぶやき 鉄血に気づかれないように席に戻るかちょ。

相変わらず隣の人としゃべっている師匠に、もう同情の余地も無く
もう始まろうとしているスワンさんとさやぴさんの演奏を邪魔するわけにも行かない

し。

って、歌いだしちゃったよ。

こっちもあんまり時間がたつと効果が薄れるのよね…

そっと自分のグラスをダイバーのグラスと入れ替える。


「ねぇ、師匠?」
「ん?どうした?」

「演奏が始まってますし、乾杯しません?」

「別に良いけど?」

「じゃ、乾杯。」


私が一気に飲み干す。


「…かちょ。勢い良すぎないか?」

「ささ、師匠も」

師匠はあんまり飲めない。

でも、場の雰囲気を大切にする人だから。

師匠は必ず乗ってくれるはず。


諦めたようにダイバーが飲もうとしたとき。


ガラン!


入り口の扉を開く大きな音がした。

ピアノの演奏が止み、ゴスペルの綺麗な声も止まり

扉を開けた当人に視線が集まる。

「あら…」

ママがお客の名前を言いかけたとき


急に目の前が暗くなる。

あれ?なんで私に?

遠のく意識に、アレとは違う意識の消え方に
「私…死んじゃうの?」

心に不安がよぎる

まさか、量が…

ドスンと響く店内

入り口から視線を外し真反対の方を向く一同

その先はすでに息の止まったかちょが…


先ほどとは声の質が違う大きな声で

スワンは叫んだ


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