最終話

完了■ルイーダの酒場殺人事件5-forかちょ-【ロクロママ視点】 ※ロクロ粘土氏共催イベント


ダイバーさんがあたくしの方を向いた瞬間、
ブフォッwwwwwwwwww
カクテルの中身を吹き出した。
途端襲う痛烈な痛み。
ちょっ!マジ痛いんだけど!!

「目がぁ、目がぁwwwww」

のたうち回りそうになるのを堪えるも痛みに体が動く。

「ムスK…じゃないママ!」

あたくしを揺さぶる娘のちょもに『それラピュタでしょ!』と突っ込む事もできずに水を求める。

「ちょっと待っててね!」

体を支えようと手を伸ばした時ありえない声が響いた。

「キャッ☆引っ掛かった♪」

…今の声!

痛む目を無理矢理開けて奥の方を向く。
暖簾を片手で上げながら覗く顔。
幼く見える丸顔が憎らしいくらいにニヤニヤしている。
本当に、本当に生きてた、の?

「……か、ちょさ…?ん」

唇から溢れた名前。
彼女は確か薬を飲んで死んだはず。
呼ばれたかちょさんはにっこり笑うと

「ママ!早く洗わなきゃ失明するかもよ♪
 なんせ、200倍カレーより辛い香辛料入りだから(笑)」
「ひ、ヒィィwwwww」

お化けだと思うと同時に彼女の言葉に恐れが入り、思わず地声で叫んでしまう。
そんなことより洗わないと!
急いで目を洗う。
さすが特製ウォータープルーフ(ロクロママ仕様)、これぐらいで化粧は落ちない。

「化粧品に何混ぜたんだか。」

ケタケタと笑うかちょさんは店内に入ってきて、
あら!足があるわ!
ジーンズにサンダルがあたくしの目に映る。

「かちょさん!やっぱり!」

ケッタさんが立ち上がって叫ぶと、負けずに鉄血さんも立ち上がった。

「おぉ!生き返ったか!!!!!(万鬼)」

右手でワキワキと動くパンダ。
隣のテーブルで四階堂さんも頷いている。

「うん…ありがちなオチですね。でも良かった」
「もう!」

かちょさんに抱きつくsuwanさんの顔は安心している。

「良かった…本当に…」
さやぴさんも側に立ってそっと涙を拭った。
ようやく落ち着き、ダイバーさんもうがいをし(まだ咳き込んでるけど)、
一通りの騒動が収まってからkanappeさんとダイバーさんが起きた出来事をまとめてくれた。

実はかちょさんが飲んだ薬は睡眠薬だということ。
ダイバーさんとカナッペさんは特定の睡眠薬に拒絶反応をして眠ったままだと昏睡状態に陥ってしまうこと。

長い話を省略すればそんな話。

不意にドリンカーさんが口を開く。
「しかし、かちょが睡眠薬を飲んだのは分かるが、kanappeのグラスになぜ
 かちょの入れたハバネロスペシャルが入っていたんだ…?」
「そうなのよね。」

kanappeさんも不思議がっていた。

「ダイバーのグラスなら分かるのに…。」
誰かが入れ替えない限りkanappeさんの所にあるはずは無いんだけど、
誰もカウンターに近づいていないのに。
もちろんあたくしも入れ替えたりなんかはしていない。
かちょさんがなんだか眉をピクピクさせて何か言いたそうにしてるけど見ないふりをしておこうかしらね。
そのまま思案にくれていると突然娘のちょもが頭を下げた。

「ごめんなさい!」

一同はちょもの方を向く。もちろんあたくしも。

「どうしたの?ちょもちゃん?」

私が聞くとちょもは困ったような顔で話してくれた。

「ママ…あのね、kanappeさんのドライマティーニを置こうとした時にね、
 ダイバーさんのグラスが何か濁っていた気がして咄嗟にkanappeさんのと交換したの…
 kanappeさん、あんまり飲んでなかったから後でスキ見て交換すればいいかなって。
 でもよく見たらね、今度はかちょさんのがスゴく色が無い水みたいで…かちょさんはいいペースで飲んでたでしょ?
 最初に飲みそうだったからかちょさんとダイバーさんのグラスを入れ替えたのっ!」

混乱する一同。

「えっとタイミングとか色々あるよね…」
「話を整理しないとわからん。」

その中で誰よりも早く答えの分かったらしい二階堂さんがボソリと呟く。

「つまり、本当の真犯人はちょもちゃんなんだ?」
「ご、ごめんなさいっ」

とたんに泣き出すちょも。

「ち、ちょもちゃん!泣かなくても!」

そ、そうよちょもちゃんのおかげで誰も死なないで済んだのよ」
慌ててsuwanさんとさやぴさんが娘をなだめる。
そばで苦笑いするのはダイバーさん。

「ある意味死にかけたがな…。」
「ダイバーっ!」

すかさずミンクさんの突っ込みが入り、店内は泣き声と笑いが溢れた。
けれど、それをぶち壊すかのように力強く入口のドアが開かれた。

「警察だ!」

トレンチコートに身を包み、あからさまに警察官だと誇示するように警察手帳を振りかざして現れた男。
再び店内に緊張した空気が漂う。
そんな中でkanappeさんがカウンターに手をかけて立ち上がった。

「私、行くわ。」
「お姉ちゃん駄目!

誰も死んでなんかないじゃない!」
ゆきむちゃんの引き留める言葉に夢島も乗る。

「そうだ!まだ口説いてないし!」

…だから違うでしょう。

「そうそう!なにかの間違いですよ!」

わたなべさんもとりなすように言ってくれるけれどもkanappeさんの表情は硬い。
そっと首を横に振り、

「いいのよ…ワタシがダイバーをk…」

そう言いかけた時にちょもが驚いたように警察の人を指差した。

「パパ、パパ!」
「ちょもちゃん!此処ではママよ!」
「あの人の顔!見て!」

顔?そういえばよく見てなかったけど…。
警官の顔を見れば懐かしい顔だった。

「ヤスゥゥウウウ!!」

自然と体が前に出る。
姿勢は低め。
そして勢いをつけて彼に飛びかかった。

「ち、ちょっなん…離して下さい!」

そんなにジタバタしても離せないわよ。レスリング部所属のあたくしをなめないことね。
でも、そんなことより…

「ヤス!捜したのよ! あなたが店の資金持ってっちゃうから
  こんな辺鄙な場所しか借りれなかったのよ!お金はあげるから帰って来て!!」
「ひ、人違いだ!」

その必死な顔も相変わらずね。
あたくしは騙されたりはしなくってよ。

悶える彼をしっかり抑えつけて何度も接吻する。

「うわぁ…。」
「誰か助けなさいよ…。」
「…巻き込まれるのはちょっと……。」

一同どん引き。

それから少しして鉄血さんとケッタマシンさんがあたくしを引き剥がした。(後で彼らはジャンケンに負けたのだと聞いた。)
あたくしのゴタゴタで殺人事件はウヤムヤになったようで、顔中キスマークだらけの警察の人は帰っていった。

「ヤスじゃなかったのね…。」

そりゃあの駄目男が警察官なわけないのなんて少し考えればわかることだけど。
でも、あまりにも似てたから。

「ヤス…。」

うつ向いた顔はきっと酷いものだろうからあたくしは上げることができない。
と、おもむろにsuwanさんが唄いだした。
それを追うようにピアノの伴奏が入る。
ハミングする少し音痴な声はかちょさんだろう。
一人、また一人と歌に参加する人が増えていき、やがてあたくしを囲むように皆の歌が店内に溢れかえる。
みんな…。
さぁあたくしも涙を止めなくちゃ。
きっと特製ウォータープルーフの化粧品は崩れているだろう。
それでももう構わない。
あたくしは顔を上げて笑うと口を開いた。
皆で歌い続けているとトロンボーンを手に颯爽と入ってきた一人の男性。

「僕も混ぜて下さい。」

さやぴさんが驚いたようにダイバーさんを見た。

「ダイ兄!三人揃った!」

ダイバーさんは笑うとジャケットを脱ぐ。
黒のTシャツには白くで脳噛と書かれた文字が。

「やっぱお洒落してないじゃん!」

ミンクが彼をこずいた。
皆笑っている。
kanappeさんも憑き物が落ちたようにゆきむちゃんと目を合わせて歌っていた。
とんだオープン記念だったわね…。
けれど、皆が心からハッピーになれた。
それであたくしは満足。

「ママ!マティーニ!」

…懲りないわね、かちょさん。
さっ、今日は夜通し楽しみますか。




ようこそ「ルイーダの酒場」へ

此処は恋に哀しみを覚え
故に恋を引きずって訪れたお客様を癒す場所

本日は開店記念として
ちょっと変わった趣向にて
皆さんには楽しんでいただけたら…

あたくしはママのロクロ

少しダミ声ですが

慣れて下されれば…


まだお席は空いてましてよ

どうぞ
いらっしゃいませ…



























■ルイーダの酒場殺人事件-BONUS TRACK-

「へんね…」
結局のところ誰も死ななかった。
確かに彼は殺人事件だと言っていたはず。
タイトルまでそれを謡っているのに。
それなのに出たのは睡眠薬。
演出なんて思ってスパイスなんか追加されちゃって。
携帯をパタンと折る。
「どしたの?」
「何でも無い。」
ダルそうに答えて私はイスによりかかる。
目を瞑り心地よい歌声に耳を傾けること少し。
目を開いた時にはもう手の中に在る一つの薬。
さぁ、惨劇を始めましょう…。


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