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-LIVE CARD-第一話 大盤振舞 第十二幕 2007年11月09日12:58 「…スワンちゃん?」

クラブメルキドでスワン相手に酒を飲んでいた夢島は、表情が一変したスワンに声をかけた。

聞こえたのかどうか分からないがスワンは突然席を立ち

「夢島さんちょっとごめんね☆」
と言うとトイレに小走りで走った


「…我慢してたのかな……」

溶けた水割りの氷が、カランと音を立てたのをただ夢島は眺めていた


トイレでスワンは携帯を取りだし
最後にかけた番号へリダイヤルし

「フジッコ刑事部長…全て出揃いました!」


と、興奮気味に伝えると、現場の空気がスワンに伝わってきた

「でかした!緊急配備に切り替える」

フジッコは歓喜に溢れた声で返答した。


それもその筈
すこし前に起きた殺人事件の誤報以来フジッコはどうもついて居なかった。

詐欺事件では犯人を目の前で取り逃がし

誘拐事件では人質は助けれたものの犯人は管轄の刑事

しかも、ただの身内揉めの狂言…

日々肩身が狭くなり昇進所か降格も危うい状況…


そして日々見る悪夢…

「こんな生活も今日でオサラバだ…スワン君…頼むぞ…」

ボソッと呟きレッドカード前にいる部下達に命令を下した
「これより緊急配備に切り替える!
全員配備に着け!」

「ハッ!」

警察の一同は隣町に向かうべくパトカーに乗り込んだ。


シャワーから出たカナペはその様子を確認し長ランを着込み
木刀を腰に差した
「ビデオは予約したし。さて☆楽しみだわ♪」


カナペは意気揚々と脳噛事務所を出るとかちょママの愛車に股がり

バイクのキーを差し込んだ。

このジョルノは
かちょママの旦那であるケッタマシンの改造が施された特製のバイク。

メーターこそ偽装され60キロ表示だが、実は180キロまで出る。


操れるのは数人のモンスターバイクだ



通常のエンジン始動位置までキーを回すと

もう一度キーを捻る

フォォンッ

原付には似合わない低いエンジン音が響く

「やっぱりこの音…胸が騒ぐわ♪」

警察が出動する準備が終わる前にクラブ・メルキドに向けて走り出した。


電話を切ったスワンは
クラブ・メルキドの裏側に回り
従業員用の細い通路を通り

ドレスを着たままエレベーターホールへと回った。

「確か、このエレベーターに秘密があるはず…」

ダイヴァーに取り付けた盗聴器から聞こえた内容で確かにそう言っていた


エレベーターに乗り込み色んな所を触るが変化は見られなかった。

「絶対何かあるのよ…うぅ〜んっ…」

一番怪しそうなパネルを無理矢理開けようとするスワン。


だが、それも虚しくパネルは開かないい


「えぇ〜い!こうなったら…





アバカム!



…なんてね☆」

笑いながらパネルを小突いてみた。


偶然だろうか?
突然エレベーターが動き出した


「えぇ?嘘?魔法が効いたの?」
驚きを隠せないスワン

上に昇る事を想定していなかったので尻餅をつく。

「痛てて…」

立ち上がり前を向いた時エレベーターが開いた。




「スワンさん…どうされました?」

立って居たのはあの門ば…ドアボーイの大男。


「え?いや…あの…お客様をお送りしようとしたら突然…」

なんとか誤魔化そうと明るく答えるスワン

「ほぅ…さようでございますか…」







「んなわけねぇだろ。そう簡単には済ませれねぇよ。


悪ぃな。監視カメラ付いてんだこのエレベーター。


…何をかぎ回ってんだこのメスネコが!」

男は突然態度を変えスワンに襲いかかった

:大男の攻撃

ミス!
スワンはヒラリと身を返した


:スワンの攻撃

スワンは力任せにあしを蹴りあげた

大男に250ポイントのダメージ

大男は足が麻痺して動けなくなった


:大男の攻撃
しかし大男はうずくまっている


:スワンの攻撃
スワンは逃げ出した!





しかし、回り込まれてしまった!

:大男の攻撃



などと遊ぶ余裕もないくらい
怒り狂った様子で再びスワンに襲いかかる。


「こ、このアマッ」

大男はスワンの肩を掴もうとし体を大きく前に突き出した


スワンはしゃがみ込み
すかさず股ぐらを狙い蹴りを入れるも感づかれ、足を掴まれてしまった。

大きく持ち上げて投げつけるつもりで大男は足を振り上げた


「キャッ…何すんのよっ」
スワンは掴まれた足を軸に飛び上がり腰を捻って顔面を狙い蹴りを入れた。

「チッ」
大男は避けきれぬと判断し掴んだ足を放り投げるように離した

バランスを崩して背中から落ちるスワン。しかし、華麗に受け身を取り、バク転の要領で立ち上がる。

「セクシー路線でキメようとスリット入りの服にして良かったわ」

その身のこなしきに驚く大男

「てめぇ…何者だ?」

オクビもなくケロッとした営業口調でスワンは返事をした。

「メルキドのNo.1ホステスのスワンちゃんで〜す☆」

「…フザケやがって…」


大男はネクタイを外し太い方を手に巻き付けるとタイピンにしていた錘を細い方に付けて回し始めた

「拳法とか聞いてないし!」

スワンは大男の武器捌きを見て少し焦りつつ

「流星錘か…ちょっとヤバいかな…」

微妙な間合いを取り
スワンは勝ち目が薄い勝負の行方の行方を憂いていた。



一方カジノでは
さやの回すルーレットを挟んでダイヴァーとラフィが座っていた。

普段のさやならダイヴァーの置くであろう位置を予測(予知)し、楽勝に勝てる筈だった

しかし、現実はラフィが大きく勝ち越している。

最初ダイヴァー贔屓だった客も徐々にラフィの方へと賭ける人数が増えて来た。


ゲームの方法は単純
最後にコインがゼロになったら負け。

客は1ゲーム毎に賭けて行き最終的に勝った方が山分けする。

さやの動揺もあってか
流れはラフィに傾いている


さやは回りに聞こえないようにラフィに問う

「ねぇ、ラフィ?どうしてあなたが?」


「簡単だよ。ネェに博打の才能があるなら俺にもある筈。それを試したいだけ。」

淡々と答え大胆にも数字の上に賭けて行くラフィ

「嘘。私には分かる。あんた何を吹き込まれた?」

「べ、別に」

会話とは関係なく勝負は進む

「オォー。」


再びラフィが当たる

ダイヴァーの持ち分は3分の1程になった

無表情にチップを置いていくダイヴァー

「その言い方…白状なさい。」
ルーレットに入れる玉を強く握りキリキリと音を立てる

「うるさいなぁ…」

さやの問いにイライラしたのか
やや乱暴にチップを置くラフィー
置いた場所は00


出た目も00

流石に出来すぎた結果にさやだけでなくとも不自然に感じた

「…おいおい総取りかい?」
観客もラフィーの勝ち振りに少し疑念を持ち始める…


「流石店側が推薦する刺客…いや、失礼
ギャンブラーのkingだ。一筋縄では行きませんな(笑)」

ダイヴァーは敢えて疑念をぬぐいさる。

「そりゃまぁそうか(笑)旦那が圧勝する方がよっぽど胡散臭いわな(笑)」

観客の一人がダイヴァーの意見に賛同する。

「さて…試してみるか。」
ダイヴァーは残りのチップを全てレッドに掛けた。

外れればゲームは終了

ラフィーは慌てlowに置く


結果はレッドの5(low)

供に勝利

「おーっ引き分けかぁ」
「旦那もやるね(笑)」

観客はダイヴァーの勝利に安堵をもたらした。


「…やっぱりな」

確信を得たのはダイヴァーだけではなくさやも同様だった。

ルーレットには細工がしてあり
何らかの方法で出目を操作出来るようだ。

つまり
これは他の観客から金をせしめる出来レース

此処でダイヴァーが負けてしまっては客から金をムシリ取れない
だからダイヴァーに勝たせた


ラフィーは強運でも何でもなくただの飾りだったのだ…

悲しい目でダイヴァーを見つめるさや。


不意に方目をつぶり一瞬だけにっこりと笑うダイヴァー
その笑顔はいつものダイヴァーがさやを安心させる笑顔とは違うかった。


「ククク…得意なんだな…こういうの…」
ネウロが謎を見つけた瞬間のような凍り付く笑顔を。

少しだけ悪魔の顔を覗かせたダイヴァーを
さやは見つめながら少し身震いがした。







「スワンちゃん遅いな…


あれか。





出ないのかな…」

すっかり溶けた氷を眺めて
夢島はただスワンの帰りを待っていた。

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