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-LIVE CARD-第一話 大盤振舞 第十一幕


時を同じくして場所は脳噛事務所横のカフェレッドカード

カジノを摘発すべく警察は待機していた。


脳噛探偵事務所から眺めるカナペ「ズスッ〜ッ」

ダイヴァーの命の源のカップラーメンを啜る


「関西風味って結構いけるわね」
なんていいながらどんべえのツユをすすり終えると
食料庫と書いてある棚に手を伸ばした

三杯目を手に取ろうとしたとき何かが貼ってあった。

「ん?」

不思議に思いながらも読んでみると

『請求書カナペ様』
と書いてあった

丁度カップラーメン三個分の値段。
しかも、カナペの行きつけのスーパーの特価価格。



ちょっと眺めていたが気にせず三個目の袋を破るカナペ


そうしているうちに
無線連絡が入ったみたいで警察の動きが慌ただしくなっていた

「お湯入れる前で良かったわ」
カナペはそのカップ麺を戻すと
請求書の宛名を書き換え、金額に丸を足すとキスマークを付けた。


「出発の準備しなくちゃね。
だけど9月だと言うのに何なの?この暑さは…」

そうぼやくと再び部屋の奥に戻りシャワー室へ向かった。




再びメルキドのカジノ

「もう一枚」

ダイヴァーは四枚目のカードをディーラーである青目の正人に要求した。

周りには人だかり。

その人だかりに負けないようなチップを積み上げるダイヴァー。

ダイヴァーはその四枚目のカードをめくる。

観客と化した他の客は固唾をのんで勝負の行方を見守る…


「…勝負」

カードを開く正人

キングとジャックの絵札が正人の手からテーブルに並べられた。


オォー!!!!

観客からどよめきがおきる

「流石に今回は無理だろ」
「いくらなんでも…な」

皆はダイヴァーの札の行方を見守る

表に開いているカードは


ジャックの3
スペードの9
最後のカードがハートの8

皆は殆んど否定的な意見を言いながらもダイヴァーのカードは勝利をもたらすと思った

いや願っていた

伏せたカードを開くダイヴァー




そこにはハートの2が。



会場中に広がるようなため息

その後どこからともなくダイヴァーに拍手が送られ
釣られるように皆の歓声が響いた

「いやぁ惜しかったですね」

「本当に勝っちまうかとおもったよ(笑)」


残念とも、一人勝ちの負け様に
案外胸を撫で下ろすかのような
ため息ともつかない表情で

ダイヴァーは肩をすくめて笑った

「まぁ、こんなもんですよ。人生は(笑)」


無論、正人とダイヴァーが仕組んだイカサマであるが、
会場の誰も気付かない

「ありがとうございました。」

正人はダイヴァーに会釈をするとダイヴァーは

「いや、こちらこそ楽しませていただいたよ(笑)」

そういうとブラックジャックの席を立つと
先ほどのフード用のテーブルへと戻った。


そうしてポケットに手を突っ込み

一番安いチップを取りだし


「楽しみはまだまだこれからさ」
と呟いた



一方レッドカードのメンバーは
『クラブメルキド』の隣のビルの屋上に居た



「どんだけ目立ちたがりやなの…あの探偵は…」

カジノでの出来事の一部始終を聞き
かちょママは呆れかえっていた

腰にはなべさんの自作集音器
分離式コアファイターが付いていた。


「まぁ。まぁちゃんの見せ場も必要ですよ」

マスターは相変わらず笑顔だ

「…なんとも言えないわね。さて、こちらも準備は整ったし」

ゲームの
レインボーシックス ベガス

に出てきそうなシンプルなアーミースタイルでインカムを付け直しタイミングを待つ

色は公式と違いやや濃いグレーの入った浅いブルーの特別仕様だ



「張り切ってるな(笑)」

マスターは笑顔でかちょママを見ている

「準備は万端である」

やや後方に部下を7人引き連れ
鉄血は汗を四度ほど拭き
腕にはビリー・バンドを付け次のセットに取りかかろうとしていた。

上半身は裸で、ズボンは二年前米国陸軍採用の最新の迷彩服

闇夜には溶け込むのには最適らしいが
街中では誰もが何度も振り向いていた。


「兄者…少しうるさい」

鉄血を睨むかちょ


「此れでも控えておる」

腕についたパンダを掲げいつものポーズをとる

「わかっttt…ウググッ」

鉄血の口をつぐんでかちょママは言った

「うるさいって言ってるの。
妹の助言は聞くべきよ?
それとも…



こっから落ちる?
兄者とどっかの探偵なら落ちても大丈夫だし。」

顔が爽やかな笑顔なかちょママ


「貴様!アイツは大丈夫かもしれんが、いくらわしでも限界があるぞ!」

「だったら大人しくなさい」

「義弟よ…教育がなっとらんぞ…」

ややビビりながらマスターに助けを求める鉄血


「あはは…その事はおいおい…」
苦笑しながら答えるマスター。

「後も先も無いわよ。今兄者がうるさいの。分かる?」


鉄血の顎をつまんで笑顔が更に爽やかになるかちょ


「わわわっわかったのである」

不甲斐なさを隠せないまま鉄血はは後ろを向く


部下達は笑うでもなく
いつものやり取りに慣れているようで
直立不動のまま待機をしていた。



カジノでは烏龍茶を飲むダイヴァーにメルキドのマネージャーであり、
このカジノの支配人であるぴょんが近づいて来た。

「流石は大場様(笑)初勝負であんなに勝つなんて…」

「いや(笑)結果は見ての通り散々ですよ」

「いやいや!私も長い間此処に居ますがあんな勝負は初めてですよ!」

真顔でぴょんは言うと、少し間を置いてダイヴァーに更に近づいて耳元で囁いた。

「ダイヴァー様にはもうひと勝負して頂きたいのです」

少し首をかしげダイヴァーは答えた

「ん?もうチップは使い果たしたしぼちぼち帰ろうかと思ってたんだが…」

「大場様に特別に当店よりお預け致しますよ」

そう言いながらチップの入った袋をダイヴァーに渡す


「どういう事だ?」

「実は今からが本当のビッグイベントなんですよ…その為にもダイヴァー様には是非お残りになって頂きたいのです…」

ぴょんは正に越後屋としか表現出来ない笑顔でダイヴァーを見つめながらダイヴァーに袋を押し付けた。


「…成る程。なら居なくてはならないな…」

ちょっと深い笑みを露にその袋を受け取るダイヴァー


「…ありがとうございます(笑)」
ぴょんはそう告げるとダイヴァーに深いお辞儀をし、舞台の方へ歩いて行きマイクを取り

ややテンションの高い会場に向かって話し始めた

「皆様大変楽しんで頂だき当催しとしましては、大成功です!本当にありがとうございます」

会場は静まり返り一斉にぴょんの方をむいた

「実はもうひとつのイベントがございまして…」


勿体振るぴょんに期待と苛立ちを露にする客

「何があるんだ!早くしろ!」

「そうだ!そうだ!」

ダイヴァーにはその野次がサクラであることに勘づきながら眺めていた。


「落ち着いて…落ち着いて…」

なだめるように茶番劇を展開するぴょん


「折角のクイーンさやの復活祭ですので、それに見合う相手が必要です。いえ、お客様が見劣りすると申してるのではございません。」

胡散臭い表現で会場を煽るぴょん

「お客様の中から代表でお一人と店の者の一人とで勝負をしていただきまして、勝敗を皆様で選んで頂くゲームをさせて頂きたいのです…」


その発案に驚きながらも期待が高まる客達は歓声をあげた



「誠に勝手ながらお客様の代表様はお決めさせていただきました。」

皆が一瞬考え次の瞬間に視線は一人を差した。


「皆様…察しがお早い(笑)

…そうです。今日の一番の勝負をなされた…大場様にお願いしました!」

歓声とハイテンションな空気は割れんばかりの拍手を導き

ダイヴァーとルーレットの間の人だかりはまるで十戒の水の様に二つに分かれてダイヴァーを迎える様に道を作った

促されるようにダイヴァーは席を立ち、ルーレットの方へと歩いて行った

それを確認すると、ぴょんは再びマイクを取りやや興奮気味に続きを発した。

「さて…大場様の対戦相手は…」
固唾を飲む会場


「クイーンさや同様、…いやそれ以上かも知れない強運の持ち主を用意致しました…」


先までルーレットの横で聞いていたさやは

どうしようもない不安に刈られた…


「まさか…そんな…」


不安は裏切られる事なく現実として


舞台に不幸をもたらした。

照明は落とされ

暗い舞台に立つ影


さやにとって見慣れた背丈…



「ご紹介しましょう…

彗星のごとく現れた『女神の声』を聞き分ける男…





KINGラフィーです!」

会場の大拍手と供に照明を浴び舞台から降りるラフィー

裏腹に顔から血の気が引き、よろめくさや


「そんな…どうして…ラフィーが…」


いつのまにやらさやの横に居たダイヴァーは、そっとさやを支え
「大丈夫ですよ」

と肩を叩き無表情で囁いた



ダイヴァーは口をキュッと閉め


「時の流れは変わらんか…」

そう呟いて携帯を取りだし

『作戦遂行』

とメッセに書き込んだ

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