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「…では、私が戻れば弟のラフィーは返してくれるのね」

「えぇ。本人の意思のままに自由にしてもらいますよ」

マネージャーと約束をしたさやはディラー復帰を承諾した。

もちろんダイヴァーの指示での交渉だ。

その復帰の日にダイヴァーが潜入し

弟のラフィーを奪還する

それがダイヴァーが描いたシナリオ


何事も無ければ
店側が素直に応じれば

全ての計画は実行されずに終わる


そんな虫の良い話があるわけはないが。


さやは覚悟を決め
照明の集まった舞台からゆっくりと降りた

さやを追う照明

向かう先はルーレット

豪華な木製の台座に乗せられたルーレットは
まるで輝く王冠のように見えた


さやがルーレットの前に着いた時

マネージャーは再びマイクを取り

「『クイーンさや』の復活記念と致しまして、今夜のルーレットのレートは10倍にさせて頂きます!」

野心にまみれ歓声をあげる客達


それまであまり寄りつかなったルーレットの回りはたちまち人だかりになった。


それを横目で見ながらダイヴァー
「お待たせ致しました」
「うむ。」

ダイヴァーはMNKSの持って来たドリンクを一口飲んだ


「…ん?違うじゃないか」

「俺が頼んだのは烏龍茶だ!これは紅茶だろ!」

「す、すいません…間違えました」

平謝りのMNKS


「厨房は何処だ?文句言ってやる」

「た、只今取り替え致しますので…」


「すぐ持って来い!」
やや怒り口調でMNKSを諭すと

MNKSは慌て厨房に戻る


「ごめんちょもちゃん!オーダー間違えた!」

「MNKSさんどうしたの?」

厨房の奥からちょもが現れる。


「実は烏龍茶頼まれたのに間違えたのよ」

「あはは…じゃ直ぐに入れ直すわ」

「ちょっと待って!」
厨房に戻ろうとするちょもにMNKSはすりよる

「実はね…ゴニョゴニョ」
「え?なにそれ?」

「だからゴニョゴニョ
と、とにかくこれ!」
MNKSはダイヴァーから預かったものをちょもに渡した

「私が来たらそれをつけて。いいわね?」

「…なんだかわからないけどわかりました…」

唐突にMNKSに渡された耳詮を見つめ

全く意味が分からないちょも


「確かに渡したからね!」

小声で言うとMNKSは自分で烏龍茶を入れて持って行った


実はダイヴァーがちょもに接触するために考案した猿芝居だったのだ

ダイヴァーの元へ烏龍茶を運ぶMNKS


「お待たせしました」

「うむ。ちゃんと厨房に文句は言ったか?」

「はい。キチンと。」


「ならいい。気に入ったから次も頼むよ」

「ありがとうございます」

無事ちょもに耳詮が渡った事をMNKSとのやり取りで理解したダイヴァー

笑顔で振り向き様に舌を出しアッカンベーをするMNKS


「さて…暇潰しに…」

向かった先はポーカーの台

「ひと勝負願おうか?」

「光栄です。」


ダイヴァーの前でカードを切るのは


青い目をした正人だった。


続く

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