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新連載 ダイヴァー氏主演小説 -LIVE CARD-第一話
大盤振舞 第六幕
3日後
午後九時半
ダイヴァーはBar・ルイーダに居た
わたなべ屋に発注していた商品を受け取りに来たのだ
「あら…今日は早いわね(ダミ声)」
遅番でやってきたロクロママは深夜にしかあまり来ないダイヴァーを見掛けて声をかけた
「ええ。仕事でして。」
「あら、そうだったわね(ダミ声)」
相変わらずのダミ声だ。
「そうそう。これ、ハワイのオミアゲ(ダミ声)」
ママは手にしていた紙袋のひとつをダイヴァーに渡す
「ABCストアですか(笑)」
笑いながらダイヴァーは紙袋を覗くと中にはアロハシャツが。
「ショップの袋は娘がみんな持って行っちゃったのよ(ダミ声)」
困ったようなダミ声を出しながらママは
夏なのにミンクのコートを脱ぎ、
紫のどう見てもシックとは言えない
金の菊の刺繍が入った着物姿でカウンターへと入って行った
「お♪開けていいですか?」
答えを聞く前に
アロハシャツを取り出すダイヴァー
黒のベースに鮫の絵のパターンが染められたアロハシャツの背中には
『無駄は命の消耗』
とでっかく書かれていた
「デザインは気に入りましたが…ハワイ土産ですよね…」
「そうなのよ〜(ダミ声)なんでもあっちで日本語ブームらしくて、
あたくしが行ったお店は殆んどそんな柄なのよ…(ダミ声)
あ、カナちゃんにもあるわよ☆(ダミ声)」
「ありがとうございます〜」
カナペは喜んで袋を開けた
広げたピンクのハワイアンドレスには
『ギャル曽根』
と書かれていた。
「これ…日本語じゃないですよね…」
少し笑顔が引きつるカナペ
笑いを噛み殺すダイヴァー。
カツーン
ダイヴァーの耳元をかすめ壁に刺さるアイスピック
「ちょっ…おま…」
「ママ。なべさんとこ行って来るわ」
「気を付けてね(ダミ声)」
ダイヴァーの声を遮りそそくさと店を出るカナペ。
「…覚えてろ…。」
少々リアルな憤りを感じつつダイヴァーはママに問いかけた。
「…例の件なんですが…。」
「大丈夫よ☆(ダミ声)でも、大丈夫?高くつくわよ?(ダミ声)」
「それはまぁ…。」
少し悩んだ風に見えたママは
「立て替えとくわよ(ダミ声)」
「嫌々(笑)大丈夫ですよ」
慌てママの気遣いに感謝しつつ丁寧に断った。
その頃
わたなべ酒店に着いたカナペはバーの買い出しを済ませお金を払っていた。
「あら、旦那さんは?」
「うん。なんだかちょっとクラブメルキドにに配達って言ってたわ。」
町で評判の女将さんは
店主なべさんの一回り下
おかげで繁盛しているみたいだ。
「あ、そうそう」
そう言って女将さんは奥から綺麗に梱包された箱を持って来た
「旦那に頼まれてたの忘れてた(笑)ママに渡しといて貰えます?」
「あ、ハイハイ☆」
なべさんの裏家業を女将は知らない。
快くカナペは受け取り
そのままルイーダへと帰って行く
途中、何処かで見た事がある女性が何やら電話で話していた
何処かで働いているのだろう、
スカイブルーの少し胸の空いたノースリーブのドレスを着て、
ややその衣装に似つかわしくない険しい…いや、
真剣な表情で電話をしている
「…多分。えぇ、今日の客なら…分かってます。心配ありませんよフジッコ部長」
「…あの人……」
気付かないふりをしてカナペは彼女の横を抜けルイーダへと到着した
「じゃあ、そういうことで」
「わかったわ(ダミ声)」
ママとの話も片付き
ダイヴァーは時計を見る
「10時半か。ママ、又後で来ます」
「あら、お忙しいのね。気を付けてね(ダミ声)」
ママに挨拶をし表に出た時
不意に電話が鳴る
携帯にはわたなべ屋と書いてある
「…あ、どうも♪お疲れさまです」
「あ、ダイヴァーさん?今設置しといたよ(笑)」
「流石はわたなべさん(笑)仕事早いですね」
「時間無いって言ってたからね(笑)
あと家内にリモコン持たせてあるから設定はそっちでお願いしますね」
「かたじけない。」
「いやいや(笑)あ、そうそう、
ちょっと見た目には分からないようにサービスしといたから。」
「感謝します(笑)…奥さん益々綺麗になりましたね」
「あっしの嫁ですから(笑)」
「ごちそうさま(笑)」
「はっはっは…あ、音量には呉々も気を付けて下さいよ」
「心得てます。じゃぁ又」
「毎度あり♪」
上機嫌の様子を見ると出来映えは上々のようだ。
電話を切るとメールが二件
一件はカナペだ
先に別のメールを読んで
カナペのメールを見る
「…荷物預かった…でもガンダムなんだけど( ̄□ ̄;)」
なべさん…
苦笑いしながら
「了解。マスターに届けて」
メールを送信
間発入れず返信が返って来た
「ホントにこき使うわねあんた。
大体私生活がだらしないんだからいい加減自分で動いてみたら?
ほんっとあんたみたいなのを…
どうたらこうたら20行…」
物を頼むと毎回同じ文章が来る
どうやら定型文にしてるみたいだ…
かちょが作ったんだろう…
読み終える前に
待ち合わせ場所に着く携帯を閉じて声をかける
「お待ちどうさま(笑)」
「お〜そ〜い(笑)」
拗ねた声を出す女
やや胸の空いたノースリーブのドレスを着ている
「淋しがり屋でね。待つの怖いんだ(笑)」
一瞬間があって、やっぱり笑う
「クスッ(笑)じゃあ仕方ないわね(笑)行きましょうか☆」
ダイヴァーは腕を取られ歩き出した
「メール送ったのに〜」
「ホントに?ちょっと待って?」
携帯を開けカナペの続きを読む
まったく女もだらしがないだから。
ようやく定型文が済み
最後に
「了解。あとメルキドの女見た。何者?」
「…ホントだ…気付かなかった」
ダイヴァーはスマートな手付きで
「察しの通りだよ」
とメールを返した
続く