2
新連載 ダイヴァー氏主演小説 -LIVE CARD-第一話
大盤振舞 第二幕
さやが帰った後の喫茶「レッド・カード」
腕を組み遠くを見つめる探偵ダイヴァー
「惜しかったかな…。
100万…」
おいおいっ…と、自分に突っ込むダイヴァー
依頼者の捜している男の居る場所はそんなに簡単に連れ戻せる場所ではない
だから報酬額とすれば妥当な額。
きっとよそに行ったなら三倍は取られ、失敗したといわれてあしらわれるのがオチだ。
とはいえ、主義を曲げてまで先にお金をもらうわけにはいかない。
「さてっと…。」
ダイヴァーは店主のケッタマシンのほうを向くとにっこり笑った
「マスター。あれ貸して(笑)」
聞いたマスターは、嬉しそうに答えた
「どっちにします?」
「ちっこい方」
「あんた馬鹿じゃない?あんな目立つ車乗っていって何するのよ。」
事情が分かっている喫茶店のママかちょは呆れ顔で言った
「わたしので行きなさい。」
ポケットから鍵を出すと、
どちらかというと投げつけるようにダイヴァーへ渡した。
「チッ…原付か。」
右手だけを動かしさっと鍵を受け取り、立ち上がろうとした時
カラン〜
再びドアが開いた。
チャカチャカチャン♪チャチャンチャン♪イーじゃんイーじゃん♪スゲーじゃん♪
ヘッドホンから漏れる音
「チッ…騒がしいのが来やがった…。」
「おね〜〜〜〜ちゃ〜〜〜ん♪」
踊りながらコーデュローのモスジャケットを着た少年…
いや、少女はかちょに飛びつく
「あら☆正人ちゃん♪いらっしゃい♪」
抱き締め頭をナデナデ。
相変わらず女性には優しいかちょ。
「今日ね!ようやく原稿がアップしたんだ♪
ねぇねぇマスター!お姉ちゃん貸してよ☆」
楽しそうにマスターにかちょのレンタルをせがむ正人。
「…相変わらずうるせぇな(笑)」
ダイヴァーは小さく呟いた。
「…ヘボ探偵は黙っててよ」
とたんに無粋な表情に変わり姉と慕うかちょ張りの毒舌を吐く正人
「…ほぅ」
やや強ばり気味の笑顔で指をポキポキ鳴らし立ち上がるダイヴァー
「ちょっと躾がなってないようだね。僕ちゃん」
さっとかちょの後ろに隠れる正人
「ヘボ探偵に言われたくないし」
ブチン…
ジャケットを脱ぎかけたダイヴァー
「この…似非漫画家!」
「あwwwww
それ言っちゃおしまいだよ!」
「もう手伝ってやんないんだから!!!!」
「…別にお前じゃなくてもいいんだがな…」
大人げなくダイヴァーは詰め寄る
「身体は僕だ!」
「ほらほら二人とも!」
間に入りなだめるかちょ
「ダイヴァーもまぁちゃんが居ないと仕事にならないくせに…。」
収まりそうにもならない喧嘩をやめさせる為に仕方なくかちょはエプロンを脱いだ
オレンジの荒いペイントのようなラインがセンターに入ったグリーンのTシャツに
やや明るめの暖色系のサブリナ・パンツ姿で
束ねていた髪を降ろす
「いいわ。まぁちゃんどこ行きたいの?」
そう言うと後ろに隠れていた正人に笑顔で応えた
ヽ(*´▽)ノ♪
はしゃぐ正人
「えっとね!駅前のスゥイーツ店に新作のケーキが出たんだ!」
「了解☆パパ。後お願いね♪」
「ダイヴァー!あんたも依頼の調査があるんでしょ?早く動きなさいよ!」
「行ってらっしゃい(笑)」
にこやかに二人を送り出すケッタマシン
「…くそっ。」
喧嘩相手が居なくなり少し鬱憤を溜めながら
かちょの言った通りあまり時間がない
思い出したかのようにダイヴァーも用意をする
「マスター。んじゃお借りします」
「ん?良いよ?ちっちゃいの」
鍵を出そうとするマスターにダイヴァーは丁寧に断る
「後が恐いから(笑)」
「ですね(笑)気を付けて」
マスターの笑顔を後に店を出るダイヴァー
かちょの愛車HONDAジョルノにキーを差す
車体の右横にかかっていた
ゴールフラッグとサッカーボールが交差し、全体が赤くなった「レッドカード」のステッカーが貼ってあるヘルメットを被ると
キーを回す
カチリ…ガチャン!
異音を聞き慌て鍵を一つ戻す。
「セーフティロック外れてるし…いつ飛ばすんだあのおばさ…」
「コホン…何か言ったかしら?探偵さん☆腕をへし折られたいようね♪」
…ヤバい
予想外の展開…でもないか
慌てて声の主の方を向き、ダイヴァー笑顔で答えた
「駅前に行ったんじゃなかったっけ?」
「忘れ物よ。香辛料」
かちょの忘れ物に疑問を問いかけた。
「今日…ケーキじゃなかったっけ?」
「イザという時もあるでしょ(笑)」
「それより、こないだみたいに壊さないでよ?」
「お借りします(笑)姉さん☆」
キュルキュル…ヴルン!
快調にエンジンがかかりダイヴァーは
ウインカーを切り発車した
続く