CHANGE ∀ MIND
第82話
「悪の正義」
街の裏道
男に殴りかかる獅王。
振りほどき距離を置く男。
一応勇気を持って間に割って入る、凛華。
凛 「ダメですって!!」
獅 「うるせぇ!!コイツだけは殺す!!」
凛 「そんな『死ね』とか『殺す』とかダメです!!」
様 「なぁ・・・警察よ答えてくれ。
先日あった無差別殺人の遺族は、マスコミに『死刑を』と話していたな。」
凛 「そ、それがどうかしましたか?」
様 「それは、オマエの言う『死ね』に該当するんじゃないのか?」
凛 「!!」
様 「それとも、犯罪者ならいいとでも?」
凛 「それは・・・・・犯罪者でも命は・・・・・命です。
罪を償う事とは別です。」
様 「まぁ、オマエも『大事な人を殺されたら』何か解るかもな。」
凛 「・・・・・。」
獅 「この男のせいで俺と未子がどれだけ苦しい毎日を送ったと思っている!!」
男 「おいおい、おまえらの飯や宿があったのは誰のおかげだ?」
様 「フン、やはりそうだったか・・・・・。
どうやら、オマエも生きる価値の無いゴミのようだな。」
男 「なんだてめぇも怪しい野郎だな。」
様 「獅王、このゴミも目障りだ。許可する・・・・・。消せ。」
凛 「な!アナタになんの権利があるんですか!!」
様 「何の役にも立たん偽善の犬共が・・・・・。
憎しみは何も生まないと言っていたな?」
凛 「憎んで、何か得になるんですか!?」
様 「損得で感情が沸くのか貴様は・・・・・。
憎悪は生きる力を沸かせる、憎悪は目指す道を明確に照らし出す。
憎悪は力となる。
だが、悲しいか、その憎悪を無差別に振りまく凡愚共が多い。
何も考えぬ、ゴミ共。
やはりこの腐った世は、誰かが変えねばならぬ。」
凛 「何ですか・・・・・それがアナタだと言うの?」
様 「結局、誰かが変えねばならん。
真の平和は、あらゆる力で捻じ伏せてやれば生まれる。
世の掌握、そして、恐怖の支配。」
凛 「恐怖の支配が何を・・・・・。」
様 「簡単な事だ。『親に怒られるからやめておこう。』
そんな簡単なしつけだ。貴様等もやっているだろう?
本当に交通規制を守らせるわけでなく、ただ見せしめに罰を与え
便宜上の規律を作ってるだけにすぎん。」
凛 「そんな・・・・・。」
様 「世を支配できる『能力』を持ち得る我等が、その頂に立とう。」
男 「何を言ってるんだ・・・こいつら・・・・・頭おかしいのか?」
獅 「てめぇほど、おかしくねぇよ!!」
無意識に獅王が手を男に向けた。
その手から爪のようなオーラが現れた。
様 「!!」
獅 「てめぇだけは・・・・・許さねぇ・・・・・未子がどれだけ怯えた毎日を送ったか・・・・・。」
そのオーラが両手、両足にも纏わりつく。
門原獅王(かどはら・しおう)
能力 『全てを抗う百獣王』(キング・オブ・ビースト)
ライオンのような能力を自分にトレースする。
次の瞬間高速で飛びかかる。
いとも簡単に凛華を飛び越えた。
様 「覚醒したか・・・・・。
獅王よ、ゴミを始末しろ。」
凛 「能力者!?『蒼き閃光の影絵』(シャドウ・ダンス)!!」
凛華の後ろに光源が現れた。
すぐに凛華は手を組み合わせ、犬の影絵を出した。
様 「ほう・・・・・。」
影の犬が、獅王に食いつき離す。
獅 「チッ、犬は能力も犬か?
百獣の王に勝とうなんて、甘いんじゃないか?」
男 「な・・・なんなんだ!!」
様 「だが、邪魔はいかんな・・・。」
凛 「それでも・・・・・法律が無ければ無法地帯になるだけじゃないですか!!」
様 「そうは思わんな。昔は『仇討ち』を国が認めて居たのだ。」
凛 「そんなのは・・・・・。」
男 「何を言ってるんだ・・・コイツら。」
男に対し、睨みつける様筬。
様 「貴様も大事な人を失ってみれば少しは解るか?」
何かを少し想像したのだろうか?
男に少し怯えが見える。
凛華も一瞬考え事をしてしまった。
その瞬間に、獅王の爪が炸裂する。
男 「ぎゃああああああああああ!!」
獅 「てめぇみてぇなクズが生きてる事自体が許せねぇ!!」
様 「クックックックック。
世の中には自分の都合だけで人を否し、
自分の利益のためだけに人を使い、
自分のためだけに、人の物を盗み、
理屈すら無い殺人も存在する・・・・・。」
一歩づつ、男に近づく様筬。
様 「それでも、この警官の言うような、この社会で生きるなら
殺人は色々なリスクを伴う。」
獅王を離し、男の首を掴む。
様 「故に・・・・・貴様の様なゴミには・・・・この世に必要無い・・・・・死ね。」
凛 「させません!!」
様筬の能力『戦神合体』(グラップラー・コンバイン)で
右腕が巨大な拳銃に変わる。
凛華は能力を知らないので、単純に拳銃になったと思っている。
凛 「!!」
様 「貴様等の言う『正義無き力』が犯罪だと言うのなら、
『力無き正義』もまた無力な物。
所詮、矛盾や穴で固まった『律』などを武器にしても人は変わらない。
真の平和は、根本から押さえつける支配から始まる。
見ていろ・・・我がDCがそこに君臨する。」
凛 「そんなことは!!」
様 「邪魔するなら・・・・・死ぬか?」
巨大な銃口を向けられ、その眼光に恐怖を感じた凛華。
凛 「ひ・・・・・。」
様 「ククククククク。
さっき言っただろう、それでも殺人はリスクを伴うとな。
まぁ、それでも邪魔はする物じゃない。
まだまだ若い子犬のお嬢さん。」
腰が抜け、その場にへたり込む凛華。
様 「最近の無差別殺人はただのクズの行動。
まだこいつのように憎悪からの殺意なら理解できる。
殺人が悪だと決めたのは社会であり、法である。
だが、自分の道をただの悪意で最初に潰したのは誰だ?
その障害を取り除く事が『悪』なのか?
違うな。
貴様等の言う『悪』と、我々の『悪』では全然違うだろう?
我々を『悪』と言うのなら、『悪には悪の正義があり、信念がある。』
仮に私がそんな罪を犯すと言うのなら、それは私の信念であり・・・。
正義だ。
小さな人間の小さな悩みで衝動的に起こす事件とは訳が違う。
自分の力量が足りず障害にぶつかっただけで、人生がつまらないだの
誰かを殺したくなっただと・・・?
くだらん・・・。
勝手に自分が散ればいい。」
凛 「自分の正義があれば・・・人を殺してもいいってことなの!?」
様 「人を殺すのは・・・なにも生命を奪うだけじゃない。
このクズは、充分こいつらを殺したと言えるだろう?
そして誰にでも人を憎んだ事があるだろう?」
凛 「まるで・・・憎悪は正義と言ってるみたい・・・。」
様 「まだ理解できないようだな・・・・・。
そうだな・・・貴様の身近な人間が消えれば理解できるか?」
凛 「!!」
様 「クックックックック。
冗談だ。それでは私も凡愚に成り下がってしまうではないか。」
凛 「だから、冗談で口にしていい・・・・・。」
そこまで言った凛華の口を左手で掴む様筬。
様 「ククククク・・・。
なんだ?吐いた言葉に『言霊』が宿るとでも?
ならば、口に出さなければいいのか?
それで憎悪が消えるのか?
憎悪が乗るから言霊は存在する。
私はその方がしっくり来るがな・・・・・?」
凛 「アナタは・・・・・人に『死ね』と言われて・・・嬉しいのですか?」
様 「嬉しい嬉しくないの次元ではない。
そう言うのであれば、それなりに理由があるはずだ。
貴様等は仕事上、被害者や遺族とよく話をするだろう?
彼らの『憎悪』と『殺意』に対して、貴様は同じ言葉を投げかけるのか?」
凛 「ソレとコレでは・・・・・。」
様 「違わないな。
『死刑』も同じものだ・・・。」
凛 「『死刑』は犯した罪・・・。」
様 「想像通りの言葉しか述べないな・・・・・。
『死刑』こそ・・・遺族の『憎悪』を配慮しているのではないのか?
犯した『罪だけ』の償いで決まるものなのか?」
凛 「・・・・・。」
凛華を離す様筬。
様 「なんにせよ、理想の国は今のままではどうにもならん。
我々選ばれた能力者が・・・・・変えてやろう。
まぁ、それまでに邪魔をするゴミ共は掃除させてもらうがな。」
凛 「私には・・・アナタの言ってる事は矛盾にしか聞こえない・・・・・。
その正義の基準は・・・・・何処にも無い・・・・・。」
様 「私が変えるのだ、私の頭の中にある。」
凛 「な・・・・・。」
倒れている男を掴みあげる。
様 「では問おう、自分の怒りを無力な子供にぶつけていた、この男。
長年の虐待の恨みを晴らすコイツの憎悪は『悪』か?」
凛 「そ・・・それは・・・。
だからと、犯罪で返すのは・・・。」
様 「ヌルいな・・・。
障害を犯罪としたのは、『法』である。
さて・・・どちらが『矛盾』なんだろうな・・・・・。」
首に力を入れる。
男 「ゴホッ・・・・・・!!」
様 「覚悟してもらうか・・・・・。
獅王・・・・・行くぞ。」
獅 「は・・・・・はい。」
様 「良い能力だ・・・・・オマエも良いDCの一員になれるな。」
結局、言葉でも抗う事のできなかった凛華。
それは凛華の考えが浅はかだったわけでも無かった。
凛華自身、日々少し感じていた部分もあったがために
言い返すことができない事が多かったのである。
男を連れて、去ろうとする様筬たちを見つめ、
凛華は何もできないまま終わるのか・・・・・?
続く。
おまけ。
真 「法律なんて意味わかんないものが多いわよね。」
み 「ですです☆」
真 「運転中に携帯はダメでも、他のでOKなのもあるわよね?」
み 「ですです☆」
真 「携帯のフリしてフランスパンを持つとか。」
み 「・・・。」
真 「いっそお弁当食べちゃうのはどう?」
岱 「普通に危険運転だろ・・・それは・・・。」
み 「ていうか・・・運転中にそんなハラペコなんだ・・・。」