CHANGE ∀ MIND

第81話
「憎悪」








             10年前・・・


              ありえない光景とは言わない・・・

              両親を失った兄妹が親戚をたらい回しにされ、虐待を受ける・・・

              ありえない光景とは言えない・・・




男  「チッ、このガキ・・・・・イヤな眼をしやがる・・・・・。」




              ギャンブルで負けた腹いせに、妹に暴力を振るう。

              兄は妹を守ろうと身を挺して
              代わりに蹴りを浴びるように貰っていた。




              そんな日々が続き、ある日兄は妹を連れ家を逃げた。



              幼い二人が飛び出てどうにかなったわけではないが、
              「もうここには居られない。」と思った。






              門原 獅王(かどはら・しおう) 7歳。
              門原 未子(かどはら・みこ)  5歳。











              現在

獅  「ミコ、もう夏休みなのか?」
未  「そうだよ〜。お兄ちゃんは仕事?大変だね。」



              そんな兄妹のやりとりに後ろから声をかける。

              様筬乾取(さまおさ・けんじゅ)
              デザートカンパニーの幹部である。


様  「あれから・・・今日でちょうど10年か・・・。」

獅  「様筬さん、お疲れ様です。」
未  「お疲れ様です。」



              あの飛び出した直後、彼らに声をかけたのは様筬である。

              なぜかそのまま義務教育だけは卒業させたようである。
              未子はまだ中学へ通い、獅王は高校へは行かず様筬の仕事を手伝っていた。


獅  「様筬さんのおかげで、俺たちここまで育つことができましたね。」
未  「そうだね。殴られたりしないし・・・。」

様  「ただの気紛れだ。
      それに結局めんどう見てたのは私の娘だしな。」


              獅王より一つ上の娘が居た。
              母親が居なかったせいか、若いわりに家事はなんでもできたのである。


獅  「それでも、この生活があるのは様筬さんのおかげです!!」

様  「それも結果論だ。
      私はあの時、全てを捨てたお前の眼に強さを見た。
      私の都合の良い兵隊になるだろうとな。」
獅  「俺はそれでも構わない。
      俺を道具として自由に使ってくれていい!!」


              未子は黙っていた。

              獅王はそれで満足だった。

              様筬が世間で言う『悪』である事は解っていた。
              それでも自分達を地獄から救った事は事実であり、
              その恩義に報いたい。

              たとえ様筬が『悪を貫く』のであれば、その道を共に行く覚悟である。



              DC幹部である彼は、その企業としての規模の問題もあり、
              事実地上げ屋紛いな事をしたりもしている。


              そんな職業があると解ってはいるが、
              それでも未子は心の中に違和感を感じずには居られない。

              そしてまた、そんな彼が紛れもなく地獄から解放されたという事実も
              未子自身の身体が解っているのである。
              手足のアザを見る度に、あの恐怖が襲ってくるのである。

              今でも寝ていても不意に、『いつ襲われるか』という恐怖感が襲い
              「ココは大丈夫なんだ。」と兄に言われて落ち着く状態である。








              ある日、潰れた会社のビルで仕事をしていた獅王。


様  「獅王、そこの書類の箱を全て事務所に運ぶ。私は車を手配してくる。」
獅  「解りました。」


              とりあえず、3階なので1階まで下ろした方が効率が良いと思った。

              
              1階まで箱を運び、少し腰かけて休んでいた。


              3階の事務所も追い込みをかけて倒産させた事は知っていた。

              この世には『必要悪』 『結果悪』がある事も解っていた。


              世の言う『正義』でなくとも、この『悪にも正義がある。』
              獅王はなんとなく感じていた。




獅  「1、2階も金融会社か・・・・・。
      やっぱ4、5階は雀荘か。結構お決まりのパターンなんだな。」


              ビルの看板を見上げながらなんでも無い事を考えていた。

              上の雀荘から客が降りてきた。


獅  「ま、人の生活パターンにケチつけるつもりは無ぇが、
      昼に働いてると・・・「昼から麻雀かよ。」って思っちまうな。」



              その客を見て、何か記憶が揺さぶられた。



              そう、あの虐待していた男である。

              飛び出して以来、親類関係とは一切接触を断っている。

              そして、普通なら出会う事の無いはずのこの街でなぜ・・・・・。





              沸き上がる憎悪。

獅  「あの野郎・・・・・。」


              そのまま男を追いかける獅王。





獅  「おい!!てめぇ!!待ちやがれ!!」


              いきなり男に殴りかかる獅王。


男  「なんだ、オマエ!!何しやがる!!」
獅  「うるせぇ!!10年前を忘れたとは言わさねぇぞ!!」





              と、響き渡るホイッスル。



凛  「そこ!!何してるんですーーーーっ!!」

獅  「チッ・・・・・ポリ公か・・・・・。」

凛  「だ、大丈夫ですか?」

              離れて何気に見てた凛華は被害者である男に近づく。


男  「なんなんだ、いきなり殴られたぞ。」

凛  「えーっと、連絡しなきゃ。」


              署に連絡を一応いれる凛華。


              男はさっきの獅王の言葉を思い出していた。

男  「10年前・・・・・・だと・・・・・・?」


              そして過去を思い出す。


男  「なるほど・・・・・オマエ・・・・・獅王か。」

獅  「てめぇ・・・・・あの時の恨み晴らしてやる!!」


凛  「ちょ・・・・・やめなさいって!!」

獅  「邪魔だポリ公!! この男は死んだ方がいいんだよ!!」

凛  「そんな『死』なんて軽々しく言うものじゃありませんよ。」





              凛華の後ろから声がする。

              獅王が居なくなって辺りを探しに来た様筬だった。



様  「フン、さすが国家の犬共は、言う事も偽善に満ち溢れているな。」

凛  「!!」

              凛華は本庁の要注意人物のデータを思い出した。
              デザートカンパニー幹部、様筬乾取の名を。


様  「愚かな正義を振りかざす、役立たずの犬め・・・・・。」

凛  「な!なんてことを。」


              凛華の隙をついて、獅王が男に飛びかかる。

獅  「ブッ殺してやるよ!!」


              様筬はなんとなくだが把握した、
              おそらくあの男が昔、門原兄妹を虐待した男であろうと。



              なんとか止めようとする凛華。
              だが女性の細腕では無理。

              そして能力者以外に、能力を使用する事は基本的に許可されていない。

凛  「早く誰か・・・・・。」






様  「獅王!!憎悪を増幅させろ!!
      殺意を・・・・・滾らせろ!!」












              獅王の眼の色がだんだん変わっていった・・・・・。


凛  「あの人・・・・・なんてことを・・・・・。」


              凛華はただ応援が来るのを待つだけであった。


凛  「ダメですよ、憎しみなんて何も生みません!!



              獅王に叫ぶのが精一杯であった。
























             続く。












































ア  「ふぅ。ようやく冷蔵庫のプリンを我慢できるようになった・・・・・。(汗)
     いや、真菜さんの怒りが怖いからか。(笑)

     プリンは我慢して、ゼリーでも食べておこう。」






















ア  「まさか、ゼリーも真菜さんのなんてオチじゃ!?」































み 「アイちゃん・・・・・。ちょっといらっしゃい。。。」

ア 「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

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