CHANGE ∀ MIND
第69話
「眼」
総間研究所
エ 「特に隠す様子も無く・・・・・って事か。」
時を置かず、総間博士が入って来た。
総 「客人とはキミ達の事か・・・・・。」
エ 「総間博士だな。すぐに『死者蘇生』の能力者を引き渡して貰いたい。
これだけの施設を持つアンタに手荒な真似はしたくない・・・・・。」
総 「なるほどな、やはりその能力か・・・。
何処で知ったと問うのも愚問じゃな。」
エ 「ああ、世間ではインチキとしてこの研究所を見ている原因ともなったアレだ・・・。」
総 「・・・。」
零 「アレ・・・・・?」
かなり前に、動物を蘇生させたとしてTVに出ていた者が居た。
当時は、『超能力者』として出ていた故に、マジックであると
誰もが馬鹿にしていた。
エ 「アレが『能力』だって事は、俺ら能力者には解る。」
零 「能力を『超能力』と偽る事で、どちらの意味でもカムフラージュしたのか・・・・・。」
エ 「当時のアンタはマジシャンとして、まだ数人だった能力者を出演させ、
稼ぎまくっていたな・・・・・そして、スポンサーを手に入れ、この研究所を作った・・・。
もちろん、そのスポンサーはこの『能力』を知った者。」
総 「その通りじゃ、そのスポンサーが、デザートカンパニーだ。」
素直に答える総間博士、少し歩きながら博士は語り始める。
総 「定義として、この『能力マインド』と、『超能力』の違いはなんだと思うかね?
ESPや、一般の知りうる『超能力』の事と考えて良い。」
エ 「常人には理解しがたい能力だから、同じじゃないのか?」
総 「マインドは・・・・・能力者の心・・・信念の反映である。
私の考えでは『超能力』は、生まれ持った力・・・そう効果自体は
能力者の意思、希望には基づかない・・・・・。」
エ 「多少納得はいく・・・。」
総 「そこで私は精神学・心理学に基づいて、この『能力者』を研究してみた・・・。」
そしてこの研究所は、『能力』を引き出す事が可能となったのである。
総 「だが・・・便利な物や、役に立つものは危険とも言える・・・。」
零 「人はその利便性から、魂が廃る・・・・・。
人はその強大な力から、魂が堕落する・・・・・。」
総 「そういう事である。人を潰える能力があれば、人の上に立とうとする者。
未知なる絶大な攻撃力を持つものであれば、自分に害成す者を排除しようとする者。
楽して自分の達成を成し得ようとする者。」
零 「・・・・・。」
総 「そう、その『正義』の定義の様々なラインが大幅に狂い始める・・・。」
エ 「皆、自分の野望のために生きているからな・・・。」
総 「そして、彼らはその前線に立つ事と成った・・・。
彼らなりの『正義』などではなく、完全に私利私欲のための『悪』・・・。」
零 「俺の能力は・・・・・。」
ふと、零の脳を映像が過ぎる・・・・・。
「そのままそこに居たいと言う信念を・・・・・。」
「アナタは・・・・・出て・・・・・。」
「粛清するこの能力を・・・・・アナタなら出きる・・・・・。」
零 「クッ・・・・・。」
エ 「どうした?ペイジ・・・・・。」
頭を抱える零であったが、博士に歩み寄る。
零 「で、その・・・・・」
一瞬羽虎から聞いた『賢者の眼』『賢者の手』の名前を出そうとしたが止めた。
羽虎が暴露したとバレる事を配慮したのだろう。
零 「蘇生の能力者はどこなんだ?」
総 「キミ達の目の前に居るが・・・・・居ない。」
零 「なるほどな・・・・・理解できた・・・・・。」
エ 「まさか・・・・・。」
零 「そうだ、この博士の『裏人格』が、賢者の手の能力者だ・・・・・。」
総 「そうじゃ、そして私が『眼』の能力者じゃ・・・・・。」
総間竜男(そうま・たつお)自身が、『賢者の眼』の能力者だった。
零 「自分の裏人格に会えないわけか・・・。」
総 「それもある・・・・・。
確かにアイツは中々出てこない、そしてその能力に反して
奴の性格は、非人道的でもある・・・・・。」
エ 「そう簡単に協力はしないって事か・・・・・。」
総 「ここ数ヶ月、いかなる方法でも出てこない。」
博士の裏人格・刃吾(じんご)は、そんな神懸りな能力を持って、
人を修復するという『最も優しい』能力を持っているはずなのに、
人格は、残虐であった。
そんな『生と死』の中に生まれた能力なのであろうか。
エ 「我がロイヤルなら、引き出す事もできるぜ?」
総 「残念だが、そこまで協力するつもりは無い。
やはり、生命への冒涜とも言える禁断の領域なのじゃ。」
エ 「そんな答じゃウチの女王様は納得しないんでね。」
エースは、零に合図した。
零 「無理だな・・・。」
エ 「何がだ?」
零 「この『賢者の眼』に対して、俺の様な『眼』の能力は一切通じない。」
エ 「何?」
零 「『眼』は、深層に問いかける暗示の能力だ・・・・・。
だが、それすら見透かされる。」
他の能力者なら、零の『魔人の邪眼』(イビル・バジリスク)の
『人形(マリオネット)』で催眠をかけ連行したのだろうが、それが通じない。
零 「かと言って力づくで連れて行っても無駄だ、こいつの信念があるからな・・・。」
エ 「なんだと・・・・・ではどうするのだ?」
零 「どうにもならんだろな。」
羽 「・・・・・。」
簡単に出るのであれば、出しているだろうし、
単に病気の治療というのであれば、博士は協力したであろう。
それが成し得て無いと云う事実は、この現実を表している。
エ 「とりあえず・・・・・他の能力者も見させてもらうぜ?」
総 「ま、それくらいは構わんよ。」
エースは、恐らく連絡を取りにであろう、外へ行った。
総間博士もまた、他の部屋へと行った。
羽 「やっぱりね・・・・・。」
零 「・・・。」
羽 「クレオ・・・・・。」
紅緒はソファで、羽虎のひざで寝てしまっている。
零 「そんなに妹が大事か?」
羽 「そうよ。」
零 「血縁に縛られてるわけでも無さそうだな・・・・・。」
羽 「そうね、一人の女性として愛してるわ。
それに・・・・・血は繋がってないわ・・・・・。」
零 「・・・。」
羽 「『思い出』はこの子には残らないけど、私には鮮明に残ってる。
確かに、今その一瞬を大事にすると言う事でなら、問題は無いわ・・・。
それでも、共に過ごした日々をこの子の中で風化していくのが・・・・・。」
零 「過去か・・・・・。
確かに俺も、それに縛られてると言えば・・・そうなるのか・・・・・・。」
羽 「アナタにも・・・・・。あ、いえ・・・・・なんでもないわ。」
恐らく零にも、生き返って欲しい人が居るのだと判断した羽虎。
だが、零の心の傷に触れそうな気がした。
零 「もし・・・・・こっちの『事』がうまく行けば・・・・・な。」
そう言い残して、零は部屋を出た。
EVER SNOW
サ 「ん?」
ス 「ん?」
マ 「ん?」
ミ 「ぬ?」
サヤが突然、演奏を止めた。
ス 「どうかしたの?サヤ。」
サ 「あ・・・ううん・・・・ごめんなさい・・・・・。」
マ 「あわわ・・・私トチりました?」
サ 「ううん・・・・そうじゃないの・・・・・。
誰かが見てる・・・・・?」
ミ 「えっ?????どこ?」
サ 「そうじゃなくて、何処から誰とかじゃなくて・・・・・。
何かの『眼』が・・・・・。」
ミ 「こ、怖いんですけど・・・・・。」
サ 「ごめんなさい・・・・・。あ・・・寒い・・・・・。」
マ 「大丈夫!? ちょっと、座って座って!!」
ス 「・・・。」
ミ 「スワンさんもどうしたの?」
ス 「ううん・・・・・なんだろ・・・・・。
何かの語り掛けのようなのが、聴こえたような・・・・・。」
ミ 「アタシ、なんか匂わなきゃダメかな・・・・・。」
マ 「弁当の献立くらいじゃ・・・・・。」
ミ 「あ、そういうの得意。」
その日は結局練習を中止した。
スワンとサヤは『何か』を何処から感じとったのだろうか・・・・・?
サ 「んーー。」
ミ 「どしたの?部屋なんか出して。」
サヤの能力『起源の舞台』(ファースト・コンチェルト)の
『オーパス・ワン』で、具現化する『部屋』の事である。
あれから、この能力も成長しその部屋の大きさを自由に変えれるようになった。
自分が寝る空間だけを保護する事も可能になった。
マ 「なんか、サヤさんの能力、じわじわと成長しますね。」
サ 「なんかね・・・月に影響してるかも。」
ス 「月に影響・・・・・あの人も言ってたな・・・・・。」
ミ 「もしかして、お月様が見てるのかもね。」
マ 「珍しく、乙女チックな・・・・・。」
ミ 「ミナ、乙女だもん!!」
ス 「月が見てる・・・・・・。」
サ 「ま・・・・・まさかねぇ・・・・・あはは・・・・・。」
そんなスタジオの近くのどこかで・・・・・。
蓮河寧音も、空を見上げていた・・・・・。
寧 「見られるのは・・・・・趣味じゃ無いなあ・・・・・。」
『眼』は・・・・・全てを・・・・・。
続く。
おまけ。
ミ 「おっと、またまた新刊出てるよ〜〜〜。」
マ 「週刊CHANGE ∀ MIND!!第6号!?」
ミ 「表紙の色がまたまたエバスノっ!!」
ページをめくるミナ。
ミ 「ぬ。」
ス 「あ、サヤの特集だ。」
サ 「恥ずかしいです・・・・・。」
ミ 「気になる付録はっ!!」
マ 「サヤ特選クラシック大全集CD付きっ!!」
ミ 「これじゃ、週刊クラシック第2号じゃん・・・・・・。」
マ 「宝石アクセサリ作成・小冊子が付いてる!!すごい!!」
ミ 「え?そんなのできるの・・・・・?」
サ 「うん・・・趣味で結構作るけど・・・・・。」
3人は思った。
(意外に・・・・・器用なんだ・・・・・。)