CHANGE ∀ MIND
第68話
「禁止区域」
パスタ屋・前
対峙する四人。
心は誰だか解っていない。
ア 「パパ・・・・・・。」
心 「えっ?父上で御座いますか・・・・・?
その割には若いで御座いますね・・・・・。」
ア 「そーじゃなくて、いつも行ってる商会の・・・。」
心 「ああ・・・。」
従 「ああ、なるほど、そう言えば覚えがあるな。」
一歩前に出る従者。
従 「俺の名は、零(れい)。
脳噛零。オマエの探すアイツでは無い・・・・・。」
ア 「え・・・・・。兄弟居るなんて聞いてないなあ・・・・・。」
エ 「とりあえず、邪魔をするならタダじゃ済まないぜ?お嬢ちゃん。」
ア 「うー。」
いくら心が能力者でも、2人相手、ましてやあのロイヤル。
岱と思われた零の能力も未知数。
アイは携帯を取り出した。
ア 「えーっと・・・・・。あ!?」
取り出した携帯に、すぐさまエースの『錠前』がかかった。
ア 「使えない!?」
エ 「15分ほど、足止めさせてもらうよ。」
アイと心の足に錠前がかかった。
心 「な・・・なにこの錠は!?」
ア 「離せよーっ!!」
エ 「なぁに、ほんの15分だけのロックだ。」
もがく2人を横目に、エースと零は立ち去った。
エ 「事は急いだ方がいいか・・・・・。」
だが、行く先々でも零は多くの石像を作っていった。
エ 「おいおい、派手にやると世間が動くぞ・・・・・?」
零 「だから・・・・・どうした?」
総間研究所
入るなり、受付らしき場所に行く2人。
エ 「この研究所の責任者を呼べ。」
員 「すみません、今、総間博士は外出されてます。」
エ 「それに代わる人間はいないのか?」
員 「少々お待ち下さい!!」
奥で他の所員と話すが、「桜教授も居ない。」など聞こえてくる。
しばらくして、呼ばれて来た女性二人。
「始めまして、この総間研究所、第3室長の石須でございます。」
名刺にはその役職と、名前「石須 羽虎」(いしず・ぱとら)と書いてあった。
エ 「へぇ、良い名前だね。鼻を高くすると、世界が変わるのか?」
羽 「ありがとうございます。この妹が『紅緒(くれお)』と申します。」
後ろの子は見たところまだ18・19辺りである。
姉の影に隠れているが、白衣を着てる所を見ると所員なのだろう。
羽 「本日はどのようなご用件で?」
エ 「我が『ロイヤル』が、探している能力者がここに居る可能性がデカいんでね。」
羽 「あら・・・。率直な意見ですこと。
それでも、私の一存でできる事ではございません。」
エ 「研究所にもマイナス共限らないがな、ロイヤルの出す交換もな・・・。」
羽 「総間博士が戻られるまで、お待ちになりますか?」
エ 「そうさせて貰う。」
羽虎の合図で、所員が一人呼ばれた。
羽 「こちらの方々に研究所をご案内して。」
員 「解りました。」
と、案内される。
エ 「意外に、良い待遇なんだな・・・・・。」
零 「俺はそんなもんには興味が無い。ここで待たせてもらう。」
零が通された待合室のような場所に居る故に、
羽虎もそこにいる事となった。
零は窓の外をずっと見ていた。
紅緒は、羽虎にべったりくっついていた。
時折、視線を部屋に移す。
どうしても、その姉妹が映る。
羽 「クレオ・・・・・。お客様の前ですよ。」
零 「別にいちゃつこうが、俺には関係の無い事だ。」
紅 「違うもん、お姉さまへの愛だもん。」
羽 「クレオ、そういう事を・・・・・。」
紅 「だって本当だもん。」
零 「別に憚る事は無い、家族、親兄弟で殺し合う奴等も居る。
それに比べれば別に血縁で愛し合おうと、俺は自由だと思う。
例えそれが、同性で合ってもな。」
紅 「このお兄さん、解ってるぅ!!」
羽 「あら、何か意味深な発言ですこと・・・・・。」
零 「愛情や、憎悪に決まった形など無い・・・・・。
たとえ社会が『悪』だと言えど、己が正義と信じるのなら、
それが『正義』だ。
それを貫き通せぬ自分勝手な凡愚も居るがな・・・・・。
まあ、今頃は石像にでもなって悔い改めてるやもしれんがな・・・・・。クックックック・・・。」
紅 「?????」
すでに十数人が、十数個の石像と成って街にある。
『悪を正義だと貫くなら、最後までやれ。』と言う信念の表れである。
いかなる事も中途半端にする事が嫌いなのであろう。
紅 「私、お姉様大好きだもの。」
零 「それでもちったぁ、時と場所は考えろよ、小娘・・・・・。」
紅 「・・・・・。」
ひとつ小さく咳払いをして羽虎が口を開く。
羽 「で、そのロイヤルさんは『正義を貫くため』にあるのかしら?」
零 「さあな・・・・・。俺は俺の利害関係でココに居るだけだ。
奴等の『正義』は俺には解らん・・・・・。
だが、奴等の探すその『能力』には、興味がある。」
羽 「どんな能力か・・・聞いてもよろしくて?」
零 「『死者を蘇らせる』能力だ。」
羽 「!!」
零 「だが、それを魂と呼ぶのなら、それだけでも無駄なのは解っている。
病死や老衰ならば、肉体と言う媒体にも問題はある。
そして何よりも、いつか人は散るというものへの・・・生命への冒涜と言う禁止区域。」
羽 「ですわね・・・・・。」
零 「それでも・・・突然の事故死など、肉体が修復されれば、可能な場合もある。
病気などよりも・・・突然に起こる・・・・・その災害・・・・・。
結局、『死んだ』ものの『復活』と言う時点で問題は多々ある。
だが、そうだとしても再び顔を合わせたい存在は居るはずだ・・・・・。
羽 「あなたも・・・・・まさか・・・・・。」
零 「・・・・・。」
紅緒は全く理解できてなく、きょとんとしている。
ロイヤルの女王『JOKER』は、誰かを蘇らせるのではと零は思う。
彼は能力を引き出されたと言うより強引に、似た使いうる性質の能力を
埋め込められたという表現が正しい。
この研究所にも似た施設の中で零は女王に『会っている』のである。
零 「お前らにも解るだろう? その姉が死んだら・・・どうおもう?小娘。」
紅 「やだやだやだ!!そんなこと想像するのもやだ!!」
零 「そう思う心があるなら、いずれ解るさ・・・・・。
この生命の冒涜を超えると言う『禁止』(タブー)を・・・・・。」
羽 「これも何かの縁でしょうね・・・・・・。
この研究所の持つデータの能力者の中に居るわ・・・・・。
能力は『賢者の眼』(ウィズダム・アイズ)と『賢者の手』(ウィズダム・ハンズ)」
それが誰なのかは明かさずに羽虎は続けた。
羽 「そう、私がココに居るのも、その能力の恩恵が欲しいから。」
零 「・・・・・?」
能力 『賢者の眼』(ウィズダム・アイズ)
全てを透視し、あらゆる物の根本を見通す眼。
蘇生の場合は、その修復箇所。
能力 『賢者の手』(ウィズダム・ハンズ)
全く未知のエネルギーで、壊れた細胞ですら修復するが、
限度はあるし、能力者本人の精神力の消費は寿命を削るほどである。
羽 「見ての通り、私はこの子を・・・妹を愛してる。
私はこの子のためなら、鬼にでもなれるわ。
この研究所は、この子の生きるうえでの障害を取り除く・・・・・
アナタの言葉で言えば、私とこの研究所も利害関係の一致で成り立っている。」
零 「その能力者がココに居たのか・・・・・。」
羽 「大丈夫よ、そう簡単には連れてはいけないわ。」
零 「なぜだ・・・・・?」
羽 「じきに解るわよ・・・・・。」
零 「しかしなぜ・・・それを俺に話す・・・・・?」
羽 「・・・・・。クレオ・・・・・喉が渇かない?」
紅 「あ、じゃあ私がお茶いれてくるよ。」
すぐにトタトタと走り、給湯室であろう場所へ向かう紅緒。
羽 「あの子が居ると話せなかった・・・・・。」
羽虎は懇願するような眼で見る。
羽 「もし、その『賢者の手』の能力者に会う事ができたら、あの子を救って欲しいの・・・・・。」
零 「何?」
羽 「普通にしてたら、『会えない』のよ・・・・・。」
零 「話が見えない、ココには居ないのか・・・・・?」
羽 「居るけど・・・・会えるけど会えないの・・・・・。」
紅緒は、脳障害で『記憶が消える』病気であった。
一つ消えては、また新しく覚える。
それでも自分の名前や羽虎の存在などは覚えているのだが、
『思い出』と言うものが消えていくのである。
羽 「あの子の中に・・・私との『思い出』が・・・無くなっていくの・・・・・。」
零 「・・・。」
羽 「共に過ごした、笑った思いでも、あの子は次の日には消えている・・・・・。」
零 「なるほど・・・・・。それでココへ来たわけか・・・・・。
治療してない所を見ると、『会えない』わけか・・・・・。」
羽 「ええ・・・・・。」
そしてちょうどエースが戻って来た。
そして、羽虎はこの件に関して口を噤んだ・・・・・・。
続く。
おまけ。
ミ 「ぬおおおおおお。」
マ 「ど、どうしたの?」
ミ 「つーいーにー出ーたーだーすー!!」
マ 「週刊CHANGE ∀ MIND!!第5号!?」
ミ 「表紙の色がエバスノっ!!」
ミ 「ぬ。」
ス 「あ、私の特集だ。」
サ 「かっこぃぃですぅ♪」
ミ 「気になる付録はっ!!」
マ 「スワン特選クラシック大全集CD付きっ!!」
ミ 「これじゃ、週刊クラシックじゃん・・・・・・。」
マ 「指揮棒『コンダクター』も付いてる・・・・・。」
ミ 「楽器とかじゃないの・・・・・?」