CHANGE ∀ MIND
第60話
「熱く掻き立てる」
空散時
空 「いたたたたた。寧音ちゃんのパンチ・・・・・効くなあ・・・・・。」
転がった瓶がぶつかる音で目が覚める。
本堂でそのまま寝る、というか空瓶は処分しろと言いたい位の
かなりバチ当たりな坊主である。
白紙のノートを広げる空散。
空 「ふぅ・・・・・。『岩清水(いわしみず)』!!」
掌の鉄粉が、ノートに引き寄せられる。
その鉄粉が文字となって浮かび上がる。
どうやら、磁力を『文字の形』にノートに記憶させていたのである。
これが、他人に読まれないために編み出した技である。
無論、普段はロクな使い方をしていない感じだ。
空 「ふーむ。いまいち、この電脳世界ってのが、解らないなあ・・・・・。
寧音ちゃんの情報待ちだな・・・ロイヤルは。
他に金になる仕事でも・・・・・。
タコ焼き屋の美人女将失踪!?
これにするか・・・・・。」
と、また、卑猥な着メロが鳴り響く。
空 「なんだ、また出会い系の宣伝か・・・・・。
ま、サクラの子を落とす位でいかないとな。」
会員登録をしようとするツワモノであった・・・・・。
さらに思い出したように。
空 「この情報掴んだら、香穂ちゃんデートしてくれるのかな?」
そうである、空散を雇ったのは、KM社秘書:田野橋 香穂である。
もちろん、知り合うきっかけになったのは、ナンパである。
故に、絶対会わず、連絡は電話とメールのみを徹底している香穂であった。
とりあえず、タコ焼き屋の謎を追うために、役所へ行く。
空 「美人女将の実家辺りから、始めるか。」
役所に入るなり。
空 「あ、愛ちゃん。元気?」
空 「舞ちゃん、髪型変えたんだね。似合ってるよ。」
空 「魅衣ちゃん、新しいパスタ屋今度行かない?」
空 「葉杏ちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
空 「そこの男。邪魔。」
空 「詩依ちゃん。今夜空いてない?」
見かける職員全員に話しかけている。
新人の子はあっけに取られている。
新 「な・・・・・。なにあの人。」
と、見つけられる。
空 「あれれ?こんなカワイイ子が居たなんて・・・・・。
もしかして新人かな?」
新 「え・・・・・あ・・・・・はぃ・・・・・。」
空 「名前は?」
新 「波亜・・・・・です。」
空 「へぇ、ナミアって、なんかカワイイ名前だね。」
波 「え・・・そんなことないです・・・・・。」
羽 「こら、生臭坊主!!新人困らせるんじゃないよ!!」
空 「やだなあ・・・。挨拶だよ。挨拶。
って、羽維さん・・・・・デートしようぜ?」
羽 「全職員に誘いに乗らないように言ってありますんで。」
空 「それを超えて、誘う!!」
羽 「誘いに乗ったら辞職なんで。(笑)」
空 「ちょ・・・・・俺の存在って何・・・・・?」
羽 「で?今日はどなたかの調査かしら?」
空 「です。」
羽 「さっさと済ませて帰りましょうね。(笑)」
さすがは大人で、ピシャリと対応する羽維であった。
羽 「全く・・・・・なんでもありなのかしら・・・・・?」
タコ焼きや女将のフルネームはとっくの昔に抑えてあり、
今回はその地元を調べるつもりでやってきた。
役所を抜け、奥の建物で手続きを済ませ、仕事に入る。
空 「へぇ、隣町か・・・・・。」
バイクなら苦にならない場所なので、さっそく向かってみる事にする。
メガ☆ラバ☆ショッピングモールの奥
空 「おかしいな・・・・・。この奥は工場地帯だったはずだが・・・・・。
この辺りに実家がある・・・・・?」
見渡せど、広がる荒野。
空 「確か、何らかの戦いがあったとか、無かったとかの場所か・・・・・。」
と、寧音からメールが入る。
ロイヤルの居場所であった。
普段は日本国内には潜伏はしていないが、
なんらかの能力で、いきなり潜入してこれると。
KM社近くのホテルを、取っている場合があるとの事。
空 「結局・・・・・場所は不明って事か。
そのホテル近くを張るっていうのも、気が遠くなるな・・・・・。」
八方塞がりな臭いがする『ロイヤル』であった。
やはり、美人女将を重要視したい所である。
だが、そのタコ焼き屋の事件が
想像より大きな物が絡んでいると、この時点では知るよしもなかったのである。
警視庁
鉄 「警部・・・・・。手が足りてないんだが?」
蛙 「いや、そんな事は百も承知で・・・・・。」
鉄 「やはり、玄米と國玲を二人共行かせたのは、間違いだったか・・・・・。」
蛙 「しかし、なぜ、こんなに『能力者』が増えて来たのだ・・・・・?」
鉄 「そんな事より、新人募集。」
そんな謎に・・・届きそうな人物が居た。
蓮河 寧音(はすがわ・ねね)である。
彼女の能力は『視線の様に刺さる太陽光』(サテライト・アイズ)
なんと、太陽の光が当たる範囲の人間の情報を引き出せるのである。
1人の人間の特徴や、特定の場所を念じる事で、
『太陽』そのものを、自分の『衛星』と化す情報探索能力である。
寧 「うーん、あまり太陽に当たらない場所に居るのかな・・・・・。」
依頼されたロイヤルに関する情報を集めていた時であった。
普段、『太陽』を介して『見てる』はずの寧音が、何か見られている感じだった。
寧 「何この、降り注ぐような・・・・・目に飛び込む『意識』みたいなものは・・・・・。
ねぇ、先生、どう思う?」
桜 「サブリミナル・・・・・かしら?」
と、それに答えたのは、総間研究所の脳噛桜であった。
そう、寧音は総間研究所の所員である。
だが、空散はそこまでは知らない。
桜 「能力を『見た』人は、その『現実を認識する。』・・・・・。
漫画や映画でしか見たことの無い能力は、夢や憧れであっても、
所詮は、空想や架空の中にしかない。
人はそう思ってる。
だからこそ、『能力』を目の当たりにする事で、夢が現実となる。」
寧 「え・・・・・?」
桜 「多分、貴女がその強大な『太陽』を使う能力と同じように、
太陽を媒体として、人々の目を通じ、それを認識させる物が居たら?」
寧 「まさか・・・・・そんな・・・・・。」
桜 「ま、貴女が『日光の当たる範囲』でしかないように、規模は大きくても
そこまで濃い影響力を与える能力ではないと思うわ。」
寧 「じゃ、そんなに・・・・・。」
言いかけたのをかぶせるように話す桜。
桜 「与える情報は、バーコードとか小さな信号だとしても、
それがサブリミナルのように、知らぬうちに脳内に徐々に認識されていくものだとしたら・・・・・?」
寧 「太陽の光を通じて、人の脳に刷り込んで行くって事ですか?」
桜 「それなら、小さな情報から、大きな効果を与えられると思うけど?」
寧 「んー、そう言われたらそうかもですけど・・・・・。」
と言いつつも、納得できる寧音であった。
それほど、能力者が溢れだしているのは事実だからである。
寧 「あとは・・・・・『信念』ですよね・・・・・。」
桜 「ええ。」
その、謎は今は謎のままである・・・・・。
続く。
おまけ。
空 「おばちゃん・・・・・今日も清掃姿、ステキだね。」
羽 「なんでもありなんだ・・・・・。」
饅 「サヤさん、サヤさん・・・・・。なんかメールでデートに誘われたんですけど・・・・・。」
サ 「え・・・・・?行きたいの?」
饅 「女の子がいいです・・・・・。」