CHANGE ∀ MIND
第57話
「剣豪」
私立ブレード学園
『剣術』に関しては、全国でも有名な学園である。
剣道など以外にも、実戦の剣術なども行うという。
剣術と言うよりは、『剣士』『侍』を育てている感じだ。
今日も熱心に部活動に力を入れる、志堂心(しどう・こころ)。
心 「まだまだで御座います。」
ひたすらに素振りを続ける。
「そんな素振りしたって、どうにもならない事もあるよ?」
と、体育館の扉から声をかけたのは、赤焔火那子(あかむら・かなこ)
酒場『ルイーダ』の店員である。
心 「く、曲者!?」
火 「おいおい、オレだよ。オレもここの卒業生だよ。
ちょっと懐かしくて覗いて見たんだよ。他には誰もいないのか?」
心 「試験が近いからで御座いますね。」
火 「昔は試験もだが、修行は欠かさなかったものだが・・・・・。
天下のブレード学園にも、もう『侍』は居ないものか・・・・・。」
『侍』を目指している心、まだ届かないとは思ってはいるが、
そんな自分の『信念』を馬鹿にされた気がした。
心 「では、貴女は『侍』だとでも申すのですか?」
火 「へぇ、ちったぁ根性ありそうだな・・・・・。
って今のオレが言えるものでもないな・・・・・。悪かったな。」
心 「?????」
何かが砕けたから、思い出すために母校を訪れたのかもしれない・・・。
火那子は悩んでいた。
やりたかった事が断念せざるを得なかった。
成し得ぬ夢があった。
『交通事故』が、左腕の感覚をほとんど奪っていった。
ただ、『左腕(ソレ)』だけのはずだった・・・・・。
だが、砕けたのは魂だった・・・・・。
気付けば志堂心に、話をしていた。
いつから『侍』でなくなったのだろう・・・・・。
いつから自分を被害者としてしか見なかったのだろう・・・・・。
その見えなくなった何かが、成し得る事ができるはずの事も曇らせた。
火 「感慨深くなって、昔の栄光に浸りたかっただけたぁ、オレも堕ちたものだ・・・・・。」
体育館の舞台の端に、『優勝旗』が飾られている。
そこにぶら下がっている、たくさんの『名』を刻んだ短冊。
火 「今年は第66回大会になるんだな・・・・・。」
その短冊を手に取る。
【第01回 剣豪大会 優勝 不知火鉄心】
【第02回 剣豪大会 優勝 坂倉平吾
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【第03回 剣豪大会 優勝 龍斧岬腰貢】
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【第42回 剣豪大会 優勝 二階堂面一】
【第43回 剣豪大会 優勝 九能帯刀】
【第44回 剣豪大会 優勝 轆轤響】
【第45回 剣豪大会 優勝 東堂修羅】
【第01回 剣豪大会 優勝 夏木六三四】
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【第56回 剣豪大会 優勝 鉄刃】
【第57回 剣豪大会 優勝 霞谷火那子】
【第58回 剣豪大会 優勝 霞谷火那子】
【第59回 剣豪大会 優勝 霞谷火那子】
心 「も、もしかして、伝説の三年連続優勝の霞谷火那子さんとは・・・!?」
火 「あはは。伝説って、やめてくれよ。痒いし、きめぇ。(笑)」
心 「名字が違う故、解らなかったで御座います。」
火 「ああ、最初の頃の優勝者の赤焔家の養子になったからな。」
外が何やら騒がしい。
心 「あれ?学園にはあまり人は残ってないはずで御座いますが・・・。」
外に出てみる二人。
数人の女子が、何かを追いかけている。
火 「なんだ、あれは?」
宙に浮いているのは衣類・・・・・?
それを追いかけているようだ。
心 「あれって・・・・・下着で御座いましょうか?」
火 「みたいだが・・・風で飛んでいるようには見えないな。」
時折妙な心の言葉も気にはなる。
心 「あれ・・・・・見てください!!」
よくみると、地面の影だけは『人が何かを持って走っている。』のである。
火 「なんだ!?影がパンツ持って走るのか?」
心 「あれが、風月さんの言ってた『能力者』であり、犯罪者ですね。」
火 「だろうな・・・・・。」
心 「火那子先輩!!行くで御座いますよっ!!」
火 「行くって・・・・・?」
心 「決まってるで御座います!!捕獲!!」
心は木刀を取る。
火 「いや、オレは・・・・・。」
心 「それとも、片手が使えないだけで何もできないって言うんですか?」
火 「な・・・なんだと!!」
火那子は木刀を持参しているので、そのまま飛び出す。
2人は校庭を見渡した。
その謎の影は1つではなかった。
火 「なんだこれは・・・・・。」
心はそのうちの1つの影を木刀で突いてみた。
それに気付いたのか、影が棒を持って向かってくる。
火 「影が『持った物』は、宙に浮いている・・・・・。
透明人間が影だけ出ている状態か・・・・・。」
心 「どうすればいいので御座いましょう・・・・・。」
どんどん集まってくる影。
???? 能力『はぐれ影法師』(シャドウ・カーニバル)
心 「全員で襲ってくる!?」
火 「クソッ・・・・・左手が動かねぇ・・・・・。」
影が語りかける。
TVで音声処理された人みたいな声だった・・・・・。
影 「オモエラモ・・・能力者ナノカ・・・・・?」
影の持つ棒やホウキなどで、タコ殴りにされる2人。
心 「不覚・・・・・まだ、実戦の対複数は心得ておらぬ・・・・・。」
火 「壁を背にしたり、狭い場所で、1vs1を複数行うんだが・・・・・。
さすがにこの場所じゃ・・・・・。」
こういう時に限って左手が痺れてくるのである。
他の一般の生徒も2人ほど打たれている。
なんとか、心がそこへ向かい攻撃を防ぐ。
影のくせにこの攻撃力。
心 「実体が無いのに、どうやって攻撃すれば・・・。」
火 「光の剣か・・・・・。」
心 「光の・・・・・剣で御座いますか?」
火 「ああ、おそらく『能力』の事だとは思うが。」
心 「何か・・・・・しっくり来ます。根拠は無いで御座いますが。」
火 「赤焔一族に伝わる、『光の炎の剣』が多分そういう事なんだろうな・・・。」
心 「それなら斬れるで御座いますか・・・。」
影 「無駄無駄無駄ァ〜〜〜。諦メロ・・・・・。」
心と火那子の隙を付き、影が学生を叩きまくる。
10体以上の敵では厳しい状況だ。
心 「おのれ!!刀を持たず無抵抗の人を攻撃するとは何事!?」
無理矢理影の多い中を進む心!!
だが、ひたすら殴られ、木刀も落としてしまった。
影 「コレデオマエモ、タダ殴ラレルダケダ・・・・・。」
火那子は考えていた。
自分がもし満足に戦えたら、負けはしなかったのでは・・・と。
やはり心の何処かで今の状況を「仕方ない」と、
「自分は被害者」だという殻に閉じこもっていたのではないかと。
火 「とんだご都合主義だな・・・・・。」
心 「え?」
火 「やってやんよ!!」
火那子を何やら、不思議なものが包む。
心 「光・・・・・には見えないで御座います・・・・・。」
火 「奥義を得たり・・・・・。」
赤焔火那子 能力『九尾の飢狼』(ナイン・テイル)
刀に宿りし、9つの尾の能力である。
火 「『闇の中目覚める血』・・・・・。」
渦巻く何かが狐とも蛇とも言えない形になって、火那子に装着される。
火那子の動かない左腕の代わりに腕となって現れた。
火 「覚悟しろよ?」
片っ端から影の攻撃を叩き落す。
その攻撃力で、地面に落ちた棒も砕く。
火 「オラオラオラオラオラオラオラーッ!!」
心 「つ・・・強いで御座います。」
火 「おい、『本体』を叩いてこい!!影はオレが引き受ける。」
心 「承知仕ったで御座います!!」
とは言え、一体本体は何処に・・・・・。
考えていたが、次の瞬間心は走り出した。
続く。
おまけ。
真 「あら?今日はアイちゃんこないのね。」
み 「そうですね。居なかったら居なかったで、なんか静かですね。(笑)」
真 「確か、私立ブレード学園だったわよね?」
み 「ですね。」
真 「遅刻したら、切腹とかなのかしら?」
み 「卒業までに過半数居なくなりそうですね・・・・・。」