CHANGE ∀ MIND
第43話
「英雄伝」
酒場ルイーダ
今日の営業も終わり、片づけをしながらの話だった。
ロ 「風月ちゃん、本当に明日頼んでいいのね?(ダミ声)」
明日はママの用事で店を閉める予定であったが
コンビニはそうはいかず、結局風月がその間、責任者となるのであった。
風 「ええ、構いませんよ。ウチは猫も居るんで私は同行しませんので。」
苺 「旅行だ〜。」
その用事ついでに、ちょっとした慰安旅行を兼ねて温泉へ行くのだった。
萌 「温泉いいよね〜〜〜〜〜〜♪」
苺と萌も同行するらしい。
苺 「えーっと、ママの息子さんも来るんですよね?」
ロ 「そうなのよ。」
私立ブレード学園
ここにいち教師として赴任している男が居た。
名前を、「一 一(にのまえ はじめ)」
この学園は、生徒・教師共々副業も特に禁止されてはいない。
彼のもうひとつの顔は、『劇団バビル』の一員として、
自作製作のTV番組に主演していた。
その番組は、彼が子供の頃に観ていた特撮作品『サムライガー』
その作品のリバイバルであった。
あの熱い作品を自分の手で復活させたいと願うスタッフが
自費で作成して、局に持ち込んで放映してもらっていたのだった。
だが、制作費の面で、やはり満足の行くデキにはならず、
あと数話で打ち切りと言うカタチになった。
その最終回撮影と、打ち上げに、知り合いであるママはコネを使い、
サムライガーのファンである息子を連れていくつもりだったのである。
一 「ふぅ・・・・・。明日が最終収録か・・・・・。」
窓辺で何気に黄昏ていた一の元に一人の生徒。
志堂 心(しどう こころ)である。
心 「うう・・・サムライガーの『信念』は、私には痛いほど伝わりました。
これほど、感激な作品が、なぜ終わりを告げねばならぬのか・・・・・。
私は悲しくてしかたが無い所存で御座います。」
一 「な、なんか言葉遣いが変だが、熱意は伝わった・・・・・。
まぁ、俺の演技じゃ伝えられなかった・・・・・そういう事さ。」
心 「ううううう・・・・・・。」
翌日。
ロ 「オホホホホホホホ。撮影日和ですわよっ。(ダミ声)」
そして、一緒に居るのは、息子「康一」
康 「ママーッ!!ほんとにサムライガーに会えるのっ!?」
ロ 「そうよっ!!サムライガーはママのお友達なのよっ!!(ダミ声)」
それを見ていた、苺と萌。
今回はこの二人だけが着いて行く。
風月と火那子は店のために残るそうだ。
実際火那子は、熱烈なサムライガーのファンであるが、
そのキャラのせいで、それが言えず同行できない。
きっと枕を涙で濡らしているだろう。
萌 「な〜んか、ママの方が楽しみにしてる感じ♪」
苺 「そうかも。」
萌 「まぁ、私は温泉あれば何処でも行くけどね♪」
苺 「もう、年寄りだもんね。」
萌 「うっわ!!なんてこというかな!!」
と、迎えのが到着して乗り込む4人。
ママの息子康一は、それはもう興奮だった。
サムライガーのお面をかぶってはしゃいでいた。
現地にはすでに一が来ていた。
一 「おお、ロクロママ!!」
ロ 「本日はお招きに預かり光栄ですわよっ。(ダミ声)」
康 「ですわよっ。」
苺 「半ば強引だったような・・・・・。」
と、萌は顔見知りである会長『矢尾南 啓弧』(やおな・けいこ)に会釈をする。
メガ☆ラバ☆ショッピングモールの件以来である。
萌 「へぇ・・・なんか解らないけど、面白いね。」
苺 「こういう雰囲気がなんかスゴイかも。」
一がママの方にやってくる。
ロ 「コウちゃん!!サムライガーが来たわよっ。(ダミ声)」
康 「わああああああああああああああああああ!!」
一 「お、君が康一君か。」
康 「すごーぃ!!サムライガーだ!!」
一 「いつも応援してくれてありがとうな。」
熱烈なファンであったが、やはりどこか寂しい思いもある。
今日で最後だからであろう。
一 「ロクロママ、撮影そのものに参加すると、アレだから・・・・・撮影後に・・・・・。」
ロ 「あ、そうね。(ダミ声)」
あくまで『撮影』であるため、敵の怪物や中の人も全部見せてしまうことになる。
今は現場ではあるが、そんな雰囲気の小道具などもなく、
子供の夢を壊す事をしていなかった。
一 「ごめんな康一君。これから、怪物をやっつけてくるから、待っててくれ!!」
康 「うん!!がんばれー!!サムライガー!!」
そして、ママは息子を連れ、少し離れた宿へと向かう。
苺 「広っ!!」
萌 「よ〜〜〜し!!早速温泉でしょっ!!」
苺 「でしょでしょ!!」
ロ 「まだ、昼前なのに・・・・・。(ダミ笑)」
部屋に荷物を置くなり、苺と萌は温泉へと向かった。
苺 「は〜。いいねぇ〜♪」
萌 「最高〜〜〜〜〜♪ 疲れも取れるわ♪」
はしゃぐ二人を他所に、部屋で茶をすするママ。
ロ 「ああ・・・。たまにはこんなのもいいわねぇ。(ダミ声)」
康 「いいわねぇ。(マネ)」
苺・萌組の二人と対照的にのんびり過ごすママと息子。
その間、サムライガーごっこがほとんどだったのは秘密である。
むしろノリノリなのはママだったのも極秘である。
苺 「うっし!!」
萌 「うわああああああああ!!くやしいっ!!もう1回っ!!」
苺 「フフフ、卓球界の女王苺様に勝てるとでも!?」
太陽の照りつける事関係なく、ベタな旅館のノリの二人。
一方、ママは一から連絡を受けた。
今日の分の撮影は終わったので、個別に康一に会うと。
もちろん、目の前で変身できないので、スーツを着てだが。
すぐにまた撮影現場近くへと行く。
片付けもほとんど終わったらしし。
向こうの方で腕組みをしている男が気になるママだった。
商売柄の目利きで、『どこかのお偉いさん』というのは解ったが、
あまりイイ目をしてなかった。
変身スーツに身を包んだ一がやってきた。
一 「やぁ、康一君。」
と、突然はしゃぎだす・・・
ママ。
ロ 「うわあああああああああああああああ。
コウちゃんコウちゃん!!サムライガーですわよっ!!(ダミ声)」
康 「見れば解るよう・・・。」
マ 「すごい!!実物よっ!!実物よっ!!(ダミ叫)」
康 「ママ・・・・・うるさい・・・・・。」
マ 「はい・・・・・。(ダミ声)」
一 「康一君、私の最後の戦い、またTVで応援してくれよな。」
康 「うん!! 僕も見てたらダメかなあ?」
あくまで「撮影」なわけだから見てたらマズイ・・・。
一 「今度は最後の戦いだから、危ないんだ。
いつも皆、私に任せて離れるだろ。」
康 「そうだね。僕待ってるよ!!」
一 「そうだ・・・・・コレをあげよう。」
康 「うわっ!!バットウガ!!」
『バットウガ』は、サムライガーに変身するためのアイテムである。
その刀を引き抜くと変身するのである。
ロ 「ちょっと、そんなの貰っていいの?(ダミ声)」
一 「ああ、ちゃんと子供用に小さくつくったし、刀も安全な素材で作った。」
ロ 「わざわざ、ごめんなさいね。(ダミ声)」
一 「やはり、こういう応援の声が一番だからな。
そういうのが俺達の力になる。」
ロ 「そうねぇ。(ダミ声)」
ちょうど、その時、さっきの怪しい男が来た。
一 「まだ居たのか・・・・・? デザートカンパニー・・・・・。」
その男はデザートカンパニー『幹部』 様筬 乾取(さまおさ・けんじゅ)
ロ 「デザートカンパニー・・・・・。」
一 「ああ、収録費用の無い時にうっかりここから借金をしたがために、
余計に苦しくなった。」
様 「それは私たちのせいでは無いだろう?金利が高い事を承知してたかは知らんが
契約書類をしっかり見ない方が悪いのだろう?」
一 「それでも全部返したはずだ。今更なんの様だ?」
様 「フフフフフフ、いや何、その君の言うあまっちょり『正義』を見にな。」
と、ゴミを投げる康一。
ロ 「コウちゃん、だめよっ!(ダミ声)」
康 「なんか絶対あのおじさん、悪者だっ!!」
様 「そうだ、一つ良い事を思いついた。」
一 「何がだ?」
様 「その子供の英雄が、最終回に完全敗北と言うシナリオはどうだ?」
一 「ふざけるな!!」
何かの力が、一を吹き飛ばした!!
ロ 「こ、、これはマインド!?(ダミ声)」
ママは咄嗟に息子をかばうようにした。
だが、ママ自身は戦闘能力を持っていないのである。
ロ 「萌ちゃん・・・・・。(ダミ声)」
すぐに萌の携帯に電話をする。
だが、出ないのである。
ロ 「だ、だめ・・・・・。(ダミ声)」
その頃の苺と萌はすでに、出来上がっていた。
萌 「この林檎酒おいしい〜〜〜〜〜♪ ていうかもう呑めませ〜〜ん♪」
苺 「いや、普通に呑みすぎだから。」
と、もう一度携帯が鳴る。
苺 「萌ちゃん、携帯鳴ってるよ?」
萌 「はいは〜ぃ♪」
ロ 「萌ちゃん!!大変なの!!すぐ来て!!(ダミ声)」
萌 「は〜ぃ♪」
携帯を切る。
苺 「え?ママ?」
萌 「うん、なんかね〜〜、『大漁だから取りに来て〜!』って、
刺身かなんかやってるんじゃないの〜〜〜?」
苺 「あれ?撮影見に行ったんじゃ・・・・・。」
続く。
次回予告。
梓 「えーっと、発注伝票コレでいいですよね。」
志 「で、いいと思うので御座います。」
梓 「あ、風月さん、なんか『次回予告』廻って来てますよ?」
風 「あ〜!!それどころじゃないのっ!!」
梓 「ですよね・・・・・。」