CHANGE ∀ MIND

第24話
「奏で響き揮える」









             総間研究所
              定例とも言える講習。

              だが・・・・・。










              聞いているのは全て、デザートカンパニーの社員であった。

              そして今日は幹部である燈篭環 真も来ていた。




桜 「故に、『マインド』は心に眠る『信念』で、変わると言うわけなのです。

     矢で的を射る場合に、全体の戦況や戦法的に『外した次』を考えるのは良い事です。
     しかし『マインド』の力量は自分に眠る『信念』ですから、
     『外れる事は考えて無い。』という信念と、『この一撃で倒せる。』という
     多少過剰な精神が強さに影響を及ぼします。

     故に、狂気な人がまれに恐ろしい力を出すのはそのためです。」

真 「教授!!信念あれば進化しますか?」



桜 「勿論です。本来『マインド』は心の奥底に潜む物が具現化する事が多いようです。
    簡単に言えば自分の意にそぐわない能力はあまり無いのです。

    たとえ最初は使いどころの薄い技だとしても、着眼点を変えたりする事で
    進化は可能です。」

真 「なるほどね。」



              真の後ろで話を聞いていた男が話しかける。
              男の名は様筬 乾取(さまおさ・けんじゅ)(45歳)である。

乾 「これはこれは、燈篭環氏ではないですか、珍しい。
     ここに来る暇な幹部は私だけかと思ってましたが?

     それとも・・・・・進化すべき敗北を喫したとか?」

真 (こいつめ・・・・・知ってやがる・・・・・。)


              以前のESとの戦いの事がどうも知られているようだ。

              誰かの密告・それとも監視能力?
              そんな事はどうでもいい真ではあった。


真 「進化か・・・・・。」


              と、手に取る『盤上の死亡遊戯』(デスゲーム)。

真 「レアカードでも・・・・・出ればな・・・・・。」



              さらに説明をする桜。

桜 「と言う事で、ある意味純粋な思いから発言するケースも少なくないようです。」




























             酒場ルイーダ


客 「ウイスキー頼むよー。」

萌 「あ、はーぃ♪」


客 「こっちもボトル出してー。」

風 「かしこまりました。」



             中々の繁盛っぷり。





             と、棚の前で・・・・・。


萌 「えっと、今の誰だっけ?」



マ 「ハイ、萌ちゃんはこっちのボトル、風月ちゃんはこっちね。(ダミ声)」





             そんな忙しい日であった。

             閉店してから片付けしながらの事だった。


萌 「ママ〜、なんでそんなに解るの〜〜。」

マ 「あら、私はお客様の『声』は全部覚えてるわよ?(ダミ声)』

風 「能力故?」


マ 「能力を活かすためには、声の記憶が必要なのよ。
     誰の声がどんな声なのか、解って無いと再現できないわよ?(風月声)」
萌 「あ!風月ちゃんの声だ・・・・・。」

マ 「ふふふふふふ。(萌声)」

萌 「すごいなぁ・・・・・。『貴婦人の鸚鵡』(セレブレティ・ヴォイス)



苺 「ああ・・・・・。今日も疲れたなあ・・・・・。」

マ 「あ、苺ちゃん。明日の昼はやんなくていいわよ?
    もう梓ちゃんが結構できるでしょ?別のバイト入れとくから。(ダミ声)」

苺 「うんうん。梓ちゃん辞めたらウチ潰れるね。」
マ 「は・・・・・早いわね。(ダミ声)」




風 「ママはどうして、能力者になったんです?」

マ 「え?聞きたい?(ダミ声)」
萌 「うんうん♪」
苺 「明日休みだから聞いていこう。(笑)」








             昔話を語り始めるロクロママ。






********************回想*********************


             幼き日の轆轤 響(ろくろ・ひびき)

             今日は『子供のどじまん』大会であった。

             参加料さえ払えば、飛び入りでも参加できたのである。

             歌好きの響のために、母親が参加をしたのである。





             見事に優勝したのである。



母 「響ちゃん、やったわね!!」
響 「うん!一等賞だね!!」

母 「あ、喉渇いたでしょ?ママがジュース買ってきてあげるから、待っててね。」
響 「うん!!」





             そして母親は響を残し、自販機へと向かった。





             その時、なにやら向こうの方が少し騒がしくなった。






             参加料を入れた、小さな金庫を狙った強盗が来たのである。

盗 「オイ!!騒ぐな!!早く金庫を寄こせ!!」
員 「日言いいいいいいいいいいいいいいい!!」


             強盗はナイフを振り回している。

             そして係員の渡した金庫を持って逃げた。








             響の居る辺りに来る強盗。

             向こうから追いかけてくる警備員。


             強盗はテントの中に隠れてやり過ごそうとする。


盗 「オイ!ガキ言いやがったら、ブチ殺すぞ!!」



             走ってくる警備員。



警 「こっちに誰かこなかったかい?」



             と、響はその善悪が解っていたので、
             捕まえてもらおうと強盗の居る所を指差した。


響 「そこに隠れてるよ。」




盗 「このクソガキ!!」



             強盗は飛び出し、響に斬りかかったのである。


             飛び散る血の惨劇。

             強盗はその場で警備員に取り押さえられた。




             戻った母親は、その惨状にただ叫んだだけだった・・・・・。























医 「喉を斬られておりますな・・・・・。声帯辺りを斬られてるので、
     声に影響が出てしまいます。」

母 「先生!!この子は歌が大好きなんです。
    どうか、治してください!!!!」

医 「いや、そう言われましても・・・・・。」









              そして響の美しい歌声は二度と響くことは無かった。












男 「やーい!!変な声!!変な声!!」

響 「うるさい!!」


              当然のように学校では馬鹿にされていた・・・・・。









響 「ねぇ・・・ママ・・・・・もう・・・・・歌えないのかな?」

母 「響ちゃん・・・・・。」







              そして響は中学に上がる頃には
              『言葉を話せない』と偽っていた。

              変な声と馬鹿にされるくらいなら、出さない方がいいと。

              それでもイジメる者は居たが、全然少数だった。


              高校に上がった時に、歌の上手な級友が居た。


              その子が羨ましかった。


              時々こっそり歌おうともした・・・・・。





              でも、出るのはカスレた声。





              ある日、その何気に歌ってる屋上にその子が来ていた。

              少女の名は「奏」(カナ)と言った。



奏 「あれ・・・・・?声出るんだ?」

響 「うん・・・・いじめられるから・・・・でないごとにじ・・・してる。」

奏 「歌・・・・・好きなんだ?」

響 「うん・・・・・小さい時から・・・・・。」


奏 「じゃあさ、今からカラオケ行こうよ。」

響 「え・・・・でも声が・・・・・。」


奏 「うんとね、じゃ小声でも口パクでもいいからさ。
     歌ってるって雰囲気してみよ?私も一緒に歌うから。」
響 「うん・・・・・。」



              そして2人はそれからよくカラオケに行ったりしていた。


響 「やっぱり・・・・変じゃ・・・な・・ない?」

奏 「いいじゃない。その声でも。ね?」













              ある日。


響 「あ〜〜〜あ〜〜〜〜あ〜〜〜〜あ〜〜〜〜♪」

奏 「あれ???なんか、色んな声が出る!?」

響 「なんか、声帯(?)が自由になるっていうか・・・・・
    どんな種類の声も出る!?」

奏 「すごいすごい!!今まで頑張った分。
     神様がご褒美くれたんだよ!!」

響 「これで歌える!!」


奏 「そうだね!!じゃ、今度どっか大会でも出てみようか?」






              そんな話が盛り上がって次の週に出ることにした。

              場所は忌まわしきあの場所ではあった。



              それでも響はもう怖くなかった。
              また、歌える。

              たったそれだけの事だった。


響 「あれ?お母さん?」


              なぜか母がその大会の会場の入り口に来た。

響 「今日、奏ちゃんと待ち合わせしてる。」

母 「響・・・・・・。」












































母 「奏ちゃんが・・・・・車に撥ねられたそうだよ・・・・・。」


響 「え?」














             この会場に来る途中で事故に合ったそうだ・・・・・。



















            そして、翌日から響は一人で歌い続けた。

            連続で何十曲も・・・・・。






            声帯は腫れあがり、手術をするまでに至った。






*********************************************




萌 「え?じゃあ、まさかソレで、ダミ声になっちゃったの?」

マ 「そうなのよ。(ダミ声)」

風 「あれ?でも、能力でどんな声も出せるんですよね?」


マ 「でも、これが私の声よ?
     いいじゃない?(ダミ声)」

萌 「そっか・・・・・。ママはその声に誇りを持ってるんだ?」

マ 「そうね。この声あっての私じゃない?(笑)(ダミ声)」

風 「今となってはですが。」




苺 「うえええええええええええええええん。」

マ 「!!」

苺 「なんて悲しい話・・・・・。ママにそんな過去が・・・・・・。」


マ 「でも、奏ちゃんのおかげで、今の私があるのよ。(ダミ声)」




萌 「ねね、奏ちゃんさんの声、覚えてる?」






マ 「しょうがないわね。一曲歌ってあげるわ。(ダミ声)」











             そして、酒場ルイーダで歌声が響いていた。










             続く。











































饅 「あれ?今日は俺なんだ?」






饅 「んーーーー。」





饅 「では、歌を一曲。」





饅 「え?お呼びでない?」







饅 「これまた失礼したで『やんす』!!」

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