CHANGE ∀ MIND
第03話
「信念を喰う」
黒須病院
早速向かった岱と真菜。
真 「ああ、やっぱり私の元の職場なのね・・・。」
岱 「偶然なものは、仕方あるまい。
さて、あらゆる情報を集めるんだ。真菜は高齢の入院患者を調べるんだ。」
真 「私、顔見知りの患者さんとか居るんだけど・・・。」
岱 「全て利用すればいい。」
真 「ふぅ・・・。」
アナタはそういう性格だからねと言わんばかりの溜息の中、
真菜は病棟に入って行った。
ケッタモータース
何かを考えている蹴田。
落ち着かず歩き回っている。
蹴 「うーむ・・・・・。どこかの情報屋か・・・・・。
このままでは言い成りになるだけか・・・・・。」
「社長、なんかお困りなん?」
と、見るに見かねた秘書。
田野橋 香穂(21)が、声をかける。
蹴 「ああ・・・。こないだのアレがバレた・・・・・。」
香 「ま、そうやろね。ウチもアレだけはいつかバレる思っとったし。
で、どないしますん? ウチの能力・・・・・。』
蹴 「いやいや、それには及ばないよ。」
なんと、秘書の香穂はマインド能力の覚醒者のようだ。
そしてそれを当然知ってるかのような、蹴田社長。
蹴 「成り行きに任せるしか無いのか・・・・・。」
一方、そんな中自宅で込み上げる笑いを隠せない男が居た。
丑汐 反人(うししお・そりと)、情報屋。
見つけた情報を、新聞社や雑誌のタネにと売りつける。
彼は見た物を紙に写真の様に撮影できる能力。
『画という名の黒い真実』(スリーピング・フォーカス)の能力者だった。
カメラも何もなく、怪しまれる事無く様々な場所に居る事が出来る。
丑 「あっはっはっはっは。俺って運がいいな。まさかあんな現場を見れるなんて、
情報屋としての運は完璧だな。
そして、この能力・・・・・。辞められないぜ・・・・・。」
大企業から相当ふんだくるつもりなのであろう。
そして、サングラスに帽子という変装共言えない
軽い格好で、あくる日のケッタモータースの扉を叩く。
香 「社長。面会希望の・・・方です。」
蹴 「うむ・・・・・。通したまえ・・・・・。」
香穂に案内され、丑汐はやってくる。
香 「社長、こちら、フリーカメラマンの丑汐さんです。」
蹴 「えーと、『はじめまして』でいいのかな?」
丑 「へぇ、俺の名前結構有名になったもんだな。」
香 「ええ、おかげさまで。イヤでも知る事に。」
丑 「ま、話は早い。」
蹴 「君の言う条件は飲めないな。言いたい事は解るが、
今後も同じように来ないとは言い切れないからね。」
予想はしてたのであろう、特に驚く様子も無く。
丑 「解りましたよ、社長。後悔するとは思いますが・・・・・。」
香 「お引き取りください。」
そしておとなしく丑汐は出て行った。
蹴 「自動車会社社長が、スピード違反&進入禁止か・・・・・。
ま、格好のネタであろうし、そのうちどこかが嗅ぎ付けたであろう。」
蹴田社長はそのまま、窓の景色を眺めていた・・・・・。
一方、黒須病院を出た岱と真菜。
真 「だから、イヤだって言ったのに・・・・・。」
岱 「人気の再確認みたいなもんだろう・・・・・。
顔を知られてる患者にやたらに声をかけられたらしい。
岱 「これで謎も解けただろう?」
真 「なるほどね、特に簡単だったわね。」
岱 「まぁ、初級も甚だしい。」
真 「えっと、次行くのは、あの会社でいいのかしら?」
岱 「ま、誰の信念を「買って」、誰の信念を喰うか・・・・・。」
真 「今から行く所が、良い人だったらいいけどね。」
結末を見守る蹴田社長。
だが、その日の夕刊で、見事掲載されてしまったのである。
蹴 「さて・・・・・。用意しておいたかい?」
香 「ええ、18時からで用意しとります。」
ケッタモータース緊急会見。
内容は伝えては居なかったが、全ての報道陣が今は理解できた。
蹴田社長自ら、記事に書かれた『スピード違反と、進入禁止』などの
交通違反は事実だと認めた。
蹴 「つきましては、私の辞・・・・・・・。」
と、その時突然、報道陣の後ろから現れた。
その人は・・・・・。
蹴 「あ、あなたは・・・・・。一鬼社長・・・・・。」
ケッタモータースのライバル会社、一鬼自動車の社長であった。
一 「皆さん。聞いてもらいたい事がある。
今回の蹴田社長のこの交通違反は、たまたまあの時一緒に居た私が
発作を起こしたのが原因だったのだ・・・・・。」
一鬼社長は説明を始めた。
実は発作は薬を飲めば治まるものだった。
だが、そんな事を知らない蹴田社長は、一刻も早く辿り着こうと・・・。
蹴 「いえ、逆に冷静になれず愚行に走った私の責任は免れません。
今回は幸いにも全くの事故などがありませんでしたが、結果論です。」
一 「なるほど。」
事故を隠匿したわけではなく、ただ単純に、
この話が世に出れば、美談になる恐れもあったのではと
少しはしょった考えがあっただけだったのである。
蹴 「私の子供のような考えが、この様な事になってしまいました。」
一 「ちなみに、先に言っておこう。これが、我が社の社員の署名だ。」
蹴 「なんですか!? こ、この数万を超える署名は?」
一 「君がきっと、辞任するであろうと、それを阻止する。
世間の皆様の答えをも、求めていくつもりだ。」
蹴 「一鬼社長、なぜそこまで私なんかに。」
一 「命を救われたからな。」
蹴 「しかし、あれは薬を飲むだけで済んだのでは・・・・・。」
一 「あの、必死な『信念』が、今の私を作っていると言っていいだろう。」
そのやりとりは、そのまま中継されていた。
記者会見は終わった。
それでも、蹴田社長の気持ちは変わらないようであるが・・・・・。
報道陣の去った後、残っていたのは丑汐だった。
丑 「馬鹿な!!こんな馬鹿な展開があるか!!
世間だって、こんな事件を認めるはずがない!!」
丑汐の肩をポンと叩き参上した、岱。
岱 「中途半端に情報を『知ってる』だけじゃ、何にもならねぇよ。
情報は『使って』こそ武器になる。まぁ、オマエの情報など中途半端だが。」
丑 「また、これからもあらゆる些細な事件の情報も握ってやるぞ!!」
岱 「無駄だ・・・・・。オマエには『情報は使えない』・・・・・。
所詮貴様など、『情報に踊らされたタダの凡愚。」
真 「ああ、始まっちゃった・・・・・。もう、彼は『能力(信念)を喰われた』わね・・・・・。」
それを見ていた蹴田社長と香穂。
一鬼社長が近くに行こうとしてる事で判断できた。
蹴 「あ、、、アナタ方が、一鬼社長を連れて来たのですね。」
真 「ええ、そうです。」
蹴 「しかし、誰も何も依頼してないし、何の儲けが?」
真 「そっちの秘書さん。 能力者でしょ?」
香 「なんの事かしら・・・・?」
真 「あら?知らなかったの?女性の能力者はなかなか体重が落ちないのよ?」
香 「そ、、そんな事は無いわよ、機能だって2kg痩せてたで!!
そんなんデタラメやでっ!!」
少しフッと笑って、真菜は言い返す。
真 「ええ、そうよ。デタラメよ。でも、自白したわよね今。」
香 「!!」
真 「うちの『社長』は、能力者の信念を喰って、能力を封印するのが好きなの。
とくに、その能力に溺れてる人をね。えーっと、彼、丑汐君だったかな。
彼の情報に対する自信と信念は砕かれ、喰われたわ・・・・・。
二度とその能力を出す事はできないでしょうね。」
香 「なるほど、それが目的やんねんな?
うちの能力も喰うんか?」
岱 「ククククク・・・・・。クソマズイ信念だったな。
ん?小娘の信念?ああ、少なくともオマエは会社のためにだろう?
とくに興味は無いな・・・・・。」
あっけに取られる蹴田社長も気になった事があった。
蹴 「あの、、うちの秘書が私も特殊な能力があるとは言うんですが、
私、まだ自分で把握してないんですが・・・・・。」
香 「せやねん、何か解らへんねん。」
岱がふところからカードを出し、引いた。
岱 「『戦車』・・・・『恋人』か・・・・・。社長さん、アンタの能力はうちの秘書のように
自由に操るタイプじゃない。アンタの行いがそのまま反映する能力。」
蹴田真臣 能力『因果応報の座敷童子』(ジャッジメント・キッズ)
*良い行いをしている限り、予想以上に些細な事件では
他人への印象が悪くならない能力。
岱 「なんとも、発展しそうな能力だがな・・・・・。」
香 「うちの能力も・・・・・知ってるの?」
岱 「さぁな・・・・・。」
真 「秘書同士、ちょっと似てる能力なのは運命かしら?」
自分の黒髪をクルクルいじりながら話す。
一鬼社長は当然のように話を聞いている。
蹴 「何も驚かない所を見ると、一鬼社長もそうなのか・・・・・。」
一 「私か?魔術師はタネはバラせないからなぁ。(笑)」
蹴 「なにはともあれ、最悪な印象と言うほどでもなかったのはお礼を言います。
今後の自分の行動は少し考えさせてください。」
一 「そうじゃな。」
岱 「真菜、このガキはどうする?」
信念を砕かれ、放心状態の丑汐。
真 「どうせ、今まで散々そうやって人を強請って来たんでしょ?喰われて当然だわ。」
蹴 「なるほど・・・・・。ソレが目的か。」
岱 「ま、何かあったら『脳噛商会』をよろしく・・・・・。」
真菜が名刺を取り出し、二人の社長のポケットに入れていく。
蹴 「脳噛商会か・・・・・。」
一 「一癖も二癖もありそうだな。」
香 「・・・・・・。か、、かっこぃぃ、あの秘書さん・・・・・。
う、うちもあんな大人の女性になるでっ!!」
岱と真菜は事務所へと向かう。
真 「どうでした?今回のお味は?」
岱 「根性が腐ってるからな・・・・・。大したもんでも無いな。」
真 「さて、手伝った私の食事がまだですわよ?」
岱 「収入印紙の要らない金額にしてくれよ・・・・・。」
真 「あら?少しはそういうの覚えてくれたのね。」
そして、人込みの中へ消えて行った。
続く。