CHANGE ∀ MIND

第02話
「眼と耳」









            あくる日の『酒場ルイーダ』

            ダミ声のママ、冷ややかな皿拭きも健在。




マ 「いらっしゃいませ。脳噛様。(ダミ声)」

岱 「ほう、もう名前を覚えられたか・・・・・?」

マ 「職業柄。(ダミ声)」


            岱と真菜はカウンターに座る。







            と、少し離れたテーブル席に某社長・蹴田真臣が居た。



蹴 「さぁ、玉山君の工場長昇進に乾杯だ!!」
玉 「社長ありがとうございます。」

萌 「おめでとうございまーす!!」

蹴 「あれ?新しい従業員だね。」
萌 「そうですー。萌ですー。よろしくです。」


            本当によく解らない店だ。



            カウンタから様子を伺う、岱と真菜。


岱 「まな・・・・・『注射』できるか?」
真 「そうね。距離さえあれば、『飛ばせる』わ。
    それより、確かにあの人なの?」





            と、岱はフトコロから1枚のカードを出した。


            タロットカードの『皇帝』のカードである。


岱 「『見えるもの』は仕方が無い・・・・・。」





            *脳噛 岱 能力名『魔人の千里眼』(イビル・アイ)
                     先を見通す暗示をカードで見る事ができる。
                     精神状態や、妨害により稀に見えなくなる。


真 「解ったわ・・・・・。社長さんが席を立ったらやるわ。」

岱 「情報を握る者が、全てを制する・・・・・。」





風 「・・・・・。」




            少し離れた位置で皿を拭いていた、風月。


            だが、会話は聞こえては居ない。







            そして、蹴田社長がトイレへと立つ。


            カウンターで、二人にすれ違う。



真 「フフフフフ・・・・・。」



            真菜の能力が発動した。




            *砂流 真菜  能力名『魔人の地獄耳』(イビル・ナースコール)
                       自分の髪の毛を針の様に飛ばす事が可能。
                       刺さった髪は盗聴器として本体である真菜に直接聞こえる。
                       もちろん金属探知機にも反応しない。



            真菜は自分の髪を短く切って、フッと息を吹き、
            蹴田社長のスーツに『注射』した。

岱 「さて・・・・・。射程距離内で電話がかかってこれば完璧なんだがな・・・・・。」






            それまでは食事をする二人。






マ 「いらっしゃい〜〜。(ダミ声)」


   「ええええええ・・・い、こんなとこいいのですか?警部補。」
   「おいおい、今は勤務外だから、そう呼ぶのはやめろ。ねぇ、警部。」
   「自分も言ってるんだけど・・・・・。」



             と、三人が入ってくる。
             会話から警視庁の者と思われる。

             「なぜ?」と岱と真菜は思ったが・・・・・・。



風 「あ、鉄。」



             さっき警部補と呼ばれた男は風月と知り合いのようだ。

             鉄漢音 鉄也(てっかんのん・てつや) 33歳 警部補
             蛙岩 法人 (かえるいわ・ほうと)  26歳 警部
             國玲 凛華 (こくりょう・りんか)  24歳 婦警


鉄 「いやなに、新人の歓迎会の二次会で来たんだよ。」
風 「テーブルにご案内します。」

鉄 「おお、こちらは若くして署長になった、警部の蛙岩さんだ。
    失礼の無いようにな。」
蛙 「だから、バラしてる・・・・・・。」



             と、後ろからついてくる女性はキョロキョロしている。

凛 「わわわわわ・・・・・。こんなとこ来た事無い。」







             と、岱の服を引っ張る真菜。


岱 「ん?かかったか?」


             真菜の『魔人の地獄耳』が、蹴田社長の電話を傍受。

             真菜の手を触れれば、同じ会話を聞く事ができる。





蹴 『誰だ、オマエは!!そんな条件は断じて飲めん!!』
謎 『社長さん、、、いいんですか?そんな事を言って・・・・・。
     大手自動車会社社長が、交通規則を破ったとなれば・・・・・。』

蹴 『ええい!!飲めんもんは飲めん。』

謎 『ま、そのうち気が変わりますよ・・・・・ではまた。』



蹴 「くっ・・・・・。」








             席に戻る蹴田社長。


玉 「あれ?社長、顔色悪いですが・・・・・大丈夫ですか?」
蹴 「ああ、少しすきっ腹に呑んだからな。食べれば大丈夫だ。ハハハハハハ。」
玉 「無理しないでくださいよ。」

萌 「えーっと、じゃあ、カツ丼でもいっときます?(笑)」
蹴 「あるのか?」

萌 「ママならできますよ〜。」


             他人に悟られないようにとする蹴田。






岱 「だろ?」
真 「ええ、そうね・・・・・。
    でも、これでどうしたら、儲かるの?」
岱 「直接的な儲けでは無いが、損な結果にはならん。
    それに、こんな小銭稼ぎをする小物には心辺りがあるんでな・・・・・。
    少し、灸を据えてやらんとな。」

真 「まぁ・・・・・。怖い事。」














             ケッタモータース
              一見、町の小さな車工場のような名前だが、
              そこから始まったということで、そのままの名前にしてある。

              日本有数の自動車メーカー。
              社長の方針『自転車のような手軽さ』をモットーに、
              乗りやすさ、安さを追求した人気の車が多い。


              生産は本社工場に任せ、
              自分自身は、この町の小さな工場で自ら修理をしたりと
              一風変わった社長でもあった。

              今日もその部品工場長に就任した、玉山 由智(たまやま・ゆち) 33歳の
              就任歓迎会を終え、一人会社に戻った。


蹴 「困ったな・・・・・。」








              一方その頃すでに、『情報』をさぐる脳噛商会。

              簡単に言えばなんでも屋。
              入手困難な品や、『情報』ですら商売にしてしまう。

              取締役の脳噛 岱は、どうやって、その『情報』をかぎつけているのか・・・・・。
              謎の多い男ではあったが、一部の『能力者』には、ある程度予想が付いていた・・・・・。






              『MIND』 マインド

              一般に特殊能力である。

              生まれ持った物・・・偶然身に付いた物・・・努力で成し得た物・・・
              それは様々であった。 

              岱の『魔人の千里眼』(イビル・アイ)、
              真菜の『魔人の地獄耳』(イビル・ナースコール)


              一体、幾多の人間が、このマインドに覚醒めているのか・・・・・。

              そして、能力は一人一つとは限らない・・・・・。



真 「髪を切らなきゃならないのは、かなりイヤだわ・・・・・。」
岱 「ん? 数mmの話だろう?」
              
真 「髪は女の命と申しましてよ?」

岱 「ま、カラスも嫉妬しそうな髪だ・・・・・。大事にするんだな。」

真 「トリートメント代は、もちろん経費だからね。」



岱 「なにか違うような気もするが、それくらいはよかろう。」




              脳噛商会 社員は砂流 真菜(25歳)だけである。
              
              岱がその漆黒の髪に惚れて入社をせがんだと、真菜は言うが、
              その真意は定かではない。

              どことなくミステリアスな真菜を、100%信じているわけではなく、
              お互いの利害関係で一緒に居ると言った雰囲気でもある。


              謎の多い二人だった。




真 「で、その『交通規則違反』っていうのは、何で何処であったのかしら?」

岱 「ふむ・・・・・。『法王』 『戦車』か・・・・・。」


              岱はカードを引いた。


岱 「『見えた』・・・・・。病院だ、病院に行くぞ。」
真 「私の元職場だけは、勘弁して欲しいわ。」
















              二人は病院へ向かった。








              続く。

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