CHANGE ∀ MIND

第01話
「全てはここから・・・」









            まだ、暑さの残る八月・・・・・。


            夜の22時、とある酒場。

            BARなのか、スナックなのか、クラブなのか・・・・・。
            ママは『別にどれでもいいんじゃない?』と


            ダミ声で笑って答えた。





            酒場『ルイーダ』
            全ての出会いと、全ての冒険はここから・・・・・。







            ふと店内を見渡し、ロクロママがつぶやく。


マ 「やっぱり従業員は増やすべきかしら?(ダミ声)」

            横で皿を拭いているベテラン店員。
            花鳥風月(かちょう・ふづき)は、鋭い目で同じく店内を見渡す。


風 「店内の最大キャパシティと、その40%のオーダーをこなすとして、
    外回り、接客、厨房を際定数見積もっても、今のスタッフの数では無理ですね。」
マ 「まぁ、イキナリMAXだったとしての話よね。(ダミ声)」


            溜息まじりにそう言うと、店のマッチを指で転がしていた。



マ 「いらっしゃい。(ダミ声)」


            二人の男女が入って来た。
            ママのダミ声に少し驚くが・・・・・。

            礼服ではないが、薄いサングラスと黒いスーツを二人とも着ていた。
            なんとも不思議な二人。


            カウンターに座り注文をする。




            が、二人とも酒を飲まず、炭酸飲料で済ます。


            一体何をしに来たのかとも、少し思った。



            見るからに武闘派な男、あまりビジネスでは関わりたくないかも・・・。
            もう一人は透き通るような白い肌に、漆黒の髪が美しい女性。
            その男が「真菜」と呼んでいた。

            男の名は「脳噛 岱(のうがみ・だい)」
            女の名は「砂流真菜(さりゅう・まな)」


            まんま美女と野獣。
           


真 「客は少ないけど、客質は濃そうね・・・・・岱(ダイ)。」

岱 「でなきゃ、酒も呑まないのにここにはこないだろ・・・・・。」

真 「そうだけど。」

岱 「ほとんどどこかで見た事のある者だな・・・・・。
    某自動車会社社長『蹴田 真臣(けった・まさおみ)』・・・・・。
    某住職 『空散(くうちろ)』・・・・・か。フン、金の渦巻く匂いがするな。」

真 「あっちは何かのチームかしら?」
岱 「さあな・・・どっかの素人バンドの練習の帰りじゃないのか?
     ま、仕事の待ち合わせ場所にはいいかもな。」
真 「次の依頼はどうします?」

岱 「めんどくせぇ・・・・・。ココでいいだろ。」

真 「解りました。」
     

岱 「ま、適当に食事でもしていけ。」

真 「あら?こんなか弱い女性を一人BARに置き去り?」
岱 「オマエが酒に付き合うのか?」


真 「あら。介抱くらいはできましてよ? フフフ・・・・・。」




岱 「ま、アルコール抜きで付き合ってやる・・・・・。」



             『何を考えてるか解らない食えない女』

             そういった印象のミステリアスな女性。

             と言う事は、この二人は恋人では無い。



風 「ママ、人間観察も良いですけど・・・・・お客様のボトルがカラになりかけてますよ。」

ロ 「あらやだっ。今月もまた微妙なのよねっ・・・・・・。(ダミ声)」


             そういうと、住職と呼ばれる客の席に行った。

             





             岱が、「素人バンド」と言った二人。

             揃いの衣装。

             確かに素人バンドではあるが、結構名の知れたバンドらしい。

             ボーカルの諏訪雲 白奈(すわぐも・しろな) 通称:スワン
             キーボードの羽桔 沙耶(はねきつ・さや) 通称:サヤ


サ 「スワンさん、呑みすぎですよ〜。」

ス 「だって、くやしいじゃないの。あんな事言われて・・・・・。」
サ 「そうですけど、だからって呑みすぎても・・・・・。
     それに、早く新しいメンバー見つけないと。」

ス 「もう、解散したんだからいいでしょ!」

サ 「もー。」


             と、グラスの酒を飲み干してサヤは言う。

サ 「私はスワンさんについて行くもん。」

ス 「・・・・・。サヤ。」









              あらゆる話が渦巻いている。






蹴 「いやぁ、元は自転車屋だったんですがね・・・・・。」




              ケッタ社長の昔話に盛り上がる。


              この店はとくに手が開いた場合は接客をしていて良いというシステム。
              これがまたスナックなのか、キャバクラなのか解らなくさせてるが、
              ママに言わせれば「新機軸」らしい。


              ケッタ社長の話を聞いてるのは、従業員の漣 苺(さざなみ・いちご)

              とくにボトルノルマとかそういう店もないので、
              客を楽しませればOK。

苺 「ええ、でもすごいですよね。今では世界に羽ばたく大企業じゃないですか〜。」
蹴 「いえいえ、部下の腕が良かっただけですよ。」
苺 「ご謙遜を〜〜〜。」








              そんな話を尻目に、岱と真菜は食事を終える。




マ 「ありがとうございます。またいらしてくださいね。(ダミ声)」

岱 「ああ、良い店だ。また寄らせてもらうよ。」

マ 「ぜひ、お待ちしております。(ダミ声)」


真 「あ、すみません、領収書をお願い致します。」

岱 「細かい奴だな・・・・・。」
真 「何言ってるの。私がこういうのちゃんとしてるから・・・・・。」
岱 「解った解った。」

マ 「えっと、お名前をお伺いしてもよろしいかしら?(ダミ声)」



真 「脳噛商会で。」



マ (・・・・・脳噛商会・・・・・どこかで聞いたような・・・・・。)


               長年の勘が、社長と秘書だと答える。





               そして黒服の男女は店を後にする。













サ 「すみませーん。お会計お願いしまーす。
     もー、スワンさーーん。帰りますよーぅ。」
ス 「もっと呑みた〜〜い。」

サ 「ダメですっ!!」
ス 「・・・。」










               そんなこんなで、酒場『ルイーダ』の夜は更けていく。


















               全てはココから・・・












               続く。

inserted by FC2 system