ST:26
「魔具ハンター」













            ビガプールの北にある砂漠地帯の森。

            3人のアーチャーがクマと戦っていた。

マルス   「ウルフ兄さん!!こいつ、全然死なないよ!!」

            スナイプでクマを狙ってるが、クマの体力も相当なものだ。。。。

ウルフ   「マルス!!目を狙え!!オマエならできる!!
        兄貴!!マルスの援護を!!」

            どうやら、3人兄弟のようだ、次男ウルフはマシンアーチャー。
            迫る3体のクマを1人で片付けようとしている。

メロス   「一体づつ、落ち着いて撃て!! 俺が足を撃つ!!」





            しばらくして、辺りは倒れたクマが広がっていた。。。。。


メロス   「ちょっと、苦戦したな。ハッハッハッハッハ(笑)」
マルス   「メロス兄さん、、笑い事じゃないよ。。。。。」

ウルフ   「まだ、マルスにはココは早かったか?」
メロス   「よく言うぜ、クマに尻引っ掻かれたのは誰だよ?」

ウルフ   「まぁ、今日も『U』いくつか、手に入れたしな。。。。。」
メロス   「ファインウィスパー・・・・・。ってゴミかよ!!」

            数々の『U』ユニークアイテムの鑑定をしていたりする。
            まれに良品の『S』スーパーユニークな品も存在するのである。

マルス   「・・・・・。」


            少し沈黙して、マルスが口を開く。

マルス   「兄さんたち、覚えてないの?ファインウィスパー。
        僕達が『魔具ハンター』になるきっかけだった『U』なんだよ?」

メロス   「そうだったか?(笑)」




            幼少のころ、魔具ハンターであった父の若い頃の小さい弓を使って
            3人で近くのモンスターを狩ったとき、たまたま出現したのがファインウィスパーだった。

            その『U』の効果なんてどうでもよかった、女性向けの装備だったし、
            ただその『U』を自分たちで
取ったという事実が、より一層その『宝石の輝き』が眩しく見えた。

            そして父の後を追い、3人は『魔具ハンター』になることを決意した。

            魔具をいくつも入手してるうちに、その効果や価値に目が行ってしまっていた。
            別に大金が欲しかったわけではないのに、高価な『U』を狙っていた。


メロス    「うーむ・・・・・。」

マルス   「いつから、『U』をゴミなんて言うようになったのさ・・・・・。」
ウルフ   「まぁ、マルスの言いたい事も解るけどな。。。。。」

メロス    「確かにな。。。。。『魔具ハンター』として何か忘れてたのかもしれないが、
         『魔具ハンター』としての看板もあるんだぜ?」


ウルフ   「マルス、今までメロス兄貴が捨てた『U』も皆持ってるだろ?(笑)」
マルス   「持ってるよ。安く、初心者の冒険者に売ったりしてるからね。
         やはり『U』には効果以外の特別な『ブランド』があるから。
         持ってるだけで嬉しいものなんだよ。」
ウルフ   「そんな事、俺も兄貴も知っているさ・・・・・。」


            魔具ハンターでも、中には数千万・数億Gのアイテム以外は、
            その場で叩き壊すハンターもいる。
            逆に高級ではない魔具を、欲しい人に安く売るハンターも居た。
            販売は販売のプロに任せるのが前者だが、金の亡者に見られがちなので、
            有名な優良ハンターは後者の方が多い。


メロス   「ウルフ、何かいいものは見つかったか?」
ウルフ   「ん、、、ああ・・・・・。まだだな。。。」


            次男ウルフには想いを寄せてる女性が居た。
            魔具ハンターの名に賭けてというほどではないが、
            『魔具ハンター』としてこれだけやっているという証に
            『S』をプレゼントしようというわけである。

            職業柄、顔を合わす事も少ない、
            別にプレゼントで気をひこうというわけではない。
            ブレンティルに住む彼女に会うには、『近くを通りかかった。』というわけにいかず、
            不器用な彼にはそんな方法しか思いつかないのであった。




            彼らは場所を変え、また狩りをしている。
            運装備の彼らがまた『U』を出すのに時間はかからなかった。


メロス    「おいおい、トランクベアー。これなんかどうだ?(笑)」

            トランクベアー:ウッドアーマーのような露出の多い女性用の鎧。
ウルフ    「兄貴、、、、、殴ってもいいか?(笑)」


            そんな冗談も言ってはいるが、メロスもマルスもウルフに協力的であった。

メロス    「しょうがねぇな、エルフでも狙って『タートクラフトの婚約指輪』でもどうだ?」
ウルフ    「おいおい、それじゃ何か別の意味が無いか?(汗)」

メロス    「そんな事言ってるから、『ただのお友達』で終わるんじゃないのか?」

マルス    「ウルフ兄さんは、そうやってずっと想ってるのが幸せなんじゃないかな・・・・・。」
ウルフ    「カ、、、カンベンしてくれよ・・・・・。」
メロス    「ハッハッハッハ!! まだまだマルスもガキだな。(笑)」

マルス    「(´・ω・`)えっ??????なんでさ?」
メロス    「そのうち解るさ・・・・・・。オマエにも。」




            三人は、『妖精の蜘蛛の糸』と言われる森にやって来た。
            ここにはエルフ一族が徘徊しており、その高級なドロップ品を狙ったハンターも多数いる。


メロス    「マルス、タゲ取りはウルフに任せろ。いつものフォーメーションで行けば大丈夫だ。」

            普段、守備力の高いウルフがタゲを取る。
            マシンアーチャーという事もあり適任である。
            そして、グランディングファイアー(火の雨)を使ったり、
            敵の動きを判断して敵の動きを止め、仲間の援護がメロスの役目であり、
            スナイプでトドメを刺すのがマルス。

            この兄弟のフォーメーションでいつもやってきた。
            ビショップに頼らないのは何か意地のようなものでもある。


            細かく鑑定はしてないが、数億の指輪「ホロウサークル」や
            数々の装飾品を手に入れた。



ウルフ    「よし!!ハイレベルのエルフ発見!!」

            マシーンアローを連射するウルフ。
            いつものフォーメーションである。

            と、そこへ!!



剣士     「うああああああああああああああああああああああああ!!」



            なんと、十数体のエルフに追われている剣士が走ってきた。

            剣士はそのまま走り抜けたのだが、
            メロスのGF(火雨)がエルフに刺さり、エルフの攻撃目標がこっちに来てしまった。


ウルフ    「あ、、、あの野郎!! マズイな・・・・・。
          くそっ!! マルス!!一体づつトドメを刺せ!!」

マルス    「うわああああ!!こ、、こっちもタゲが!!」

             マルスにも数体のエルフが群がり、攻撃を止められてしまう。

メロス     「!!今、火雨を撃ったら、マルスにも・・・・・。」



            と、躊躇していたら、ウルフが叫んだ。


ウルフ    「兄貴!!雨を!!」


            ウルフは自分の廻りを廻ってガードしてくれてる槍。
            そう「ミラーメラーミスト」をマルスに与えた。


            マルスへの攻撃を槍がブロックする。


メロス     「なるほど!!」

            メロスは氷の雨を撃った!!
            エルフの動きを止めようというのだろう。


            ガードする槍の無くなったウルフ。
            タゲを取りまくり、なるべく兄弟が動けるようにしている。
            ムチャな行動ではある。ここで死んでしまえば逆にPTに迷惑になるのは見えている。

            だが、ウルフには秘策があった。



            『HP吸収装備』である。

            マシンで与えたダメージをHPに変換吸収である。

            だが、エルフの数の多さもあり、ギリギリの状態である。
            こんな状態ではPOTを飲む事も不可能である。

            それでもメロス・マルスの2人が数を減らすのを待つ。


メロス      「マルス!!弱ってるやつからトドメを刺せ!!」
マルス      「ミラメが合っても、、、、攻撃が・・・・・。」

            槍1本だけのガードでは足りない。

メロス      「やるしかないか・・・・・。一気に・・・・・。
            ガーディアンポスト!!

            背負っていた槍を刺す。

メロス      「持つんだろうな・・・・。俺。」
            守備力の無いメロスはタゲを取るべきではなかった。


            ガーディアンポスト(GP)の放つ電撃がエルフを撃つ!!

            マルスへの攻撃目標が減った。

            一体づつ急所を狙い、仕留めて行く。



マルス     「兄さん!!大丈夫!?」


             十数体のエルフを倒す事ができたが、3人共満身創痍だった・・・・。


             散らばる宝を取り、一度街へ戻る事にした。。。。。


             彼らは少しでも多くの宝を持つために、帰還の巻物を
             用意していなかった。。。。。

             そのために徒歩で帰る事に。。。。。


メロス      「!! 道沿いにクマがいやがるな・・・・・。」

ウルフ     「さすがに今、相手にはできないな。。。。。崖の方から迂回しよう。」


             結局それでも沸いているクマに見つかってしまうのだった。。。



マルス     「兄さん!!ブラウンベアーが・・・・・。」
メロス      「血の匂いを嗅ぎ付けたか、、、、、。」



             その時、木の上にまさかクマが居るであろうとは、
             この時の3人には予想できなかった。。。


             頭上から飛来し、襲い掛かるクマ!!

             3人はそのまま弾かれ、飛ばされる。




             その一撃で、弓も叩き割られ、メロスの持っていた、
             アクセサリー『U』アイテムの袋が飛散してしまう。

ウルフ      「兄貴!!」

メロス      「くっ、、、、、しまった!!」

マルス      「兄さん!!」



             飛び散る、アイテム。

             ふと見れば、高額のホロウサークルズ、タートクラフトの婚約指輪もあった。


             それを見た、ウルフとマルスも、なんとなく意味は解っていた。
             なぜ、メロスのアイテム袋に婚約指輪があったのかを。



             だが、メロスが必死にアイテムを数個掴んだようだったが、
             婚約指輪はその場に残されたままだった。。。。。



             クマのさらなる追撃を浴び、3人は崖の下へと落とされていった。。。。。



ウルフ      「大丈夫か、、、、マルス・・・・。」
マルス      「な、、、なんとかね。。。。。」

メロス       「ちっ、、、、、レンジャースギア(Uの弓)まだ、銀行にあったか・・・・?」


ウルフ      「兄貴もしっかりしてるな、、、、、あの状況の中で
           最高額のホロウサークルズを取るなんてな。(笑)」


            皮肉と言うより、あの状況でアイテムを数個掴むだけでも難しかったはず。
            自分の中で本当は兄貴は婚約指輪を取ろうとしてたのでは?と
            そんな事にした意味もあった。。。。。

メロス      「ま、、、4億だしな。。。。。」

ウルフ      「あの様子じゃ、残りの『U』取りに行けそうもないな。。。。。」




             なんとか街に戻り、傷の手当てをし、壊れた装備を直す。

             それでもどうにもならない装備もいくつかあった。


メロス      「傷の治療期間、アイテムの修理代、差し引いてこのホロウでなんとか
           マイナスだけは免れたな。。。。。」
マルス      「そうだね。。。。。僕の持ってる物もほとんど落ちてしまったし。」

ウルフ      「俺なんか、武器ばっかだから全部置いてきちまったぜ。(笑)」



メロス       「こういう時は、瞬時に『大事なもの』だけ掴むもんさ。」


マルス      「兄さん、大事なものってさ・・・・・。」
ウルフ      「なぁ、まだ金残ってるんだろ?ビガプール名物でも食っていかないか?」



            マルスの問いをかきけすように、ウルフが言った。



メロス       「・・・・・大事な物か・・・・・。これじゃないのか?」



            2人に何かを投げた。


マルス      「こ、、、これは、、、ファインウィスパー!?」

ウルフ      「こっちもファインだ・・・・・。何だよ兄貴これは?」


メロス       「さぁな・・・・・・。」







            2人のそのファインウィスパーは特殊効果の付いた『S』であった。

            なぜメロスがその2つを取ったのか、なぜ婚約指輪を取らなかったのか。

            その意味が良い意味で解った2人だった。


マルス      「兄さん、、、僕、誤・・・・・・・・・。」
メロス      「腹減ったな!! 行くぞオマエら!!」

ウルフ      「フッ・・・・・・・・。俺もまだまだか・・・・・・。」





            ビガプールのレストランへと消えて行く3人であった。
























            後日。またそのビガプールのレストランへ来ていた。






メロス      「おいウルフ、例の子、どうなったんだ?(笑)」
ウルフ     「なんだよ、突然・・・・。どうでもいいだろ?」


マルス     「ウルフ兄さんは、あの時のファインウィスパーをプレゼントしたのさ。
           でも、あの人はファインの相場なんてどーでもよくって喜んでくれたんだけど。。。。。」

メロス     「だけど?」






マルス     「あの『S』ファイン、、、、『防御効率』『毒抵抗』『HP回復』がついてて、
          なんか、「私を守るために!?」みたいな・・・・・。」

メロス     「なんだよ、鑑定してもらってたのかよ。」

ウルフ     「いや、、、そこまで考えてなかったというか・・・・・。」



メロス      「たまたまかよ!!」

ウルフ      「まぁ、そういう事になるな。。。。。(笑)」
マルス      「別に黙って渡しただけだし、詐欺でもナイんだから。(笑)」











メロス      「次こそ、、、、、婚約指輪でも拾いに行くか?」


ウルフ      「考えとくわ・・・・・。」

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